買ってしまった。XSR700。惚れてしまったのだ。その存在感に。なぜだろう、国内販売が開始された2017年当時は、「変なバイクだなあ」と思っていたのに。だってベースはMT-07、あの「イマ風」な(というか近未来的な)ロードスポーツモデルで、外装だけクラシカルなものにしたところで、ちょっとそれはチグハグなんじゃないの? と思っていたのに。

「オーセンティック」、言われてみれば確かにそうだ

画像1: 「オーセンティック」、言われてみれば確かにそうだ

街で見かけたり、メディアで記事を読んだりしているうちに、目が慣れてきたのだろうか。XSR700が、正当な進化を遂げた結果として誕生したバイクのように思えてきたのだ。

カタログに、WEBサイトに、XSR700を表す言葉としてやたらと出てくる「オーセンティック」。ブリタニカ国際大百科事典・小項目事典の解説では、「本物の,確実な,真正なという意味で,トラディショナル・スタイルを指す形容詞」とある。

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ヤマハはスポーティでアグレッシブなMT-07を世に送り出す一方で、XSR700を、これこそがヤマハの伝統を継ぐ〈もうひとつの答え〉なのだと言いたいのかも知れない。

実際ヤマハの国内向けムービー「FASTER SONS JAPAN」シリーズにも、温故知新・父子相伝・永劫回帰というキーワードが盛り込まれ、XSR700の正統性のようなものを強くアピールしている。

で、だんだんと興味の湧くままに調べたり考えたり悩んだりしているうちに、「ああ、これは今、自分が乗るべき最高の一台に違いない」と確信し(というか、感化され)買っちゃったわけだ。

画像: FASTER SONS JAPAN CHAPTER 0 -温故知新- YouTube

FASTER SONS JAPAN CHAPTER 0 -温故知新-

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各所にヤマハの本気度が宿る

色はどうしようか。鮮やかな赤もいいな、緑の高原や青い海などを背景にする際、赤いバイクは際立つから撮影しやすいんだよな。

いやいや、いま買うなら新色のマットブルーだろう、などと悩みつつも、マットグレーにした。実物を見るとマットグレーじゃなくて、アルミなのだ。これがメタリックで実にかっこいい。

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タンクカバーは職人がひとつひとつバフ掛けして美しいヘアラインを刻み、マットのクリア塗装を施したもの。「YAMAHA」のロゴも、このマットグレーだけ立体エンブレムで高級感がある。

イグニッションの前側にある、何のためのものなのか分からないパーツにもヤマハの音叉マークが誇らしげに浮かび、所有欲をくすぐる。

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所有欲といえば、シートもそう。マットグレーのモデルに採用されているシートは3種類の素材を組み合わせたもので、ライダーが座る部分は艶ありのレザー調、パッセンジャーが座る部分はスウェードっぽく、さらにシートエンドはブラウンのレザー調で「XSR700」の型押しまでされている。

この、細部に至るまでのこだわりが、ヤマハの本気度を表しているかのようだ。

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レトロでも機能は最新だからいい

ネオレトロでオーセンティックなデザインながらも、走りに関連する機能は当然ながら現代のものだ。水冷4ストDOHCの直列2気筒エンジンは、クロスプレーン・コンセプトに基づいた、ライダーのスロットル操作に対してリニアなトルクを生み出すもの。

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68N・mの最大トルクを6500回転という常用域のチョイ上あたりで発生させる。買ったばかりで慣らし運転の最中だったときは5000回転までしか上げられなかったけれど、それでも充分なトルク感を味わうことができた。

ぶん回さずとも、走りが“おいしい”って、日常からツーリング時におけるまで、こんなにありがたいことはない。

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メーターも見やすく便利なもの。ハンドルポスト上の丸いデジタルメーターは、速度を数字で、エンジン回転数をバー表示で表す。

ギアポジションインジケーターや、ECOインジケーターまで備え、外気温、水温、時計、瞬間燃費やトータル燃費なども表示するマルチファンクションメーターとなっている。メーター照明の明るさは、ライダーの好みで調整可能だ。

画像: 燃料計はコーヒーカップを模している。ガソリンがなくなったとき、ライダーも一度コーヒーブレイクを、というメッセージのようだ。

燃料計はコーヒーカップを模している。ガソリンがなくなったとき、ライダーも一度コーヒーブレイクを、というメッセージのようだ。

慣らし運転の最中でのインプレ

納車され、ちょこっと街乗りをしたあと、さっそくツーリングへ。慣らし運転はただダラダラと1000㎞走ればいいってものじゃなく、1速からトップギアまで、それぞれのギアにそれなりの負荷を与えてやるべきだと思うし、エンジンの回転数も2000、3000、4000、5000回転と、それぞれのギアでいろんな回転数を試すべきだろうから。

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向かった先は福島県の裏磐梯。どんなツーリングだったかは、6月1日発売の月刊『オートバイ』にカラー8ページで掲載するのでそちらをお読みいただくとして、このXSR700、慣らしの最中でも「買って良かった!」と納得することばかり。

ベースがMT-07だけあって、走りが軽快、トルクも充分。これ以上、排気量が大きいとパワーが出すぎて、トラクション・コントロール機能も必要になるのかも知れないが、XSR700のパワーは、そんなデジタル制御に頼らずとも済む、ちょうどよさが光る。

自分で必要な分だけパワーを引き出し、すべて自分で制御する。ここが個人的に気に入った部分でもある。

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車体がコンパクトでスリムだから、扱いやすく、コーナリングが楽しい。

ひらひらと曲がってくれるのだ。見た目の迫力はないにせよ、筆者はもう50代。あまりにもでかいバイクは、もう卒業してもいいと思っている。

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むしろ、若かりし頃につきあっていたSRXやXJR400を思い出させてくれて、懐かしく、ウキウキする。これこそ原点回帰、ここから先はクルーザーやアドベンチャーじゃなくて、昔に乗っていたのと同じ、やや前傾ポジションのスポーツバイクでツーリングを楽しもうと思う。

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そうそう、XSR700はハンドル幅がワイドだから、降りて取り廻す際にラクで、荒れた路面を走るときも不安が少ない。こいつで林道を積極的に走ろうとは思わないが、キャンプ場内での移動や、田んぼの先への寄り道など、ダートを走る機会はある。

車体が軽くコンパクトで、ハンドル幅がワイドだというのは、ツーリング時のアドバンテージが高いと言っていいはずだ。

ちなみにETC車載器は、アンテナ分離型のミツバサンコーワ「MSC-BE51W」をチョイス。本体がシート下にぎりぎり収まったということもご報告しておきます。

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ということで、2泊3日の裏磐梯ツーリングで1000㎞走行し、無事に“慣らし”を終えた自前のXSR700。

帰宅したらヤマハから自宅に「親展」と印刷された封筒が届いていて、中には〈初回点検チケット〉が。新車126㏄以上のヤマハのバイク購入者に送られるものらしい。新車を買ったばかりで金欠だから、このサービスはうれしいね。

画像6: 慣らし運転の最中でのインプレ

さて、慣らし運転終了後のインプレやアクセサリーの話などは、次回。さあ、今度は遠慮なくスロットルを開けるぞ!

文:菅生雅文/写真:柴田雅人/協力:ヤマハ発動機販売

ヤマハ XSR700 主なスペックと価格

全長×全幅×全高:2,075×820×1,130mm
ホイールベース:1,405㎜
最低地上高:140㎜
シート高:835㎜
車両重量:186㎏
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ直列2気筒
総排気量:688㏄
ボア×ストローク:80.0×68.5㎜
圧縮比:11.5
最高出力:54kW(73PS)/9,000rpm
最大トルク:68N・m(6.9kgf・m)/6,500rpm
燃料タンク容量:13L
変速機形式:6速リターン
キャスター角:25.00゜
トレール量:90㎜
タイヤサイズ(前・後):120/70R17M/C (58V)(チューブレス)・180/55R17M/C (73V)(チューブレス)
ブレーキ形式(前・後):ダブルディスク・シングルディスク
メーカー希望小売価格:税込89万9,640円

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菅生雅文(すごうがもん) プロフィール

1963年、岩手県盛岡市生まれ。ツーリングマガジン『アウトライダー』の編集長を2003年から務める。現在は月刊『オートバイ』のほか、旅行誌、教育機関誌などにも寄稿。著書に『気つけば風が吹いている』がある。

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