「抜かれたらもう何もできないと分かってました」(中上)
今年は全クラスで雨の決勝となった日本グランプリ。
Moto2クラスでポールポジションスタートとなった中上貴晶選手は、レースの半分以上をトップで走行していましたが、最終的に6位でフィニッシュとなりました。悔しい結果ではありましたが、苦手とするレインレースでの熱い走りは、駆けつけた多くのファンを沸かせてくれました。
母国グランプリだけに、レース後もスペシャルトークショーなどイベントで大忙しだった中上選手。すべてのイベントが終わった遅い時間の取材となりましたが、「自分にできることはやりきった」というスッキリした表情だった気がします。そんな中上選手のコメントをお届けします。
昨日に引き続き、イデミツ・ホンダ・チーム・アジアの岡田監督にも、今年の日本グランプリについてコメントをお聞きしたので、合わせてどうぞ!
中上貴晶選手コメント
「もちろんドライコンディションを望んでいましたけど、あいにくのウエットコンディションになってしまいました。3日間を通して決勝レースが1番雨量も多かったです。今回のFP1、2、3で問題を抱えていたのは主にフロントタイヤだったんですけど、決勝レースでは逆に、リアのグリップにすごく苦戦してしまいました。
FP1〜3までのリザルトを見る限り、自分が逃げ切れるスピードがないことはわかっていましたが、ポールポジションからのスタートだったので、とにかくいいスタートを切って、もう抑えるしかないって作戦でした。ラップタイムは気にせず、抜かれない事を重点に置いて、ブレーキングは頑張ってスピードを落とし、加速で少しでも後ろを離してって作戦でやってたんですど……。
抜かれたらもう何もできないと分かってましたし、一周目からずっと後ろから煽られているのも分かっていたし、かなりのプレッシャーがあった中、それでも12周目までトップを維持できたので、タイヤのグリップが取れずに苦戦した状況の中では、ベストは尽くしたと思います。
皆さんもご存知のとおり、今シーズンはウェットのレースが凄く多くて、自分はハッキリ言って遅かったです。問題があってもそれを解決できない自分がいたし、ドライみたいな絶対の自信がなくて。
ウェットになると順位も十何位に落ちていたし、遅い時は、1周目からごぽう抜きにされることもありました。今回はレースウィークを通じてウェットな状況で、タイムは遅いにも関わらず、12周トップを維持できたのは、自分としてはポジティブに捕らえたい気持ちがすごくあります。
やっぱり日本は母国なので、このままでは終われない、ウェットになったからと言って諦める自分ではない、ということを見せたかった。ただ、最終的に6位という結果は、ウェットレースでの自己ベストのリザルトではあるんですけど、最後の最後に順位を落としてしまったことで、最終的には悔しさの残るレース内容と結果になってしまいました。
ただ、決勝までのリザルトだけ見れば、ライバルたちみんなに「中上は落ちてくるな」と思われる状況の中、それでもトップを長く走れたのは、ライバルに対してちょっと今までとの違いを見せられたと思うし、自分にとっても凄く大きかったです。ウェットでも走れるんだって感じ取れたことは、今後に対してプラスに働くと思うし、自信になりました。
結果に対しての悔しさはあるんですけど、本当にギリギリの、苦戦している中では最大限の力は出せたので、全てを出し切った感はあります。
以前に比べたら着実に前進はできているんですけど、まだやっぱりウェットコンディションでは、ドライの時ほど強い自信がない。ドライでもウエットでも全然OKです、って言える自分になりたい気持ちが今は凄く強いです。
母国レースは気持ち的にモチベーションが上がりますけど、その反面、自分が優勝する姿を見たいと思ってくれる人が圧倒的に多いことを重々わかっているだけに、プレッシャーでもあります。でもその中で、やらなきゃいけないって覚悟を決めて、強い気持ちで挑めたのは、やっぱりファンの皆さんの声援だったり、日本国旗や、自分のゼッケンである『30』のフラッグが振られているのを本当に多く見たことが、本当に自分の中から湧いてくる力になりました。
来シーズンはMotoGPに上がるので、もっと大きなプレッシャーを感じると思いますが、でもその分、それが自分の力にもなると思います。
今年は残り3戦、本当にあっという間に最終戦を迎えてしまうので、気持ちとしては「残り3戦」ではなく、本当に目の前の1戦、1戦のことだけを考えて、悔いのないレースをしたいです。
やっぱりMoto2で6シーズンを戦ってきて、いろんな経験をしたし、自分のライダーとしての経験値になっているのは確かなので、Moto2に対して「これだけやってきた」という形にしたい。たたそれは、結果を残さないと形になりません。なので今は、残りの3戦全部を勝ちたい、本当にそんな気持ちでいます」
岡田忠之監督コメント
「Moto2決勝は周回数が短くなったので(※Moto3ウォームアップ中のオイル漏れの処理に時間がかかり、23周が15周に短縮された)、各チームが新品タイヤを使わなかったと思うんです。やはり周回が短い分、序盤の勝負になるので、タカもユーズドタイヤを使ったのだけど、そのユーズドタイヤが何周使ったものだったかが、勝敗の分かれ道になったと思います。
ただ、苦手な雨でも、序盤はずっといいペースで走れたので、十分にいい走りだったと思います。最終的に抜かれてしまったけれど、上位に入ったライダー達はみんな雨のスペシャリスト。タイヤの問題と共に、雨の得意・不得意が出たレースだったけど、褒めてあげたい内容だったと思います。
チームメイトのパウイも、後半はラップを重ねるごとに自己ベストを更新しなから走っていたので、いい勉強になったと思いますよ。
Moto3クラスのナカリンは、序盤でちょっと他のライダーと当たったりして、転びそうになってたみたいで。後半は彼もタイヤがたれてしまったのだけど、ポイントはゲットできた。彼は雨が得意なライダーだし、本人としてはもう少し上を狙ってたかもしれないけど、悪くない走りだったと思います。ただ(鳥羽)海渡がね、まだまだ自分のペースを掴みきれていないので、今年は残り3戦しかないけれど、早い段階で彼の調子を戻せるサポートをしたいなって思います」