文: 石川順一
▶▶▶写真はこちら|ホビージャパン「バリバリ伝説 1/24 完成品バイク 聖 秀吉/SUZUKI GSX750S KATANA」(画像6枚)
ハンドルを替えると、バイクの顔つきは変わる
純正のバーハンドルを外して、低いセパレートハンドルを組む。替えたのはハンドルだけなのに、ガレージから引き出した愛車は、昨日までとは別のバイクのような顔をしている。またがると上体が前に伏せ、目線が下がり、走り慣れた道の景色まで違って見える。ハンドルを替えたことのある人なら、あの日の高揚を覚えているだろう。
ハンドルひとつでも、バイクは変わる。40年あまり前の日本には、それを誰よりも強く感じさせた1台があった。そして同じころ、少年誌の漫画のなかに、その1台を本来の姿に戻して峠を走る高校生がいた。
主人公より速かった男とその相棒
その漫画が『バリバリ伝説』だ。のちに『頭文字D』を描くしげの秀一が『週刊少年マガジン』で1983年に始め、1991年まで描き続けた全38巻のバイク漫画である。峠を走るのが好きな高校生の巨摩 郡(こま ぐん)がサーキットに出会い、鈴鹿4耐、全日本選手権、世界グランプリへと駆け上がっていく。
ところが物語の序盤、グンの前にはいつも別の男がいた。関西から転校してきた聖 秀吉(ひじり ひでよし)だ。2人は峠で、抜かれたほうが負けという「ウサギとカメ」の勝負を繰り返すが、秀吉は一度もグンに前を譲らなかった。派手に攻めるグンとは対照的に、秀吉の走りは堅実で、マシンをいたわる。正反対の2人が組んだ鈴鹿4耐では、チームが優勝をつかんだ。
その活躍からプロ入りが決まった秀吉は、直後に峠で命を落とす。遺された愛車は修理すればまだ走れたが、グンは誰かに乗られるのも、ガレージで埃をかぶるのも嫌だと、自分の手で燃やして弔った。主人公より速かった男の相棒は、こうして物語から姿を消している。そのバイクが、スズキのGSX750Sだった。

ホビージャパンが1/24で立体化する、聖秀吉のGSX750S KATANA。
国内版が付けられなかった、輸出仕様の顔
GSX750Sのルーツは、ドイツのケルンショーで披露され「ケルンの衝撃」と呼ばれたGSX1100S KATANAにある。日本刀から着想を得たこのバイクは1981年から欧州へ輸出されたが、当時の日本には、国内で売るバイクの排気量を750cc以下に抑えるメーカーの自主規制があった。そこでスズキは1982年、排気量を747ccとした国内向けのGSX750Sを送り出す。
ただし、日本のライダーの前に現れたのは、輸出仕様とは異なる顔つきのバイクだった。低いクリップオンハンドルは、耕運機ハンドルとも揶揄された、グリップ位置を起こしたアップハンドルに置き換えられていた。発売当初はスクリーンもなく、車名にさえ「カタナ」とは入っていない。1100用のハンドルを取り寄せて付け替えたオーナーが多かったといわれるのも、うなずける話だ。
秀吉のGSX750Sは、そこからさらに踏み込んだ1台。ハンドルとスクリーンは輸出仕様と同じものに替えられ、フロントフェンダーは外されている。国内版が実現できなかった姿を、高校生が自分のバイクで取り戻していたわけだ。カタナといえば低く構えたあの姿を思い浮かべる人にとって、秀吉の愛車は、あるべき姿のGSX750Sに映ったことだろう。

銀の車体に赤い「SUZUKI」のロゴが映える
秀吉仕様を、全長9cmの金属の車体に
物語のなかで失われたそのカタナを、ホビージャパンが1/24の完成品モデルとして形にした。車体は亜鉛合金のダイキャストで、塗装まで済んだ状態で届く。同じ作品を題材にしたプラモデルと違って、組み立ても塗装も要らないから、箱から出したその日に飾れる。全長は9cmほどで、手のひらに乗る。バイク模型で定番の1/12と比べると半分ほどの長さなので、机の片隅や本棚の一段にも気軽に置けるサイズ感だ。

ハンドルまわり。左右に分かれた低いセパレートハンドルと、メーターの文字盤まで再現している
この大きさのなかに、秀吉の愛車がそのまま再現されている。フォークの上部に左右別々に留められた低いセパレートハンドル、その前に立つ小ぶりなスクリーン、フェンダーのない前輪。国内版のアップハンドルではなく、この低いハンドルが付いているからこそ、ひと目で秀吉のカタナだと分かる顔になっている。ハンドルを替えたあの日に自分のバイクで見た変化を、今度は机の上で外から眺められる。

エンジンまわり。4本のエキゾーストパイプが1本にまとまる集合マフラーを備える
排気系も秀吉の仕様だ。4本のエキゾーストパイプは車体の下で1本にまとまり、集合マフラーとなって後ろへ伸びる。実車を知る目で見ても見どころは多く、空冷4気筒エンジンには冷却フィンが刻まれ、ブレーキディスクやホイールの形まで造形されている。サイドスタンドまで出し入れできるので、スタンドを払った姿と、出した姿のどちらで飾るかを選べる。
秀吉のカタナを、ケースごと机の上へ
専用の台座とクリアケースが付属するので、ホコリを気にせず出したままにしておける。パッケージには原作の絵があしらわれていて、箱ごと飾りたくなる仕立てなのも、作品を読んできたファンにはうれしい。

原作の絵をあしらったパッケージ。クリアケースと専用の台座が付属する
価格は税込4,290円。発売は2027年1月以降の予定で、ホビージャパンの直営店と全国の模型店で、現在予約受付中だ。同じシリーズにはグンのCB750Fもあるから、2台を並べれば、峠で競り合った2人が机の上でもう一度顔をそろえる。
ケースのなかで、低いハンドルのカタナが静かに前を向いている。眺めているうちに、自分のバイクのハンドルに手を伸ばしたくなるかもしれない。顔が変わったあの日の高揚は、9cmの車体にもちゃんと宿っている。
ホビージャパン バリバリ伝説 1/24 完成品バイク 聖 秀吉/SUZUKI GSX750S KATANA 主な仕様
・種類:ダイキャスト製塗装済み完成品
・縮尺:1/24
・寸法:全長約9cm
・素材:ダイキャスト(亜鉛合金)、ABS、TPR
・可動箇所:サイドスタンド
・付属品:クリアケース、専用台座、オリジナルパッケージ
・価格:4290円(税込)
・発売時期:2027年1月以降の予定(予約受付中)
おすすめ関連記事





