幾多の名車・ヴィンテージが生まれた昭和と
技術革新でオートバイが急速に進化を遂げた平成。
しかし、もうすぐ新元号。新しい時代に突入する前に
歴史に残る名車烈伝をお送りします。
いつまでも忘れない、今でも乗りたい珠玉の名車たち。

※オートバイ2018年8月号より

スズキの突破力をヤマハとホンダが迎撃した

RZの登場で新しい局面を迎えた250㏄スポーツ。それは、それまでの「車検もなく維持費が安い」手ごろなアシ替わりから、250㏄ならではの小型軽量の車体にハイパワーエンジンを積む、扱いやすいコンパクトスポーツという新しい価値観だ。

RG250やZ250FTが「250㏄専用設計」とアピールしてからおよそ数年で、リッターあたり180PSという途方もないスーパースポーツが登場する。それがRG250Γだった。

画像: 昭和58年/1983年 SUZUKI RG250Γ ●水冷2スト並列2気筒ピストンリードバルブ●247㏄ ●45ps/8500rpm●3.8㎏-m/8000rpm●146㎏●17L●785㎜ ●100/90-16・100/90-18●46万円

昭和58年/1983年
SUZUKI RG250Γ
●水冷2スト並列2気筒ピストンリードバルブ●247㏄
●45ps/8500rpm●3.8㎏-m/8000rpm●146㎏●17L●785㎜
●100/90-16・100/90-18●46万円

Γは、RZとVTがスポーツバイクに火をつけた250㏄クラスに、レーサーレプリカという新しい方法論を持ち込んで席捲。市販車に認可されたばかりのカウリング、アルミフレームや16インチフロントホイールで、250㏄の高性能化に拍車をかけるのだ。

3000回転以下に目盛りのないタコメーター、デザインされていないテールカウルの採用理由を問われたスズキ技術陣が「だってレーサーのΓがそうですから」と答えたのは有名な話だ。

そして、このΓ登場がヤマハとホンダを目覚めさせる。一気に「市販レーサーと同時開発」を謳い文句としたTZR250とNSR250Rを発表するのだ。

画像: 昭和60年/1985年 YAMAHA TZR250 ●水冷2スト並列2気筒ケースリードバルブ●249㏄●45ps/9500rpm ●3.5㎏-m/9000rpm●142㎏●16L●760㎜ ●100/80-17・120/80-17●54万9000円

昭和60年/1985年
YAMAHA TZR250
●水冷2スト並列2気筒ケースリードバルブ●249㏄●45ps/9500rpm
●3.5㎏-m/9000rpm●142㎏●16L●760㎜
●100/80-17・120/80-17●54万9000円

TZRは、レーシングマシンTZそっくりのデルタボックスフレームや3本スポークホイールがまぶしかったし、NSRのクランクケースには、レーシングマシンにしか許されていなかったはずの「HONDA RACING」のネームが刻まれていた。Γが変えた潮目を、TZRとNSRが激流に育て上げてしまったのだ。

TZR、NSR、それにΓの進化版VΓの戦いは、プロダクションレースの戦績によって販売台数が決まる、といわれるほどで、間口が広かったはずの250㏄スポーツはどんどん先鋭化し、逆に乗り手を選ぶ乗り物になってしまった。

Γの衝撃、TZRの扱いやすい高性能、そしてNSRの戦闘力——。「行きすぎた先鋭化」のままではいけない、というメーカーの良心が、再び現代の250㏄スポーツの楽しさを作り出している。

PHOTO:長野浩之、南 孝幸、松川 忍

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