日本の鉄道はJR線だけでおよそ2万km に及ぶ。国内の列車が素晴らしい景色の中を日々駆け抜ける様は「珠玉の絶景」の宝庫といえる。ここでは「見たことがない撮影地」や「写真で見たことはあるが、行き方がわからない撮影地」を中心に厳選した。九州からご紹介しよう。
■文・写真/杉山 慧
(※姉妹サイト Webカメラマンより)

久大本線(豊後中川~天ヶ瀬)

久大本線は久留米と大分を結ぶ路線で、沿線には湯布院をはじめ、天ヶ瀬や原鶴といった温泉を抱える観光路線である。全体の本数が少ないわりに、特急はキハ71 系およびキハ72 系の「ゆふいんの森」およびキハ185 系「ゆふ」が運転され、普通列車ではキハ200 系(キハ220 形含む)、キハ125 形、キハ40 系と様々な車種が見られるのも魅力。

画像1: 久大本線(豊後中川~天ヶ瀬)

作例は玖珠川と沈下橋を一度にまたぐ特急「ゆふいんの森2 号」を狙ったものだ。手前の木立をクリアするために脚立に上っている。国道210 号の上ノ釣交差点から、山へ登っていく道路へ300m 弱進んだところが作例の撮影位置だ。この場所のほか、国道上や交差点を入ってすぐの地点からでも線路は見えるので、好みの立ち位置を見つけよう。

画像2: 久大本線(豊後中川~天ヶ瀬)

久大本線(豊後中村~野矢)

特急「ゆふいんの森」という列車名に相応しい、森の中を走る列車を撮影できる。「ゆふいんの森」は3往復が設定されているが、1・2・5・6号が5両編成のキハ72系、3・4号がキハ71系で運転される。

画像: ■ 200mm 絞りF8 1/1250 秒 ISO400 ※ 2019 年5 月5 日11 時24 分撮影

■ 200mm 絞りF8 1/1250 秒 ISO400 ※ 2019 年5 月5 日11 時24 分撮影

作例はキハ72 系による「ゆふいんの森1 号」である。丸いボディ全体に、綺麗に光線が回っている。新緑の収まり具合を考えて構図を決めた。なお、背後の山には高圧電線の支柱もある。国道210 号と野矢駅を結ぶ県道710 号から、山に分け入った場所が撮影地だ。

画像: 久大本線(豊後中村~野矢)

撮影地は駅からも近いが、列車の本数は少ない。駅から300m ほどで県道が線路に沿って右カーブを始めるが、このカーブを終えたあたりで、県道から分岐して南西の方向に山側へ上がって行く道が現れる。車は入れないので県道の広い場所に止めよう。荒れた道を登るとガードレールが途切れる直前で、フェンスに沿った獣道へ分け入る。獣道を道なりに50mほど野矢駅方向に進んだ場所が撮影地。

豊肥本線(朝地~緒方)

熊本と大分を結ぶ豊肥本線、立野~赤水のスイッチバックがハイライトと言える路線だが、熊本地震の影響で同区間を含む肥後大津~阿蘇間が長期運休となっている。紹介するのは里山の景色を走るエリアである。日中はおおよそ1 時間半間隔の普通列車のほか、日によって特急「九州横断特急」または特急「あそぼーい!」が運転されル。

画像: ■ 160mm 絞りF10 1/500 秒 ISO400 ※ 2019 年5 月5 日9 時35 分撮影

■ 160mm 絞りF10 1/500 秒 ISO400 ※ 2019 年5 月5 日9 時35 分撮影

作例は朝地方面に向かう普通列車を写したものである。列車の先には踏切があるので、広めのレンズでそれを入れて撮っても良いだろう。中九州横断道路の朝地インター付近から、緒方駅方面へ進む。志賀迫への分岐を示す看板に沿って細い道へ分岐してほどなく、集落へ降りていく途中で木の間から線路が見える場所が撮影地。車は100m 程下ったヘアピン付近の広い場所に止めよう。

画像: 豊肥本線(朝地~緒方)

肥薩線(海路~吉尾)

肥薩線は熊本・宮崎・鹿児島の3 県をスイッチバックとループ線で越える急勾配線区である一方、八代~人吉間では渾々と流れる球磨川を車窓に臨む。普通列車のほか「いさぶろう」・「しんぺい」や「かわせみ やませみ」といった特急列車や、「SL 人吉」も走る観光路線である。

画像: ■ 90mm 絞りF8 1/500 秒 ISO500 ※ 2019 年5 月6 日9 時31 分撮影

■ 90mm 絞りF8 1/500 秒 ISO500 ※ 2019 年5 月6 日9 時31 分撮影

側面や木々を光らせるなら午前中の半逆光を活かそう。作例は吉松行きの特急「いさぶろう」である。普段は2両で運転されるが、多客期にはこのように3 両で運転される。

国道219 号を八代方面から走らせると海路駅の対岸を過ぎたあたりで、球磨川に注ぐ竹の谷川に沿って分岐する道がある。この道に入ると、300m 程で竹の谷川を渡るカーブを過ぎ、さらに200m 進むとヘアピンカーブにアンテナが立っている。車はこの付近に止める。このヘアピンカーブの途中から、山へ入る緩やかな斜面に入る。150m ほど進むと急傾斜の階段がある。3 つ目の階段を上がったら、左(八代方面)へ。程なくして、撮影地にたどり着く。

画像: 肥薩線(海路~吉尾)

撮影・解説:杉山慧

1992年11月、静岡県出身。幼少期より鉄道に興味を持ち、日本大学芸術学部写真学科卒業後、ネコ・パブリッシングに入社し月刊誌[レイル・マガジン]の編集に携わる。2017年3月、鉄道写真事務所レイルマンフォトオフィスに入社。2018年12月レイルマンフォトオフィスを退社し、フリーの鉄道写真家として独立。独立後は月刊誌[鉄道ジャーナル]での写真撮影や原稿執筆のほか、レンズメーカー「タムロン」主催するに「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」で審査員を務めた。

画像: 撮影・解説:杉山慧

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