2026年10月1日から、首都高速の料金が10%値上げされる。一方で、主にトラックなどの中・大型車が利用する、最大45%引きの「大口・多頻度割引」は5年間継続。路面に与えるダメージが大きい中・大型車が優遇されるのに対し、路面への影響が少ないバイクまで一律に値上げされるのだ。そもそも首都高は将来無料化するはずだったのでは……? 首都高速道路会社に疑問を直接ぶつけてみた。

まとめ:沼尾宏明
▶▶▶二輪車と普通車の料金表/首都高の単年度収支ほか(画像6枚)

パブコメ734件のうち、料金改定を評価したのはたったの13件

ひと昔前、バイクは一律500円だったのに、今では最大1740円……。首都高速の料金が2026年10月1日から改定され、二輪車&軽自動車の料金が280~1740円に変更される。これはETC利用時の料金で、非ETC車は最大料金が適用されるため問答無用で1740円に。普通車も1km当たりの料金が引き上げられ、基本料金は10%アップだ。

画像: 二輪車と軽自動車は280~1590円から280~1740円に。中・大・特大車は2027年7月1日から値上げとなる。

二輪車と軽自動車は280~1590円から280~1740円に。中・大・特大車は2027年7月1日から値上げとなる。

今回の料金改定に先立ち、2025年12月24日から2026年1月15日までパブリックコメントが実施された。寄せられた意見は734件。そのうち、料金改定を評価する意見はわずか13件だった。

大半は料金改定に対して見直しを求める意見だったことになるが、首都高速は10月1日からの料金値上げに踏み切った。なぜ、値上げが必要なのだろうか。

維持管理コストは10年間で4割増 それでも値上げ効果は「当面5年」

首都高が値上げに踏み切った理由は大きく二つ。まず一つ目が「維持管理費の増加」だ。

パブリックコメントでの首都高の回答によると、資材価格や人件費の高騰などによって、道路の管理・補修に必要な費用は直近10年間で4割増加。現行料金を維持したまま、大口・多頻度割引を廃止せず、労務費や材料費の高騰が続いた場合、年間500億円もの資金が不足するという。

物価高だけに、ある程度コストが増加するのはわかるが、いきなり「年間500億円の資金が不足する」ことに驚く。コスト削減の余地はないのだろうか。

この点について首都高速は、これまでにもコスト削減に取り組んできたとパブコメで説明している。

「これまで、道路サービスの提供にあたり、昨今の社会情勢の変化に対応するため、不断のコスト縮減に取り組んできており、省電力機器の採用、メンテナンス技術開発、工事による交通規制の集約化などの1年あたり40億円のコスト縮減を行いました」。しかし「昨今の労務費・材料費の高騰により、経営努力のみによる対応が困難」となり、料金改定に踏み切ったという。

ここで気になるのが、今回の値上げによって維持管理費を確保できる期間だ。

首都高速によれば、今回の改定でも維持管理費を確保できるのは「当面5年」(!)。5年後の2031年3月末までに大口・多頻度割引を順次縮小し、全車で割引率を最大12%に統一する方針だ。

つまり5年後に再び料金がアップする可能性が高く、今回の値上げで維持管理費の問題が長期的に解決するわけではないのだ。

画像: 道路の補修に加え、事故や落下物への対応なども含めた道路サービスの維持にコストがかかるという。※写真は首都高速資料より

道路の補修に加え、事故や落下物への対応なども含めた道路サービスの維持にコストがかかるという。※写真は首都高速資料より

最大45%の割引は継続 その費用は一般ユーザーが負担?

今回の料金改定でもう一つ大きなポイントとなるのが「大口・多頻度割引」だ。この制度は、主に事業者が対象で、条件に応じて通行料金を大幅に割り引くもの。最大割引率は45%に達する。さらに、深夜割引など他の割引と組み合わせることで、条件によっては普通車とほぼ同額の料金になるケースもある。

この大口・多頻度割引は、2027年3月末に期限を迎える予定だったが、今回、物流を支えるため、5年間継続されることになった。

首都高速は「国民生活・経済活動を支える物流などの支援」のため、経営判断として割引を継続する、とパブコメの回答などで説明する。

物流を支えることは、もちろん重要だが、気になる点もある。大口・多頻度割引の利用者には、バスやトラックなどの中・大型車が多い。これらは二輪車や普通車と比べて車両重量が大きい。道路を維持するためのコストが上昇しているのであれば、利用量や道路への負荷が大きい車両について負担を大きくするのが適切なのでないだろうか?

この点について首都高速に質問した。

「今回の料金改定は、道路の補修だけではなく、事故や落下物等への対応等も含む維持管理コストが上昇している中で、今後も道路サービスを提供するために行うものです」(首都高速道路会社 経営企画部 広報課 ※以下同)

その一方で、大口・多頻度割引について、普通車の料金と同等になることや、割引率が高いこと、割引が適用されない他の普通車や将来世代の利用者に債務返済の負担が伴うことなどを踏まえ、「受益と負担の均衡を図るという公平性の観点から見直す必要がある」と検討会で指摘されているとの回答もあった。

そして「検討会での指摘や社会経済情勢を踏まえ、将来の対応は引き続き検討して参ります」としている。

物流を支えるために割引制度を維持する。その一方で、一般のライダーやドライバーが割引の肩代わりをする構図になっているのでは? この料金負担のあり方については、今後さらに議論する必要がありそうだ。

画像: 東京都心の大動脈として物流や経済活動を支える首都高速。その維持費を誰がどのように負担するのかが問われる。

東京都心の大動脈として物流や経済活動を支える首都高速。その維持費を誰がどのように負担するのかが問われる。

二輪車も10%値上げ、なぜバイクは軽自動車と同じ料金なのか?

そして今回、二輪車も値上げの対象だ。しかも、二輪車は以前から軽自動車と同じ料金区分に設定されている。二輪車は四輪車より軽く、タイヤも2本しかない。もちろん、料金区分は単純に車両重量だけで決められるものではないが、道路の維持管理コストが今回の値上げ理由の一つである以上、「道路に与える負荷が異なる二輪車と四輪車を同じ料金区分としてよいのか」という疑問は残る。

首都高速の回答は次のとおり。

「今回の料金改定は、現行の車種区分を維持したまま行います。現行の車種区分は、首都圏における管理主体(首都高とNEXCO)を超えたシームレスな料金体系とするため、基本的に各道路において車種区分及び車種間比率を5車種区分に整理・統一しております。

また、高速道路料金の車種区分は、車種間の負担の公平を図りつつさまざまな要素から総合的に決定されております。

この車種区分の考え方については、国土交通省HPに記載があります。一方、国の社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会において、高速道路の車種区分について議論が行われていることは承知しており、会社としては、このような議論や国等の関係機関の動きについて引き続き注視して参ります」

現状では、NEXCO3社らと同様、二輪車を独立した料金区分にはせず、軽自動車と同じ区分を維持するということだ。

しかし、ここで注目したい数字がある。今回、首都高速に尋ねたところ、首都高速の全交通量に占める二輪車の利用率は「約0.5%」という(首都高速道路交通起終点調査 2023年10・11月 現時点での最新の調査結果)。

首都高を利用する二輪車は、全交通量のわずか0.5%にもかかわらず、二輪車は軽自動車と同じ料金区分に置かれ、今回も値上げされる。

もちろん、利用率だけで料金を決めることはできない。しかし、この利用率の低さと、道路への影響を合わせて考えれば、やはりバイクの料金は割高と感じられる。とはいえ、回答で車種区分見直しについて言及しているのは明るい材料だ。

画像: 二輪車は軽量で、四輪車とは道路への影響も異なる。それでも現在は軽自動車と同じ料金区分だ。

二輪車は軽量で、四輪車とは道路への影響も異なる。それでも現在は軽自動車と同じ料金区分だ。

「無料化」のために値上げ? 首都高の料金徴収はいつまで続くのか

もうひとつ、今回の値上げで気になるのが「首都高の無料化」はどうなったのか、という根本のギモンだ。

当初は、建設などにかかった債務の返済を2050年までに終え、無料化する計画だった。首都高速が民営化された2005年の未償還債務は42.5兆円。その後、2024年4月時点で30.4兆円と順調に返済は推移している。しかしながら、当初の債務返済計画に道路施設の大規模更新・修繕の費用を盛り込んでいなかったのだ(!)。

現在の首都高速道路の料金徴収満了日は2074年3月20日。それまでに債務を返済しなければならない。

では、債務返済に充てる金額を抑え、その分を維持管理費に回すことはできないのか。これについて首都高速に質問したところ、次の回答があった。

「計画管理費及び貸付料を料金徴収期間内に料金収入で賄えるように、首都高の通行料金を設定しており、通行料金を変更せず貸付料を下げた場合は、現行の料金徴収期間内での返済が困難になります。債務返済額(貸付料)は、計画料金収入から計画管理費(維持、修繕その他の管理に要する費用)を除いた額であり、計画料金収入に対する割合により設定しているものではございません」

つまり、料金収入から維持・修繕などの管理費を差し引き、その残りを債務返済に充てる仕組み。単純に債務返済に回す金額だけを減らして、その分を維持管理費に回すという考え方ではない。首都高速としては、料金徴収期間内に債務を返済するという「償還主義」を維持する必要があるわけだ。

ただ、ここでまたしても疑問が。もはや本気で「無料化」が実現すると思っている人は少数派のはず。償還主義を見直し、維持管理費に回せば、現状のような「無料化に向けて値上げする」という奇妙な事態にはならないのではないか? また、修繕費用を盛り込んでいなかったという当初の見通しの甘さにも疑問が残る。

画像: 今回の値上げによって当面5年間の維持管理費を確保する一方、年間約1900億円の債務返済は今後も続く。※注……収支には物流対策の割引拡充(約300億円)が表記されていない

今回の値上げによって当面5年間の維持管理費を確保する一方、年間約1900億円の債務返済は今後も続く。※注……収支には物流対策の割引拡充(約300億円)が表記されていない

【まとめ】二輪車にも独自の料金体系を 「0.5%」の利用実態をどう考える?

今回の首都高料金改定は、単純に「10%値上げ」だけで終わる問題ではない。首都高速は厳密には高速道路ではなく、「自動車専用道路」だが、東日本、中日本、西日本のNEXCO3社などが管轄する高速道路も追随し、「値上げ」する可能性が十分ある。

修繕費や維持管理などコストが増しているのは首都高速だけではない。首都高が値上げする理由は、そのまま他の高速道路にもあてはまるからだ。

無料化を目指しながら、道路を維持することは可能なのか、その費用を誰がどのように負担するのか、そして二輪車の負担は本当に公平なのか。改めて問題を提起したい。

画像: バイクにとっては首都高のETC専用化も大きな問題。二輪車は車載器の搭載スペースが限られことに加え、ETC車載器の普及率は約50%と言われている。ETCを搭載していない二輪車は最大料金が適用され、将来的には料金所にも入れなくなる?

バイクにとっては首都高のETC専用化も大きな問題。二輪車は車載器の搭載スペースが限られことに加え、ETC車載器の普及率は約50%と言われている。ETCを搭載していない二輪車は最大料金が適用され、将来的には料金所にも入れなくなる?

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