まとめ:松本正雅
増え続けるバイクの電子制御を一括管理する“通信司令塔”

BOSCH
モーターサイクル用 セントラルゲートウェイ
近年のオートバイは、電子制御技術の進化によって飛躍的な発展を遂げている。ABSやトラクションコントロールはもちろん、TFTメーターのスマートフォン連携、キーレスシステム、さらには無線通信によるソフトウェアアップデートまで実現されつつある。
こうした高度化する電子制御システムを支えるデバイスが、ボッシュが開発する「セントラルゲートウェイ」。2024年のミラノショー(EICMA)で世界初公開されたこの機構、簡単に言ってしまうとバイクの電子制御システム全体を統括する「通信司令塔」のような存在なのである。


従来のバイクでは、ABS ECU、エンジンECU、メーターなどがそれぞれ個別に通信していた。しかし電子制御機能が増えるにつれ、通信量やセキュリティ管理が複雑化している。
そこでセントラルゲートウェイが、そうした車両内の通信を1台で一括管理しよう、というわけだ。
ちなみに、この図にある「CAN」は「Controller Area Network」、「LIN」は「Local Interconnect Network」の略。どちらも車載ネットワークの基本的な技術だ。このほかにもイーサネットやOBDなど、バイクを取り巻く車両内の通信環境は多岐にわたっているのだ。
これら規格の異なるネットワークのハブ的な役割を果たそう、というのがセントラルゲートウェイ」。たとえば、エンジンのECUが生成した車速情報をABSやメーターへ送ったり、スマートフォンから受信したデータを必要なシステムへ振り分けたりするなど、車両全体の通信窓口を一か所にまとめて、効率的に管理するのである。
サイバーセキュリティ対策にも有効
ではこの「セントラルゲートウェイ」を採用することで、どんなメリットがあるのか?
ボッシュがセントラルゲートウェイで特に重視しているのがサイバーセキュリティだ。
スマートフォンとのBluetooth接続やクラウドサービスとの通信が一般化したことで、バイクも外部ネットワークと常時接続される時代になりつつある。しかし、便利になる一方で、不正アクセスやサイバー攻撃のリスクも高まっていく。
そこでセントラルゲートウェイは、外部と接続する通信領域と、ABSやエンジン制御など安全性に直結する領域を分離する仕組みを採用している。
仮にスマートフォン接続部分へ不正アクセスが発生したとしても、その先にあるエンジン制御やブレーキ制御へ直接侵入できない構造となっている。まさに「電子制御の門番」と呼ぶにふさわしい存在なのである。
また、スマートフォンのOSアップデートと同じように、インターネット経由で車両ソフトウェアを更新する「OTA(Over The Air)アップデート」も今後ますます盛んになっていくと言われており、このセントラルゲートウェイを使えば、従来であれば販売店へ持ち込まなければならなかったECUプログラムの更新も、自宅のガレージで完了できるようになるし、ライディングモードの追加やセキュリティアップデートも可能になったりするのだ。
将来の“ソフトウェアで進化するバイク”を支える重要なデバイス

自動車業界では近年、「Software Defined Vehicle(SDV)」という考え方が広がっている。これは車両の価値をハードウェアだけでなく、ソフトウェアによって継続的に進化させるという概念だ。
この流れはいずれバイク界にも広がると言われており、その際に中心的な存在となるのがセントラルゲートウェイ。一見すると少し大きめのIMUのようにも見え、何の役に立っているか分かりにくいデバイスだが、この小さなユニットが、次世代コネクテッドモーターサイクルの普及を支えるキーテクノロジーとなる。
スマートフォンをキーとして使用するデジタルキー機能や車両位置情報サービス、事故発生時の緊急通報機能や盗難対策システムなど、これから到来する「コネクテッド時代」には、このセントラルゲートウェイの存在が不可欠となるのだ。






