興奮冷めやらぬまま、このレポートを書いています。メインイベントのMotoGPクラスはドビツィオーゾ強かった!マルケス速かった!クラッチロウすごかった! しかし、今日の主役は鳥羽海渡! とばかいと、2014年のアジアタレントカップチャンピオンで、ホンダTeamアジアからMoto3に参戦して3年目、九州・福岡出身の18歳です! 本人、これが初表彰台で初優勝! 昨年のランキングは22位、去年のここカタールでは7位、自己ベストは去年のカタルニアで6位でしかなかったカイトが優勝です!
公式予選でフロントロー3番手にマシンを並べた鳥羽は、レース序盤、いきなりMoto3名物の大集団に囲まれてしまいます。オープニングラップではアーロン・カネット(マックスレーシングKTM)、ロレンゾ・ダラ・ポルタ(レオパルドレーシングHonda)に先行されながら3番手あたりでレースを始めると、トニ・アルボリーノ(スナイパーズHonda)やアルバート・アレナス(アンヘルニエトKTM)、そのあともバラバラッと数台にかわされて、9番手で2周目へ。
この時点で、レースはまだスタートしたばっかりですから、トップ集団と呼べる列は20台以上! 鳥羽もその中に完全に飲み込まれてしまい、コーナーごとに9番手、10番手、時には6番手、いやでも9番手、ってポジションで序盤3周を消化。Moto3ってこういう展開が続いて、トップを走っていたライダーがいつのまにか10番手フィニッシュ!みたいなことが多いので、カイトー、飲み込まれんなよー、って思っていた関係者も多いでしょう。
この集団には真崎一輝(スカルライダーKTM)も、このレースがフル参戦デビューとなる小椋藍(ホンダTeamアジア)も、鈴木竜生(SIC58Honda)もいます。佐々木歩夢(ペトロナススプリンタHonda)は1コーナーで他マシンの転倒に巻きこまれてリタイヤしてしまいます。
しかし、ここから鳥羽ふんばりました。序盤、トップ4台くらいが抜け出しかけましたがそうはいかず、10番手あたりにいた鳥羽もうまく大混雑を縫って上位に再浮上。5周目には5番手あたりまでポジションを上げてきます。よしよし、いいポジション取り、飲み込まれるなよー!と思っていたら、鳥羽はここからうまく上位をキープします。
トップ争いの顔ぶれは、ダラポルタにカネット、さらに後方から追い上げてきたロマノ・フェナティ(スナイパーズHonda)がひっかきまわします。レース中盤には、ここにマーカス・ラミレス(レオパードHonda)も加わって、1周に2回も3回もトップ3の顔ぶれが入れ替わる、そんな展開。いつものMoto3らしいレースです。
その中でも鳥羽はなかなか安定したポジション取りで、ダラポルタ、カネット、フェナティがガツガツ来ている中、最終コーナーでいい位置取りをして2番手、トップを引くダラポルタやカネットのスリップストリームに入って、ストレートでかわしながらフィニッシュラインをトップで通過、1コーナーでまた抜かれて2番手でレース再開、みたいな展開が多かった。うーん、一回は抜くのにつらいのかぁ、と思わされもしましたが、実はこれ、フィニッシュへの大いなる布石だったんですね。
レース終盤、依然としてトップ争いはダラポルタ、フェナティ、ラミレスも加わって、もちろん鳥羽もきちんとそこにいます。でも、終盤に日本人がトップグループに!って展開は今までも何度かあって、終盤に鈴木竜生が2番手にいながら10位フィニッシュとか、昨年のタイGPでは佐々木歩夢が一時トップを走りながら転倒したりと、最後の最後まで安心していられない。期待と不安、歓喜と落胆がすぐ隣り合わせなのがMoto3なのです。
ラスト3周、ラスト2周、そして最終ラップ! トップで最終ラップに入った鳥羽ですが、すぐにダラポルタにかわされ、でもまたかわして、それでもコース中盤あたりでまた前に出られて、いよいよ残すコーナーは3つ、2つ、そして最終コーナー! ダラポルタの真後でスリップに入る鳥羽。届くか、並んだ、かわしたーーーーーーーー! やったやった!
鳥羽海渡優勝! マシン規定が4ストロークのMoto3となってからは日本人初優勝! 軽量級というくくりで言ったら、125cc時代の2007年に、小山知良がカタルニアGPで勝って以来の日本人優勝です! 日テレG+のライブ中継では「日本人の軽量級クラス優勝は小山選手以来4291日ぶりです!」って言ってました。去年まで1回も表彰台にすら上がっていなかったカイトの快挙! 表彰台でセンターポールに日の丸が上がって、グランプリサーキットで君が代が流れるのは2017年にタカ中上がイギリスGPで優勝して以来です!
「凄い!夢見てるみたいです!この週末、チームと一生懸命がんばってマシンを仕上げて、いい結果が出せた! レースは大集団の争いになって難しかったけど、ずっとトップか2番手にいよう、って戦略を立てて、それが当たって勝つことができました。すごいレース! レース中、ずっとプレッシャーはあって、時々スライディングして集中が切れかかったけど、すぐに集中をとりもどして勝つことができた。青山(博一)監督はライダー、チームと一緒になってすごい頑張ってくれる。僕にもたくさんアドバイスしてくれるし、トレーニングメニューまで作ってくれるんです。27番はストーナーと同じゼッケン。小さいときはツナギまでストーナーレプリカ作って着ていたくらい好きで、このレース見てくれていたらいいな。この勝利はホンダのみなさんのおかげです。この優勝をホンダにプレゼント出来て本当にうれしい」(鳥羽海渡)
これでMoto3チャンピオン候補!ってのは気が早すぎますが、この10年、開幕戦で表彰台に立った3人のうちの誰かがチャンピオンになっている、ってデータもあるんです。もちろん、1周で天国と地獄がひっくり返るMoto3ですから、鳥羽も油断せず、安心せず、心配せず!
まずはおめでとうカイト! チームの皆さん、青山監督、カイトのご家族みなさん、ホンダの関係者のみなさん、おめでとうございましたー! やったぜカイト!
MotoGP開幕戦 Moto3クラス決勝結果
1 鳥羽海渡 ホンダTeamアジア
2 ロレンゾ・ダラ・ポルタ レオパードレーシング
3 アーロン・カネット ステリルガルダMAXレーシング
4 マーカス・ラミレス レオパードレーシング
5 セレスティノ・ビエッティ SKYレーシングVR46
6 アルバート・アレナス Samaカタール・アンヘルニエト
7 ラウル・フェルナンデス Samaカタール・アンヘルニエト
8 ニッコロ・アントネッリ SIC58スクアドラコルセ
9 ロマノ・フェナティ スナイパーズチーム
10 ヤコブ・コーンフェイル レドックスプリュステルGP
写真/motogp.com ホンダTeamアジア 文責/中村浩史