丸Zのアイコン、カワサキ空冷4気筒Zを象徴する900 SUPER 4

今も根強い人気のあるカワサキのフラッグシップ空冷Zだが、新車で売られていた当時、日本国内で手に入れられた人は少なかった。

存知の御通り、その頃大型2輪に乗るには、ハードルの高い試験クリアしなければ得られない「限定解除免許」が必要で、暴走族問題や、交通事故の急激な増加が背景にあったことからメーカー同士の自主規制で750ccを超えるオートバイは国内市場では売られていない。

さらに、1985年のプラザ合意で急激な円高になるまで1ドルは200円台中盤で推移しており、逆輸入車として手に入れようとしても、一般の人が手を出しにくい高値だった。

画像: 1972年に川崎重工業が欧州及び北米市場向けに製造販売した「900 SUPER 4(Z1)」

1972年に川崎重工業が欧州及び北米市場向けに製造販売した「900 SUPER 4(Z1)」

フラッグシップ空冷Zが街で普通に見られるようになったのはバブル景気からで、今のようにもてはやされるようになったのはバブルが弾けた90年代に入ってからだ。

メインのマーケットだった北米では、もはや古いオートバイとして安い価格で取引されているか、倉庫で隠居暮らしをしていた空冷Zが海を渡ってやってきて“絶版車”という言葉の誕生と共に、スターダムにのし上がったのである。

いろんな車種の中で、カワサキ空冷Zはずっと絶版車市場の中心にいる。

画像: 丸Zのアイコン、カワサキ空冷4気筒Zを象徴する900 SUPER 4

魅力はどこにあるのか。好きな人やオーナーにたずねると、多くの人が「カッコイイから」と答える。わかるけどわからない、曖昧模糊としたものだが、勝手に「カッコイイ」の理由を少しだけ考えてみたい。

空冷Zには通称『丸Z』と『角Z』がある。その違いは燃料タンクのカタチからくるもので、丸Zとは、1973年モデルとして1972年の秋に発売された初代900Super4、Z1から、Z900、Z1000まで。次のZ1-R、Z1R-Ⅱ、Z1000MK-ⅡからZ1000(J)(北米仕様には丸タンク仕様もあるが)からが角Z。Z1000RやZ1100GPもその中に入れていいだろう。

余談だがカワサキ空冷4気筒エンジンフラッグシップの最後を飾ったのはハーフフェアリングを装着したGPZ1100だった。日本国内のナナハンでは、750RS、Z750FOURが丸Z。Z750FXからが角Zだ。

画像: 当時の排気量規制に対応するためにボア×ストロークをダウンさせ、750ccで登場した「750RS(Z2)」国内で累計2万台以上を販売。

当時の排気量規制に対応するためにボア×ストロークをダウンさせ、750ccで登場した「750RS(Z2)」国内で累計2万台以上を販売。

空冷Zの起源であり、シリーズの中でも一番高値で取引されている丸ZことZ1は、北米市場で先に人気になり、量産4気筒モデルとしても先駆であるホンダCB750FOURに対抗するために誕生。

より排気量が大きくパフォーマンスでも勝るZ1は、世界最速マシンの王座につき狙ったとおり大ヒットした。カワサキはその後もこの世界最速にこだわり続け、それはGPZ900Rニンジャから水冷4気筒エンジンになっても続く。

人気を構成するひとつの要素として、ハイパフォーマンスの追求がある。今も昔も速いヤツはカッコイイのである。

スタイリングはCB750FOURに比べZ1の方が伸びやかなプロポーション。ホイールベースなどの違いがあるなかで、CBにはなくZ1にあるテールカウルの存在は大きい。それによりスマートで尻上がりに見せるZ1のデザインは、ずんぐりむっくりしているように見せないバランスの良さが光る。

カワサキは1971年に発売した350SSで初めてテールカウルを装着したが、このパーツによる視覚的効果は無視できない。

一方角Zは丸Zより車種が少ない。約半分。Z1000Mk‐Ⅱ、Z750FX、Z1‐Rも入れてもこれだけ

一方、それまでの丸いティアドロップタイプから一変してエッジがはっきりした角タンクZの最初になった1978年のZ1-Rは、その頃流行してたカフェレーサースタイルを取り入れたものだった。

続くように翌年、クランクマスを大きくした丸タンクのZ1000から、角タンクに四角いカムカバーのZ1000MK-Ⅱへと通常モデルも変わった。エンジンのフィーリングをZ1の原点に帰りシャープなものにしたことが物語るように、よりモダンでスポーティーさを強調するためのスタイリングだと思われる。

もちろんこれまでのイメージを一新することで市場を刺激するニューモデル効果もあっただろう。手掛けたのは500SS[マッハⅢ/H1]を手掛けた栗島忠弘氏。その変貌は斬新で新時代のスーパースポーツだと感じさせるものだった。

画像1: 一方角Zは丸Zより車種が少ない。約半分。Z1000Mk‐Ⅱ、Z750FX、Z1‐Rも入れてもこれだけ

以前、空冷Z系を専門とするショップの人が、「角Zに乗っている人は飛ばして乗る人が多くて、走りにこだわる。丸Zの人はZ1のスタイルに惚れて、飛ばす人よりスタンダードスタイルとテイストを楽しみながら乗る人が多いのでは」と話していたのを思い出す。

例外があることを前提として、確かに丸Zと角Zでどちらにしようと悩む話はあまり耳にしない。70年代の前半に誕生したものと、後半に誕生したものという時代の違いも、その棲み分けに影響していると思える。外装だけでなく、エンジンの仕様など各部に手が入った項目からも角Zのスポーティーさはカワサキが意図したもので間違いはない。

画像: Z1-R譲りの角型スタイルを採り入れた「Z1000Mk.II」 写真:バイカーズステーション

Z1-R譲りの角型スタイルを採り入れた「Z1000Mk.II」 写真:バイカーズステーション

そしてエンジンが完全に新設計になった新時代の空冷Zたる、1981年のZ1000(J)は、キックスターターの廃止などによる軽量化、サーキットでハイパフォーマンスをアピールできる機会である、AMAスーパーバイクレースのレギュレーションを考慮して1016ccから998.6ccにダウンさせるなど、より運動性能を高めた仕様。

GL1100ゴールドウイング、GSX1100E/S、XS1000Sらとのつば迫り合いは、同じ頃、量産車として初めて燃料噴射装置を装着して発売された、1089ccのZ1100GPに担当させた。その流れから感じるのは、丸Zは起源でありパイオニアの威厳を持つオリジナル。

角Zは、機械的だけでなく文化的にも花開く次の時代を予感させるプレ80年代といった新しいチャプター。丸と角という単純なカテゴライズの裏に空冷Zシリーズの転換点がある。

画像2: 一方角Zは丸Zより車種が少ない。約半分。Z1000Mk‐Ⅱ、Z750FX、Z1‐Rも入れてもこれだけ

文:濱矢文夫 写真:松川 忍 車両協力:ウエマツ

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