優れたパフォーマンスが自慢の「ハンサム」な1台
このボバーは水冷DOHC4バルブVツイン1130㏄エンジン搭載する「スカウト」と同系エンジンを搭載するモデル。
アルミフレームや最高出力94馬力のエンジン、タンクの造形など、基本構成は同じだが、2018年モデルのボバー、スカウト系は軽さを意識してシートレールもアルミを採用。短いリアフェンダーや低めのハンドルを装着し、車高も落としてアグレッシブな雰囲気としている。ライディングポジションも、上体を低く構えて、いつでも来い、と戦闘準備をしているよう。ひと言で言うと「ワルっぽい」テイストだ。
もともと、スカウトは80年近く前に登場した初代インディアン社の名車・スカウトの銘を拝領したミドルクルーザー。ハンドリングはカッチリしていて、非常に素直でダイレクト。エンジンはスムーズに吹け、野蛮なノイズなどを一切発しない、先進の高性能ユニット。しかも、足がよく、荒れた路面での優れたスタビリティまで発揮してくれた。
低くてワルっぽい姿のボバーも、優れた走行性能は変わらない。低速トルクは十分。45㎞/hほど出ていれば、6速のままでもノッキングせず、威勢よいパルスを発しながら流せる。かと思えば、6速でちょうど100㎞/hほどから排気音がバーチカルツインのような音に変わり、吹けの勢いも増し始める。追い越し加速はリッタークラスのNKよりずっとトルキーでダイレクトな感触。ただの低中速型エンジンではなく、回せばドラマチックな「豹変」も潜んでいるのだ。120㎞/hくらいからの加速はさらに強烈だ。
車高を落としているため、1G(1名乗車状態)ではリアサスのロッドは35㎜ほどしか見えない。中に隠れている分を含めても、50㎜ほどという短いストロークだ。突き上げも激しいのでは、試乗前は思っていたが、実際に乗ると、スタンダードほどではないが、普通のギャップなら優れた接地性をキープできる。何より動きが良くて、乗り心地もいい。スイングアームに対し大きくスラントしているリアサスのレイアウトによって、少ない動きで大きくホイールの動きを抑制するリンク効果が出ているのだろう。
このボバー、クルーザーにしては小柄で、取り回しやすく、どこを走っても扱いやすいし、とても速い。単に粋なスタイルのスポーツクルーザーなだけではなく、エンジンも車体も傑出した高性能で、ハイクオリティな仕上がりが光る。ワイルドというより「ハンサム」なクルーザーである。
DETAIL
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2229×926×1154㎜
ホイールベース/最低地上高 1562㎜/123㎜
シート高/車両重量 649㎜/251㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒
総排気量/ボア×ストローク 1133㏄/99×73.6㎜
圧縮比/最高出力 10.7/94PS
最大トルク 9.95㎏-m/6000rpm
燃料供給方式/燃料タンク容量 FI/12.5L
キャスター角/トレール/変速機形式 29度/119.9㎜/6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ298㎜ディスク・φ298㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 130/90-16・150/80-16
RIDING POSITION 身長:176㎝・体重:68㎏
幅広い低めハンドルにフォワードステップだから、腰より前に手足を突き出している感じ。タンクや車体の側面の形状がいいのでホールドはしやすいが、気楽に乗るならハンドルで左右に引き倒しながら走ってもいい。そんな操作をしてもスゴく従順だ。