カワサキZ、ホンダCB-F、スズキGS……。昭和に誕生した名車たちが、現代の筑波サーキットを本気で攻める。年2回開催される「テイスト・オブ・ツクバ」は、日本を代表するアマチュアモーターサイクルレースの一つだ。古いバイクをいたわりながら走らせるイベントではない。ライダーもコンストラクターも速さの先にある勝利を本気で追い求め、その結果としてマシンもタイムも進化を続けている。なぜ、誕生から30年以上を経た今も多くの人を熱狂させるのか。その独特な世界を紹介しよう。

筑波サーキットに集まる名車たち。これは単なる“旧車の運動会”ではない

場所は茨城県下妻市にある筑波サーキット。全日本ロードレース選手権も開催されるこの舞台で、年に2回、主にスチールフレーム車を中心とした往年の名車たちが激しいバトルを繰り広げている。

カワサキの空冷ZやGPZシリーズ、ホンダCB-F、スズキGS/GSXシリーズ……。30~40年も前に全盛期を迎えたマシンがパドックにズラリと並ぶ光景だけでも壮観だ。しかし、ひとたびコースインすれば、「旧車」という言葉から想像するような牧歌的な空気は一変する。

ライダーはコンマ1秒を削り、コンストラクターはさらに速く走らせるために知恵を絞る。エンジン、フレーム、サスペンション、ブレーキ、そしてタイヤ。長年積み重ねられてきたノウハウによってマシンは進化し、ラップタイムも更新され続けてきた。

古いバイクだから無理はさせない、ではない。古いバイクだからこそ、どこまで速くできるのか。その答えを本気で追い続けているのが、テイスト・オブ・ツクバなのだ。

画像: 2026 テイスト・オブ・ツクバ 皐月ステージのパドック風景。GPZやZなどをベースとしたレーサーがずらりと並ぶ(撮影:山内潤也)

2026 テイスト・オブ・ツクバ 皐月ステージのパドック風景。GPZやZなどをベースとしたレーサーがずらりと並ぶ(撮影:山内潤也)

画像: 2026 テイスト・オブ・ツクバ 皐月ステージの決勝シーン(撮影:山内潤也)

2026 テイスト・オブ・ツクバ 皐月ステージの決勝シーン(撮影:山内潤也)

車種も改造範囲もさまざま。だからテイストは面白い

テイストの各クラスには「Days of Bike and Roses」というサブタイトルが付けられている。「D.O.B.A.R.(ドーバー)」という略称を聞けば、ピンと来る人も多いことだろう。

元ネタは、1962年公開のアメリカ映画『Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)』。アルコールによって人生が大きく揺らいでいく夫婦を描いたシリアスな作品だが、それを「Wine」から「Bike」へ置き換えたあたりに、テイストらしい洒落と、バイクへの少々危険なほどの愛情が感じられよう。

青春時代に憧れたバイクを手放せない。手に入れたら今度は速くしたくなる。そしてサーキットへ持ち込み、気が付けば何十年も走り続けている。そんなエントラントたちの姿を見ると、「Days of Bike and Roses」という言葉が妙にしっくりくるのだ。

クラスについては、主に年代や排気量、エンジン形式、改造範囲などによって細かく分けられている。近年は、現行モデルも参加できるSTREET FIGHTERをはじめ、1990年代のレーサーレプリカを対象としたZERO-5、さらにスチールフレーム車であれば改造はほぼ無制限なHYDRAなど、新たなカテゴリーも誕生した。

昔からの価値観だけに囚われるのではなく、現行車や新たなカスタマイズの手法も受け入れる。古いものを大切にしながら、進化することをやめない。そこにもテイストが36年間も続いてきた理由の一端があるのだ。

画像: 現行KATANAが参加できるクラスから油冷、空冷、水冷が三つ巴となるクラスまで多岐にわたるのがおもしろい。

現行KATANAが参加できるクラスから油冷、空冷、水冷が三つ巴となるクラスまで多岐にわたるのがおもしろい。

画像: オリジナルのスチールフレームに隼エンジンを搭載した車両はHYDRAクラスに参戦。ライダーは加賀山選手だ。

オリジナルのスチールフレームに隼エンジンを搭載した車両はHYDRAクラスに参戦。ライダーは加賀山選手だ。

画像: Days of Bike and Rosesにちなみ、表彰台に上がったライダーにはバラの花束がプレゼントされる。

Days of Bike and Rosesにちなみ、表彰台に上がったライダーにはバラの花束がプレゼントされる。

この文化は突然生まれたわけではない

現在の名称である「テイスト・オブ・ツクバ」としての初開催は2007年10月。しかし、その歴史はさらに17年も遡る。前身となった「テイスト・オブ・フリーランス」のスタートは1990年10月。つまり「テイスト」という文化そのものは、2026年で実に36年を数えるのだ。

1990年といえばレーサーレプリカブームの真っただ中。アルミフレームやラジアルタイヤを採用した高性能マシンが次々と登場し、バイクの性能が猛烈な勢いで進化していた時代である。

その一方で、単気筒や2気筒車を対象とした「B.O.T.T.(バトル・オブ・ザ・ツインズ)」や、旧車イベントの「タイムトンネル」といった、それまでとは異なる価値観を持つ草レースも次々と生まれていた。

速い最新モデルやプロダクションレーサーを買うだけではない。自分が好きなバイクを、自分たちの手で速くする。

そんなムーブメントの中にあった草レース「スピリット・オブ・シングル」が、1990年10月の大会から名称を「テイスト・オブ・フリーランス」へと変更した。我々はこの大会を、現在まで続くテイストの第1回と位置付けている。

画像: 雑誌バイカーズステーション1990年12月号に掲載された「テイスト・オブ・フリーランス」第一回目の記事。レースは1990年10月9日に開催された。場所はもちろん筑波サーキットだ。

雑誌バイカーズステーション1990年12月号に掲載された「テイスト・オブ・フリーランス」第一回目の記事。レースは1990年10月9日に開催された。場所はもちろん筑波サーキットだ。

36年の歴史を、一冊の本に残したい

ライダーが変わり、マシンが変わり、時代が変わっても、テイストの熱気は受け継がれてきた。だからこそ、この36年間を後世に残せる本を作りたい。

現在、テイスト・オブ・ツクバの最新レースレポートと、前身であるテイスト・オブ・フリーランスの貴重な記事や写真を組み合わせた「テイスト・オブ・ツクバ&フリーランス」本を制作するため、クラウドファンディングを進めている。

一冊だけで36年すべてを語り切れるはずもない。そこで複数回に分け、この世界に登場したマシン、ライダー、ショップ、そして数々の名勝負を記録していく計画だ。

では、そもそもテイスト・オブ・フリーランスとは、どのような時代から生まれたレースだったのか。次回は1990年代初頭へ時計の針を戻し、その原点を振り返ってみたい。

画像: これは1994年12月大会の写真。イエローコーンのZだ。当時、雑誌バイカーズステーションで取材し記事化されたときの素材を利用し、「テイスト・オブ・ツクバ&フリーランス」本を制作する。

これは1994年12月大会の写真。イエローコーンのZだ。当時、雑誌バイカーズステーションで取材し記事化されたときの素材を利用し、「テイスト・オブ・ツクバ&フリーランス」本を制作する。

画像: 「テイスト・オブ・ツクバ&フリーランス」本は雑誌バイカーズステーションに掲載された思い出深い誌面をスキャニングし転載する。

「テイスト・オブ・ツクバ&フリーランス」本は雑誌バイカーズステーションに掲載された思い出深い誌面をスキャニングし転載する。

画像: 雑誌はクラウドファンディグへの支援に対してのリターン品となる。クラウドファンディングでの支援者には特別に希望する名前を雑誌に掲載する。特別なプレゼントもあるので楽しみにしていて欲しい。 クラウドファンディングはこちらから camp-fire.jp

雑誌はクラウドファンディグへの支援に対してのリターン品となる。クラウドファンディングでの支援者には特別に希望する名前を雑誌に掲載する。特別なプレゼントもあるので楽しみにしていて欲しい。

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