ストリートでも大切なのは「自分がどう楽しみたいか」
スーパースポーツではなくネイキッドでもない、今回の3台はそんなくくりだ。見た目、ちょっとクラシックで、走りは最新。カワサキはレトロスポーツ、ヤマハはスポーツヘリテージ、ホンダは特に言及していないけれど、こだわりを持った大人の価値観に見合うロードスポーツ、と位置付けている。
このカテゴリーの特徴は、走るステージを選ばないこと。もちろん、ストリートランも開発要件に大きな比重を占める。ロングツーリングもワインディングスポーツも大事だが、やはり日常の使いやすさも重要。3台は、そこをきちんとわかっている。
無理やり3台を比較するわけではないけれど、同じタイミングで乗り比べると、やはり比較してしまうもの。この3台の性格は、きれいにそれぞれ異なる3タイプに分かれているのが面白い。決して上/中/下ではないことをあらかじめお断りしておきます。
CBは、狙い通り鷹揚な性格。車重も3車中いちばん重いし、エンジンのツキも柔らかで、サスペンションの動きもゆったり。フロントタイヤが遠くにあるような印象で、思ったよりラインひとつ、外側を通って曲がってくる、いわゆる「立ちが強い」タイプだ。
XSR900は軽快で俊敏。ライダーの着座位置が高いから、切り返しが早く、サスペンションもバネが柔らかく、圧側減衰が弱めに感じられる。そのぶん乗り心地がソフトで、逆に言うと落ち着きがなく感じられるだろう。でも、そこを積極的に利用してやれば、キビキビ走れるね。
Zはちょうどその中間。印象的なのは、車体がコンパクトで重心が低く、安定感とクイックさをうまく両立させていること。ホイールベース値は1200ダエグと同じなんだけれど、もっと短く感じる。空冷ZならばZ2よりもZ650、ゼファーならば1100より750、そんなコンパクトさ。エンジンはツキが良く、それでもアクセルをジワッと開ければ、ドカンとトルクが出てこない。ダッシュしたい時はガツンと開ければいい、すごくしつけのいいパワー特性だ。
ある人が鈍重と捉えるパワー感を、落ち着きある特性と捉える人もいる。一方で、俊敏さを過敏と感じることもある。キビキビとゆったり、元気さと穏やかさ、乗り心地のよさとソリッド感。色々な感じ方があるけれど、大切なのは、3台それぞれの個性をどう捉え、どう走りたいかだと思う。
中村浩史が検証! 気になる『ストリート適性』
キビキビ楽しい新世代のZ KAWASAKI Z900RS
僕が思うカワサキの「ビッグバイクらしさ」って、圧倒的な直進安定性を、あり余るトルクでコントロールする、ってイメージ。そういう意味では、Z900RSは、決して「ビッグバイク」っぽくはない。Z1にもDAEGにも感じたドッシリ感より、Z800的な俊敏さ、内包する力感の方がはっきりと際立っている。Z2よりもZ650ザッパーを思わせるコンパクトさ、ZX-14Rよりも10Rを感じさせるパワー特性、小さく軽く、ダッシュが鋭い、本当によくできたストリートバイクだ。Z900RS=空冷Zのレプリカ、Z1/Z2の再来、といわれることがあるけれど、僕はそうは思わない。これは、カワサキらしいアイコンを持つ、新時代のスポーツバイクなのだ。
ヤンチャで俊敏な自由形 YAMAHA XSR900 ABS
ベースとなったMT-09よりも、グッと落ち着きを持たせたストリートスポーツ。でも、XSR900は、なかなか型にはめにくい「自由形スポーツ」だと言える。3気筒エンジンはパワフルで、ストロークの長いサスペンションをポンポンと持ち上げる力がある。よく言えばパワフルで俊敏。悪く言えば荒っぽく落ち着きがない。ただし、3種類あるDモードを「STD」にすると、この印象が一変。すごくコントロールしやすい、キビキビ走るファイターになる。モードBはさらに穏やかなパワーで、物足りなささえ感じるほど。モードごとに味付けの違いがあるってことは、3種類の走りが楽しめるってことなのだ。
おだやかで重厚、これがいい HONDA CB1100RS
キビキビ系のZやXSRと比較すると、どうしても重く遅く感じてしまうCB。けれど、CBはここを目指して作ってあるから、この特性こそが狙い通り。サーキットなら他の2車が速いだろうけれど、街乗り、ワインディング、そしてロングツーリングを含めた総合性能では、CBならではの良さがある。さらにタンデムや大荷物を積んで、という用途も余裕でカバーするのが歴代のホンダCBなのだ。毎日使うなら、長く乗るならコレがいい。欲を言えば、CB1100シリーズも、STDとEX、RSの3モデルがあるんだから、RS=ロードスポーツならば、もっと軽量に仕立てた空冷4気筒のスポーツバイクも味わってみたい、というのはワガママですか?
(写真/赤松 孝、南 孝幸、森 浩輔)