この週末はワールドスーパーバイク(=WSBK)第2戦・タイ大会が行なわれました。すでにお伝えしたように、土曜に行なわれたレース1では、アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)が優勝。開幕戦の3レースに続き、これで連勝記録を「4」に伸ばしました。
 明けて日曜日には、10周の超スプリントレースとして行なわれる「スーパーポールレース」(=SPR)とレース2、つまりWSBKは今シーズンから決勝レースが3つあるんですね。日曜の焦点は、もちろん「誰がバウティスタを止めるのか」というポイント。しかし、スーパーポールレースもレース2も、またもバウティスタが優勝。これで開幕戦レース1からの連勝を「6」に伸ばしました。
 2戦6レースを全勝! バウティスタとドゥカティ・パニガーレV4Rの前には、さすがのWSBK4年連続チャンピオン、ジョナサン・レイ(カワサキ)もなす術なし――。それでもレイは全レースで2位につけていて、「エイリアン」バウティスタのほかには誰にも負けていません。チャンピオンの、せめてもの意地なのでしょう。

画像: レース2の表彰台。とはいえ、このタイ大会で表彰台に上がったのは3レースともこの3人でした

レース2の表彰台。とはいえ、このタイ大会で表彰台に上がったのは3レースともこの3人でした

 日曜のSPRは、今シーズンから導入された、レース2のスターティンググリッド決める10周の超スーパースプリントレース。距離が短いからか、レース1/レース2に与えられるポイントが優勝=25p/2位=20p/3位=16p……と15位まで与えられるのに対し、優勝=12p/2位=9p/3位=7p…と9位まで。つまり、1戦3レースをスイープした時のフルポイントは62ポイント、ってことです。去年までは2レース勝って50ポイントでしたからね。フルポイントを与えられないからか、WSBKの公式スケジュールではレース1/レース2/レース3とは表記されず、レース1/SPR/レース2ということになってるんですね。へんなの……。

画像: 圧勝完勝最多勝 だんだん勝ちすぎて憎たらしくなってきました、バウティスタw

圧勝完勝最多勝 だんだん勝ちすぎて憎たらしくなってきました、バウティスタw

 そのSPR、終わってみればまたもバウティスタのひとり舞台でした。ホールショットはレイ! 10周のスーパースプリントですから、ここはスタートから前に立って逃げに逃げて逃げ切りたい、がレイの戦術のはず。しかし1コーナーを抜けてのストレートで、早くもバウティスタが前に出ます。しかし、レイもそれを許さず、ストレートエンドのヘアピンで再びトップへ。でも次のストレートで、またもバウティスタが前へ――。激しいトップ争いは、結局、オープニングラップの半周くらいなものでした。
 バウティスタは独走というわけではなく、1周ごとにジリジリと差をつけていくパターンで、1周を終えて0秒1だった差が、0秒3に、0秒7に、1秒2、1秒6に広がって、気がつけば手の届かないところにいる展開。この日のSPRは7周目に13番手あたりを走っていたティティポン・ワロコン(カワサキ)とレオン・キャミア(ホンダ)が多重クラッシュを引き起こし、レースは赤旗中断。これで土曜に続いてバウティスタが2連勝、開幕戦レース1からの連勝を「5」に伸ばしました。
 昨年まで4連覇と、最強を誇っていたレイは、またも2位。取りこぼしなく走ってはいますが、さすがに5連勝を決められては、内心穏やかじゃないはず。特に、このSPRでは3位に入ったアレックス・ロウズ(ヤマハ)がどんどんプッシュしてきましたから、レイとしてはバウティスタだけを狙っていればいい、ってことでもなくなってきましたからね。

画像: ミスなく走るkじょとで有名なが、バウティスタを追って何度かミスが見えた今大会

ミスなく走るkじょとで有名なが、バウティスタを追って何度かミスが見えた今大会 

 そしてタイ大会のファイナルはレース2。注目のスタートでは、今度はバウティスタがホールショット! そのままいきなりスパートし、後続を引き離し始めます。ついて行けているのはレイ、マイケル・ファン・デル・マーク(ヤマハ)、レオン・ハスラム(カワサキ)、ロウズ、マルコ・メランドリ(ヤマハ)という、いつもの「バウティスタとカワサキとヤマハの面々」でバウティスタが逃げる間に、レイとロウズの2番手争いが激しく、上位集団にようやく、昨年までのドゥカティワークスのエース、チャズ・デイビスが上がってきます。バウティスタ車だけが突出して速かったパニガーレV4Rですが、ここへきてようやくマシン全体の底上げができ始めてきたのかもしれませんね。

画像: 4台のヤマハから一歩リードしつつあるロウズ だんだんレイの背後に迫ってきました!

4台のヤマハから一歩リードしつつあるロウズ だんだんレイの背後に迫ってきました!

 レースは結局このまま、上位陣に大きな順位変動はなし。トップ3はレース1と同じくバウティスタ→レイ→ロウズの順で、4番手争いがハスラム×メランドリ×vd・マーク×デイビス×コルテセと白熱! 特に、レース途中でマシントラブルこそ起きてしまいましたが、やっと調子が上がって来たデイビスがセカンドグループに食い込んできたこと、ハスラム×ヤマハR1軍団のバトルが面白いですね! 開幕2戦4レースを終えて、ドゥカティ2台、カワサキ2台、ヤマハ4台が常にトップグループを形成している、というレース模様になっています。

画像: 4位争いはこの4台 ここにハスラムのZX10RRが加わることもあります

4位争いはこの4台 ここにハスラムのZX10RRが加わることもあります

 それにしても、バウティスタ強い! これで、2003年にニール・ホジソンが開幕6連勝を達成した以来の開幕連勝タイ記録を達成し、MotoGPからWSBKにスイッチして「もっとも成功したライダー」になろうとしています。開幕戦は、ドゥカティのトップスピードって、フィリップアイランドみたいな高速レイアウトにこそ強いなぁ!という印象でしたが、ここタイ・チャーンサーキットはここまで4年8レース開催されてきて、レイが6勝、トム・サイクス(当時カワサキ)が1勝、デイビスが1勝と、圧倒的にカワサキが強かったサーキットですが、そこでもバウティスタがレイを下したという、価値ある勝利となりました。

「開幕戦のオーストラリアとはまるで違う展開になったね。特に土曜にはマシンのフィーリングがしっくりこなかったんだけれど、再び優勝できたし、結果的にはこの週末は完璧だった。3レースだけではなく、FP1からの全走行セッションともトップで終われたんだから。ブランニューマシンで、すべてが初体験のコースだから、サーキットごとにベースセッティングから探していかなきゃいけないのに、チームが本当にいいバイクを作ってくれる。ここタイのサーキットは、ずっとカワサキが勝ってきたから、苦しい戦いになるだろうとは思っていたけれど、よく戦えたと思う。最高にうれしいよ」とバウティスタ。

「きょう僕たちが期待できたのは、2位になることだけ。レース2ではアレックス(ロウズ)にすごくプレッシャーを掛けられたけど、なんとか達成できたね。チームはいいバイクを作ってくれたけど、もっとバイクを仕上げないとね。今回はフロントの安定感に少し苦労して、レース2の後半で僕が速かった区間も、ちょっと苦しんだんだ。レース序盤は(バウティスタの)スリップにいられるように、110%で走れたんだけどね。今シーズンは、2位が「いつもの」ポジションになってしまっているね。全力でレースしたけれど、アルバロ(バウティスタ)とドゥカティは手強い。次からヨーロッパラウンドに入るけれど、トップとのギャップをもっと縮めなきゃね!」とレイ。

画像: 開幕戦からの6レース、こんなシーンが目立ちます バウが逃げ、レイが追い、ヤマハが迫る……

開幕戦からの6レース、こんなシーンが目立ちます バウが逃げ、レイが追い、ヤマハが迫る……

 5月第1週に行なわれる第3戦が行われるスペイン・アラゴンは、これまでの2戦よりもテクニカルなレイアウト。ここまでの2戦、こと対ドゥカティでは、ブレーキングやコーナリングスピードで対抗できている(ように見える)カワサキにとっては、コースレイアウト的に対抗できそうなラウンドではあります。レイが一矢報いるか、それともバウティスタが連勝記録を伸ばすか、がアラゴン大会の焦点になりそうですね。

     ■■■■■■■■■■■レース2結果■■■■■■■■■■■
1 アルバロ・バウティスタ     ドゥカティ 31m05.590
2 ジョナサン・レイ        カワサキ  +10.053s
3 アレックス・ロウズ       ヤマハ   +12.368s
4 マイケル・ファン・デル・マーク  ヤマハ   +17.378s
5 レオン・ハスラム        カワサキ  +17.518s
6 マルコ・メランドリ       ヤマハ   +18.925s
7 サンドロ・コルセテ       ヤマハ   +23.281s
8 マイケル・リナルディ      ドゥカティ +28.444s
9 トプラック・ラガリオル     カワサキ  +33.156s
10 ジョルディ・トーレス      カワサキ  +33.224s

 レース1と1~8位までが変わらないですね! これもまた珍しいパターン!

Photos/wsbk.com 文責/中村浩史

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