すでにお知らせしたように、WSBK開幕戦はアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)が全勝、4年連続チャンピオンのジョナサン・レイは3レース連続2位という結果に終わりました。きょう3月16日土曜日に行なわれたWSBK第2戦・タイ大会のレース1も同じ顔ぶれの1-2フィニッシュという結果になりましたね。ここまではドゥカティ+バウティスタ圧勝、カワサキ+レイの5連覇危うし、という図式になってはいます。

画像1: <WSBK> もう一度、言っておきます!
~パニガーレとZX-10Rのレブリミット規制について~

 WSBK開幕戦を終えての、ご覧いただいている皆さんの反応、おおむね下のようなものです。
〇バウティスタ速いな、さすがGPライダー
〇ジョニーがんばれ、カワサキがんばれ!
〇パニガーレV4R速い! さすがMotoGPマシンレプリカ
〇カワサキの回転ハンディきつい!パニガーレ優遇しすぎ

 そう、特に一番下の「カワサキZX-10RRとドゥカティ・パニガーレV4Rの最高回転数制限」についての意見が多かったんです! 現在のWSBKに出場しているマシンには、それぞれの最高回転数制限がかけられています。もちろん、回転数ハンディとも言えはするのですが、ドゥカティずるい、カワサキかわいそう!ではないんです。ここのところを間違えている人が多いね。だから「けっ、そんなにドカに勝たせたいのかよ」なんて声も少なからずあるんですね。

 最高回転リミッターというのは、出場全マシンに義務付けられているもので、出場各マシンについて、下のようになっています。
ホンダCBR1000RR=14550rpm
ヤマハYZF-R1=14700rpm
スズキGSX-R1000R=14700rpm
カワサキNinja ZX10RR=14600rpm
ドゥカティ パニガーレV4R=16350rpm
BMW S1000RR=14600rpm
 エンジンを新規登録した場合は、この回転数リミットも改訂されることになっていて、今シーズンにあたってニューエンジンとして登録されたカワサキ、ドゥカティ、BMWの回転数も更新されました。この3モデルの2018年シーズンまでの最高回転数リミットはカワサキ=14100rpm/ドゥカティ=12400rpm/BMW=14950rpmでした。 

画像2: <WSBK> もう一度、言っておきます!
~パニガーレとZX-10Rのレブリミット規制について~

 確かにこれだけ見れば、カワサキは新規エンジンで14100→14600rpmで500rpmしか上げられていないのに、ドゥカティは12400→16350rpmと、この2車には1750rpmも差がある。これはカワサキいじめ、ドゥカティ優遇ではないのか!と。これが「ドカずだけるい」って言っている人の元になっているみたいなんです。
 それが違うんだって! この最高回転数リミットは、市販車状態、つまりノーマルエンジンの最高出力発生回転数の「+1100rpm」、または一定条件の回転数の3%UPと規定されているんです! 市販車状態、ノーマルエンジンの出力スペックと+1100rpmの数字は以下のとおりです。
(※追記 ちなみに+3%というのは3~4速ギアのレブリミットが対象です ほぼ全車が+1100rpmの適用を受けていますので、下記「+3%」数字は参考になりませんでした)

 ■カワサキNinja ZX10RR→213ps/13500rpm
 これに1.03を掛けると13905rpm/+1100rpmで14600rpm
 ■ドゥカティ パニガーレV4R→221ps/15250rpm
 これに1.03を掛けると15707rpm/+1100rpmで16350rpm
 ■BMW S1000RR→207ps/13500rpm
 これに1.03を掛けると13905rpm/+1100rpmで14600rpm

画像3: <WSBK> もう一度、言っておきます!
~パニガーレとZX-10Rのレブリミット規制について~

 これが、最高回転数制限の実態です。ね、ドゥカティびいきなんかじゃないでしょ? ノーマルのエンジンスペックの最高出力発生回転数が高いから、WSBK仕様マシンの最高回転数制限が高い、ということなんです。
 もちろん、パニガーレV4Rの最高出力発生回転数が15250rpmと、Ninja ZX10RRの13500rpmに比べて1750rpm高いから、レーシングエンジンのレブリミットも1750rpm高い、とそういうわけです。これは、パニガーレV4Rが高回転高出力を突き詰めているエンジンだからで、どっちがレースエンジンとして速い、遅いという理由ではありません。上を回さなくたって速いエンジン、ラップタイムがいいエンジンって、歴史上たくさんありましたからね。初代GSX-R1000なんかその典型で、ロングストロークエンジンの中回転のトルクが大きくて、速くて強いマシンでしたし!
 これで「ドゥカティばっかりずるい」の誤解は解けたでしょ? もちろん、パフォーマンスキャップ、つまり戦力均等化という意味で、あらためて回転数制限が付加されることはあります。2018年のカワサキがそうでしたよね、これは3戦ごとに主催者が強いマシンにハンディを課していくというルールで、このままいったらパニガーレV4Rのレブリミットがいくらか下げられる、それでも圧倒的に強かったらさらに下げられる――というルールになっています。

 MotoGPマシンレプリカことパニガーレV4Rの強さは、もちろんマシンの基本設計から、徹頭徹尾「WSBKチャンピオンマシンに!」という目標で誕生しているからです。市販車の世界でいうと、パニガーレV4Rというのはスーパープレミアムなモデルで、市販価格も当たり前のように高い! ちなみに日本での販売価格は
BMW S1000RR         227万7000円
カワサキNinja ZX10RR      292万6800円
ヤマハYZF-R1M         307万8000円
そしてドゥカティ パニガーレV4R 455万円!
 この4台の最安値であるS1000RRと最高値であるパニガーレV4Rは、なんと約2倍の価格差があるんです! 激しく優勝争いをしているNinja ZX10RRとは約162万円もの差がある! ドゥカティだけズルい、って言うなら、こっち攻めなきゃね(笑)
 もちろん、WSBKのレギュレーションで定められている年間販売台数をきちんとクリアしているから、認定承認モデルとしてレース出場できるのです! ちなみに2018年には、パニガーレV4(こちらは1100ccのV4Sです)が世界で6100台も販売されたといいます。

 WSBKは市販車世界一決定戦。いろんな条件と市販状態のスペックの違いはありますが、そういうルールの上で戦う、というのもWSBKのもうひとつの姿なんです。
パニガーレV4R登場で、一気に注目が高まっているWSBK。レースって、優勝候補が多いほど面白い!

写真/カワサキ DUCATI BMW 文責/中村浩史

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