2018 年のインターモトでデビューし、その後のEICMA でブラックの車体色が発表されたカタナ。2019 年にもっとも注目を集めるモデルであることは間違いないが、スズキのエポックメイキングなモデルはカタナだけではない。長年培って来たGSX ブランドはカタナと同様、時代の寵児として今なお進化し続ける。今特集では、そんなカタナとGSX シリーズの魅力に徹底的に迫る!

初代へのリスペクトと最新トレンドの融合「少年の頃、カタナを見て衝撃を受けた」

新型カタナ誕生のきっかけ「KATANA 3.0」
アトリエに初代カタナを持ち込んで創られた「原型」

 新型カタナの「原型」がカタナ3・0。このバイクは、イタリアのモト・チクリスモ誌が企画したプロジェクト。誌面掲載は2017年の4月からだが、企画自体は1 年も前から入念に準備されてきたものだ。
 ベースに選ばれたのはGSX-S 1000 F。外装を外し、フラスコーリ氏が自らのスケッチを基にクレイモデルを製作。それを3 次元スキャナーで正確に測定、そのデータをもとにパーツが製作された。クレイモデル製作にあたっては、カタナのイメージを尊重し、スタジオ内に実車の1100カタナを持ち込む熱の入れようだった。
 実際のバイクの製造は、メーカーの新型車プロトタイプの製作も行う、エンジンズ・エンジニアリング社が担当。そのためか、単なるワンオフのカスタムバイクとは次元が違う、高レベルの造り込みが特徴。この完成度の高さがスズキを動かし、量産バージョンである新型カタナへとつながっていったのだ。

画像: 新型カタナ誕生のきっかけ「KATANA 3.0」 アトリエに初代カタナを持ち込んで創られた「原型」

ロドルフォ・フラスコーリ氏

フラスコーリ・デザイン社代表。新型カタナ、およびその母体となった「カタナ3 . 0」を担当したデザイナー。他にも、ベスパGTS 300やモト・グッツィのグリフォ、トライアンフのタイガーをベースとしたトラモンターナなどを手掛けた一流デザイナーだ。

画像: ロドルフォ・フラスコーリ氏

カタナをデザインする「夢」が現実のものに

「まだ少年の頃、カタナを見て衝撃を受けました。それから40年近くが過ぎ、まさか自分がこうして、カタナのデザイナーとしてステージに立っているとは想像もできませんでした。まさに夢のようです」 と語るのはロドルフォ・フラスコーリ氏。新型カタナ、そしてその原型となったコンセプトモデル「カタナ3・0」のスタイリングを創り上げた工業デザイナーだ。
 昨年の11月、イタリア・ミラノで開催された国際ショー「EICMA」で、イタリアを代表するバイク雑誌「モト・チクリスモ」誌のブースにカタナ3・0の実車が展示されたところから、新型カタナ誕生という運命の歯車は回り始める。会場での熱狂的な反応、世界中のメディアの注目。しかし、それ以上に、カタナ3・0を見たスズキ自身がこれに刺激を受け、市販化に向けて動き出そうと決断するのである。
「モト・チクリスモ誌の編集長ともともと親しかったという縁もあって、現代の技術でカタナを創ろうというカタナ3・0のプロジェクトを始めたわけですが、市販化の話をスズキからいただいたときは、興奮でいっぱいだったのを覚えています。私自身、ファーストカタナが非常に大好きで、カタナをデザインするのが私の夢でしたから。

画像1: カタナをデザインする「夢」が現実のものに

 カタナ3・0にスズキが理解を示し、反応してくれて、市販化しようと決めてくれた。もう言葉では言い表せないくらいに嬉しかったし、誇らしかったし、夢のようでした」
 自身が熱狂的なカタナファンだというフラスコーリ氏。そんなフラスコーリ氏にとって「ケルンの衝撃」と言われた初代のカタナ・GSX1100Sはどんなイメージのバイクなのだろうか。「初めてファーストカタナを見たとき、このバイクはまさにレボリューションだと思いました。スタイリングは非常にユニークで、斬新で、アイコニックなもので、他にこんなデザインのバイクは見当たりませんでしたから。ライディングポジションも独特で、非常に革命的だと思いました。
 その頃の他のバイクと比べても非常に先進的で、まるでバイクの未来を見せられているかのようでした。すごい、このバイクは10年以上先を行っているんだなと感じたのを覚えています。カタナという日本語のネーミングもこのデザインに合っている素晴らしいものでした」

画像2: カタナをデザインする「夢」が現実のものに

最新スポーツモデルでも随所に「カタナらしさ」が

 初代カタナへの強い愛情とリスペクト。そんなカタナの歴史に新たなる1ページを刻む新型のデザインにあたり、フラスコーリ氏はどんな想いで臨んだのだろうか。
「デザインするにあたって、特にプレッシャーを感じるようなことはなかったです。むしろエキサイティングに感じられ、非常にポジティブに取り組めました」
 新型カタナの母体となったカタナ3・0はGSXーS1000がベース。そのコンセプトは新型カタナにもそのまま引き継がれたが、デザインにあたってフラスコーリ氏が心がけたのは「決してビンテージバイクにはしない」というものだった。
「最新の技術で造られる新型カタナは、フレーム、エンジン、素晴らしいハンドリング、驚きのパフォーマンスと、どれを取っても100%モダンなバイクであり、ビンテージバイクではありません。デザインにあたっては、ビンテージではなく、現代のスポーツバイクとしてスタイリングしました」
 現代のスポーツバイクとはいえ、新型カタナにも「カタナらしさ」は息づいていて、初代カタナへのリスペクトを感じさせる部分も多い。ここで新型カタナのスタイリングをフラスコーリ氏に解説してもらった。

画像1: 最新スポーツモデルでも随所に「カタナらしさ」が

「新しいカタナは、敏捷でスレンダーなイメージを大切にしました。高くそびえ立つようなタンクから、低く構えたシャープなフロントフェアリングにかけての流れるようなラインは、このバイクの最もアイコニックな部分であり、ファーストカタナにインスパイアされたところでもあります。
 また、フロントノーズの下にある黒いウイングにはスポイラーとは別の機能を追加して、DRL(デイタイム・ランニング・ライト)を装備しました。ここはかなり苦労した部分です。リアのボディはショートにまとめ、リアフェンダーは通常のスタイルだとステーが長くなりすぎてしまって美しくないので、ナンバーの装着位置を離したスイングアームマウントとしました」
 いよいよ始まる、カタナの新たなる歴史。発売を待ちわびるファンに向けて、フラスコーリ氏はこんなメッセージをくれた。
「スズキの真のアイコンであるカタナの新型をデザインできて、本当に誇りに思います。来年には発売になりますが、私自身、この新型カタナに乗れる日が今から待ち遠しくて仕方ないです。新しいカタナが発売になったら必ず日本に行って、新型、そして初代のオーナーの皆さんと語り合い、交流を深めたいと思っています。楽しみにしていて下さい」

画像2: 最新スポーツモデルでも随所に「カタナらしさ」が

■全長x全幅×全高:2125 x 830 x 1110 ㎜ ■ホイールベース:1460 ㎜ ■シート高:825 ㎜ ■最低地上高:140 ㎜ ■車両重量:215㎏ ■エンジン形式 水冷4ストDOHC 4バルブ並列4 気筒:総排気量 999 ㏄ ■ボア×ストローク:73 . 4 x 59㎜ ■圧縮比:12 . 2 ■最高出力:149 . 6 PS/ 10000 rpm ■最大トルク:11 . 0㎏ -m/ 9500 rpm ■燃料供給方式:FI ■燃料タンク容量:12ℓ ■キャスター角/トレール:25 度/ 100 ㎜ ■変速機形式:6 速リターン ■ブレーキ形式 前・後:φ310 ㎜ダブルディスク・φ220 ㎜ディスク ■タイヤサイズ 前・後:120 / 70 ZR 17・190 / 50 ZR 17

GOGGLE (ゴーグル) 2019年2月号 [雑誌]

モーターマガジン社 (2018-12-22)

This article is a sponsored article by
''.