各クラスのレース展開をお届け!
この週末は全日本ロードレース選手権・開幕戦がツインリンクもてぎで行なわれました。関東地方もようやく冬を脱したかな、って4月第一週、桜前線とともにもてぎに開幕がやって来たかんじの陽気に恵まれた開幕戦でしたね。観客動員は2日間合計1万3000人ほどでした。
現在、全日本ロードレース選手権は、メインクラスであるJSB1000とあわせ、市販600ccスーパースポーツのレースであるST600、600ccエンジンにオリジナルフレーム+スリックタイヤが許されたJ-GP2クラス、そしてヤングタイガーたちの登竜門、4ストローク250ccクラスのレーシングマシンによるJ-GP3クラスが行なわれています。
開幕戦のエントリー数は、J-GP3が29台、ST600が47台、そしてJ-GP2クラスが……9台。この少なさは、J-GP2クラスが今シーズン限りで終了となるからで、昨年までのエントラントもST600にスイッチ、というケースも多くみられました。
ちなみにJ-GP2クラスが今シーズンで終了するのは、MotoGPの同等クラスである「Moto2」クラスが、使用ワンメイクエンジンをホンダ並列4気筒からトライアンフ並列3気筒に変更したことも理由のひとつで、全日本を戦ってMotoGPのMoto2クラスにワイルドカード参戦、というルートが断たれてしまったからでもあります。
もったいないね、J-GP2は現MotoGPライダーである中上貴晶や、現在JSBクラスの主力となりつつある野左根航汰、渡辺一樹、水野涼、岩戸亮介を輩出したクラスなのに……。
レース開催順はほっといてw、そのJ-GP2の様子から。今シーズンのJ-GP2クラスは、名越哲平(MuSASi RTハルクプロ)、作本輝介(Team高武RSC)、榎戸育寛(SDGミストレーサ ハルクプロ)といったあたりが軸になりそうなシーズン。そのヤングタイガーに立ちふさがるのがベテランの岩崎哲朗(OGURA CLUTCH with RIDE IN)、徳留真紀(マルマエMTR)、尾野弘樹(ミクニテリー&カリー)らベテラン勢。名越、作本、榎戸は、このベテランをやっつけて新しいステップに進みたい――そうやってJ-GP2クラスのラストチャンピオンが争われるわけです。
公式予選は名越がポールポジションを獲得。以下フロントローには尾野、岩崎が並びますが、決勝レースはここに作本が加わってトップグループを形成することになります。
スタートから名越が飛び出し、作本がその後方へ。3番手には2周目に岩崎をかわした尾野がつけ、岩崎は徐々に後退。このあと、この3人がトップ争いを演じることになります。レースは名越がトップを守り、作本がずっとプッシュするする展開、その後方に等間隔で尾野がつけるなか、名越がトップを守り切って終了。
トップ3のポジションにずっと変動はなく、後方で予選6番手の榎戸がペースを上げますが、終盤には売り切れて終了。ポケバイ育ち、74Daijiroカップチャンピオンから、中野真矢の56レーシング入り、そこからアジア選手権CBRカップやST600を戦ってきた21歳の名越に、九州の名門・Team高武の22歳・作本が軸になりそうなシーズンになりそうですね。
J-GP3は、J-GP2以上にベテランvsヤングタイガーの争いが激しいクラス。それは公式予選からもう始まっていて、岡崎静夏(26歳・KoharaRT)、中山愛理(21歳・チームSHOTA)、鈴木大空翔(16歳・タクト、って読みます バトルファクトリー)がタイムを伸ばすなか、予選終盤に福嶋佑斗(18歳・チームPLUS ONE +f)がトップに立つと、安村武志(48歳・犬の乳酸菌.jpプリミティブRT)が最後の最後に逆転! 安村、全日本初ポールポジション! しかし、10代や女子と戦って48歳のおじさん(安村さん、ごめんw)がポールポジション争いって! これが世代闘争です。
決勝レースは、安村がホールショット、そこに岡崎、予選5番手の長谷川聖(18歳・CLUB Y’s)、福嶋、中山、鈴木が続き、オープニングラップのうちに長谷川がトップに浮上します。長谷川は、序盤からペースを上げましたね。序盤で引き離して逃げる、って作戦だったようです。
長谷川は、そのままひとり2分02秒前半のラップタイムをマークしながら2番手以下を引き離し、2番手争いが集団に。集団になっちゃうと抜き合いがあってタイムが伸びず、トップを逃がしちゃうものなんですが、その通りの展開に。2番手争いの集団を、岡崎、鈴木、五十嵐翔希(16歳・ライダーズサロン横浜)、安村、中山が作るんですが、五十嵐は脱落、おじさんと女子ふたり、それに中学生が2番手争いとなります。安村さん、ごめんw
2番手争いグループは、数周ごとにリーダーが変わって、安村、鈴木、岡崎、中山がかわるがわる集団を引っ張ります。ここ、作戦勝負でもありますね。前に出て、スリップにつかれて、フィニッシュラインで前に出られるシーン、Moto3でもよく見るじゃないですか。マシン差のない小排気量クラスは、いつ集団の前に出るか、が問題になっちゃう。
レースは長谷川が逃げる中、2番手争いも周回ごとに順位を入れ替えながら終盤戦へ。2番手争いは安村がやや遅れて、鈴木と中山、そして岡崎の3人。長谷川が独走しているから、表彰台はこの中の2人しか登れない、って展開の中、長谷川から11秒遅れて中山、鈴木、岡崎の順でフィニッシュ。全日本のレディスライダーの顔でもある岡崎、全日本初表彰台をわずか0秒2差で中山に譲ってしまいました! この女子ふたり、そのうち優勝争いしそうだなぁ。それも楽しみ!
そしてST600は、いま全日本選手権でいちばん超接近戦、面白いぞ、この激戦区!
ディフェンディングチャンピオン、岡本裕生(51ガレージNitroレーシング)を筆頭に、小山知良(日本郵便ホンダドリーム)、長尾健吾(NCXXレーシング善光会 TEAMけんけん)、佐野優人(バトルファクトリー)が主軸になり、ここにJ-GP2からのスイッチ組である和田留佳(Will RiseレーシングRS-ITOH)、伊達悠太(バトルファクトリー)が加わり、JSBからのスイッチ組である日浦大治朗(鈴鹿レーシング)、岡村光距(KRP三陽工業& RS-ITOH)もいるし、昨年のJ-GP3チャンピオン中島元気(ホンダ浜友会 浜松エスカルゴ)、鈴鹿サンデーで全戦ポールtoウィンを決めて全日本に勝ち上がって来た荒川晃大(モトバムホンダ)もエントリー。継続参戦組とスイッチ組が相まみえる、トップ集団の読みにくいクラスになりそうです。
公式予選をリードしたのは南本宗一郎(アケノスピードYAMAHA)、荒川、長尾、そしてチャンピオン岡本がセッション中盤でトップタイムをマーク! ここに小山も加わるなか、終盤に岡本が転倒し、長尾、南本、小山の逆転が期待されたものの、岡本のタイムは更新されず、岡本がポールポジションを獲得。長尾、南本がフロントローにつけました。
決勝レースでは、長尾が飛び出し、その背後を岡本がピタリとマーク。序盤はここに南本、小山&國峰啄磨の日本郵便CBRをはじめ、大集団を形成。JSB、J-GP2やJ-GP3でも見られなかった大集団によるトップ争いです。
岡本は2周目には長尾をかわしてトップに浮上すると、そのまま逃げを打ちます。が、長尾をそれを逃がさず、3番手以下に南本、小山、少し遅れて國峰が続く展開。レース中盤頃に、國峰が菅原陸(保険職人GBSレーシングヤマハ)にかわされますが、再び抜き返してトップ5の順は変わらず、レース終盤に岡本がずっと等間隔でマークしてきた長尾を振り切って優勝! 最終ラップのスパートに、岡本のタイヤマネジメントの上手さ、ぺース配分のしたたかさが見えましたね。
岡本、今シーズンは岩城滉一オーナー、宗和孝宏監督のもとで全日本に参戦するのと同時に、あの芳賀紀行のもとでイタリア選手権にも挑戦していますから、その経験でどんどん伸びるライダーになりそうですね。ケガだけには気を付けて、世界に出ていってほしいライダーですね、埼玉県八潮市出身、まさに(世界に)「翔んで埼玉」(笑)!
こんな感じでJSBだけじゃなく、全日本選手権は進んでいます。次戦・鈴鹿2&4はJSBだけの開催ですが、5月25~26日の菅生大会は全クラス開催です。ぜひぜひ、観戦においでください^^
写真・文責/中村浩史