ようやく先週に再開したMotoGP世界グランプリ。レーススケジュールは2連戦を軸に、11月15日に全14戦のシーズン最終戦を迎えますが、今週は先週に続いて、スペイン・ヘレスのアンヘル・ニエトサーキットでの1戦。同じ場所でのグランプリ開催ですが、先週は「スペインGP」で、今週は「アンダルシアGP」と呼ばれるレースとなります。2000年ごろに、日本でのグランプリが「日本GP」と「パシフィックGP」と呼び分けられていたのと同じ様式ですね。

この間、先週のスペインGPでのMotoGP決勝レースでの、マルク・マルケスの転倒→負傷からの復活劇が世界中のファンの注目を集めましたが、それはさておき、日本のファンの中でも大事件が起こっていたんです。
ひとつはMoto2クラスの開幕戦・カタールGPで優勝した長島哲太(レッドブルKTM-Ajo)が、スペインGPでも2位表彰台を獲得してランキングトップに立ったこと。もうひとつがMoto3クラスの鈴木竜生(SIC58スクアドラコルセ:HONDA)が2戦連続のポールポジションを獲得し、小椋藍(ホンダTeamアジア)が2戦連続表彰台を獲得、ランキング2位につけていること。
シーズン再開が遅れてしまったことで、有利・不利が分かれている勢力図となっていますが、この日本人ライダーの好調さを持続させたのがMoto3クラスでした。

画像: 鈴木竜生 20年1月の秋ヶ瀬サーキットでのイベントにて

鈴木竜生 20年1月の秋ヶ瀬サーキットでのイベントにて

ここまで2戦連続ポールポジションを獲得していた鈴木タツキが、この第3戦アンダルシアGPでもポールポジションを獲得! 日本人ライダーが3戦連続でポールポジションを獲得し「ハットトリック」をやってのけたのは、1998年のGP250クラスで、第5戦フランスGPからのハットトリックを決めた原田哲也以来、22年ぶりの快挙! タツキはここまで2連続ポールを獲りながらも、決勝では5位→8位と後方に沈んでしまっていますから、なんとかして予選のスピードを決勝レースにつなげたかったでしょう。

画像: 今シーズン、開幕戦からハットトリック!3戦連続ポールポジションを決めたタツキ

今シーズン、開幕戦からハットトリック!3戦連続ポールポジションを決めたタツキ

そして迎えた決勝レース。先週27℃だった気温は29℃まで上昇し、路面温度は40度をオーバー。7月末のスペインは、この数字以上に暑いですからね! だから例年はちょっと北に上がったオランダとかドイツくらいでグランプリが開催されていたんですから。そんな消耗の激しいレースとなりました。ただし、ライダーによっては同じ場所で2週連続でレースが開催されることを有利とするタイプもいるようで、このMoto3クラスでも金曜の走り出しからペースが速かった! 

画像: こんな超接近戦が延々と続くのがMoto3クラスです(写真は第2戦スペインGP)

こんな超接近戦が延々と続くのがMoto3クラスです(写真は第2戦スペインGP)

そのMoto3クラス、スタートから飛び出したのはポールシッター、タツキ! けれどMoto3はここから抜け出せない、超ダンゴ状態で周回を重ねるものですから、タツキも逃げられません。もちろん逃げないのかもしれないし、うまく逃げても後半につかまることも多いし、とはいえ逃げ切れることもまれにあったりと、本当にMoto3で勝つのは難しい。

「どんなに速くても勝てないし、なんで負けたかわかんないレースばっかり。前を走って集団にもまれることもあれば、集団にいて終盤に前に出られることもある。作戦もレースごとに正解が違うし、ホントに難しいクラスです」とはタツキが前に教えてくれたことです。

タツキもここまで、決してミスしたり悪いレースをしたわけじゃないのに、いつの間にかポジションを落とし、集団にもまれての5位→8位ですから、毎レース毎レース、どうやって勝てるか、その方法を探っていくのがMoto3なんですね。

画像: 序盤からトップを譲らなかったタツキ 速いのはもちろん、強いレースでした!

序盤からトップを譲らなかったタツキ 速いのはもちろん、強いレースでした!

タツキを逃がすまいと、ガブリエル・ロゴリゴ(グレシーニホンダ)、ラウル・フェルナンデス(レッドブルKTM-Ajo)、トニ・アルボリーノ(スナイパーズTeam)らがピタリ追走。予選2番手の小椋もこの集団につけています。

勝てる方法論が難しいMoto3とはいえ、序盤にこのトップ集団につけていないと優勝は無理。その意味では、レース序盤は10台以上が縦長に、それから中盤あたりにかけて5~6台がトップ集団を形成することになります。

画像: ここまでの3戦、超大混戦のMoto3クラスにあって、完全に頭ひとつ抜けた速さをみせています

ここまでの3戦、超大混戦のMoto3クラスにあって、完全に頭ひとつ抜けた速さをみせています

トップを走るタツキに、フェルナンデス、ロドリゴがちょっかいを出してきますが、抜かれたら抜き返すタツキ。今日は徹底的にやられたらやり返します、倍返しです! 
終盤、トップ集団は5~6台。ほぼトップを譲らないタツキに、2番手以下がバトルをしてしまってやや逃がしてしまう展開となり、タツキがポールtoウィンでキャリア2勝目をゲット! 2番手ジョン・マクフィ(ペトロナスSRT:HONDA)、3番手セレスティノ・ビエッティ(SKYレーシングVR46:KTM)、4番手には予選25番手からものすごい追い上げを見せたダリン・ビンダー(CIPグリーンパワー:KTM)が入りました。

画像: ゴール直後のタツキ ゼッケン17はマクフィ (motogp.comより)

ゴール直後のタツキ ゼッケン17はマクフィ (motogp.comより)

この日のタツキは速かったし、強かったですね! 抜かれてもすぐに抜き返して、ずっとトップをキープする!という気迫がみなぎるレースでした。そう、こういうレースが、Moto3のひとつの必勝パターンなんですね。速いはもちろん、強い、ってのは優勝の絶対条件です。

画像: アンダルシアGPでは巻き込まれての転倒を喫してしまった小椋 この「巻き込まれ」も多いんですMoto3

アンダルシアGPでは巻き込まれての転倒を喫してしまった小椋 この「巻き込まれ」も多いんですMoto3

ここまで2連勝を飾っていたアルバート・アレナス(アスパーチーム:Moto3)、ランキング2位につけていた小椋は転倒リタイヤとなりノーポイント。これで3戦を終わって、ランキングは
①アレナス(50P)
②タツキ (44P)
③マクフィ(40P)
④小椋  (36P)
⑤ロドリゴ(30P)と大混戦となってきました!

Moto2、MotoGPクラスのレポートはまたのちほど!

写真/motogp.com 文責/中村浩史

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