2025年9月8日、ホンダはハンズフリーモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」を発表した。日本国内の法人ユーザーに向けて9月24日に発売する。同製品は、道路交通法にて歩行者扱いの車両区分「移動用小型車」に分類される電動モビリティであり、座ったまま体重移動で操縦するユニークな1台となっている。今回の発表に合わせて、体験会も開催された。
レポート:蔭山洋平(スマートモビリティJP編集部)
※この記事はウェブサイト「スマートモビリティJP」で2025年9月8日に公開されたものを一部編集し転載しています。

体重移動でコントロールする電動車いす

ホンダの製品と言ったらなにを思い浮かべるだろうか。多くの人はクルマやバイク、近年だと小型ジェット機と答えるひともいるかもしれない。もちろん販売されている製品はこれだけではなく、そのジャンルは多岐に渡るのだが、そのほとんどが「目的地へ行くためのモビリティ」だった。どうしたら安全に、快適に、楽しく、効率的に、そして早く目的地へ到着できるか、改良に改良を重ねられてきた。

ところが、今回発表されたUNI-ONE(ユニワン)は従来の製品ラインナップとは一線を画す、「目的地で使うモビリティ」なのだという。

ASIMOをはじめとするロボティクス研究で培った技術を活用して開発されたもので、座って体重移動するだけで歩くように6km/h以下で移動できる電動モビリティだ。操縦にレバーやハンドルなどを必要としないため両手を自由に使えること、体重移動という操縦のわかりやすさもあって、小さな子どもから高齢者まで幅広い年齢層の利用が期待できる。

画像: ユニワンの活用イメージ。両手が空くため、幅広いユーザーに快適な移動が提供される。

ユニワンの活用イメージ。両手が空くため、幅広いユーザーに快適な移動が提供される。

ユニワンは2022年の国際ロボット展ではじめて公開され、2023年には有償実証実験を開始2025年1月には「移動用小型車」として型式認定を取得したことで、公道走行も可能になった。ただし、2025年9月の販売開始にあたっては、公道走行は想定されていない。

利用シーンは主に屋内・屋外の施設の中での回遊や、オフィスでの業務負荷軽減などだ。施設内での長時間歩行に不安を抱えるひとの外出をあと押しし、一方でオフィス業務では両手を自由に使える設計を活かした労働生産性向上に貢献するといった活躍が期待されている。

歩くときに無意識で行なっている体重移動を

今回、ユニワンの販売開始と稼働予定の発表に合わせて、体験会も実施された。

外観は白い椅子の四隅にタイヤが装着されている……そんな印象だが、実はこの4つのタイヤは駆動輪ではなく、乗降するときにボディを安定させるローポジションで展開するもの。

画像: 写真は四隅のタイヤで安定させる「ローポジション」で、この状態で走行することはできない。

写真は四隅のタイヤで安定させる「ローポジション」で、この状態で走行することはできない。

一方で、走行形態とも言えるハイポジションでシート位置は15cm高くなることもあって、目線の高さは立っているときとそう変わらない印象だ。大きな違いは両サイドの「2輪だけで立っている」ということ。ユニワンが自動制御を行なってバランスをとっており、この状態で体重移動せずに座っているだけなら移動することなくユラユラ不安定になることもない。少し不思議な感覚になる。

画像: 前後方向に回転するタイヤに、横方向へ回転するベルトが無数に組み込まれる、ホンダ オムニ トラクション ドライブ システムが搭載されている。

前後方向に回転するタイヤに、横方向へ回転するベルトが無数に組み込まれる、ホンダ オムニ トラクション ドライブ システムが搭載されている。

ここからお辞儀をするように体重を前にかけると前進、首をかしげるように横に体重をかけるとその場で方向転換する。前進と方向転換を同時に行えば旋回となる。実践できなかったが、微速ながら後退もあるようだ。いずれにしても、ひとが歩くとき無意識に行なっている体重移動を意識的に行うことで移動できるモビリティであり、操縦の難しさは感じない。

走行中にヒトやモノにぶつかったとしても、その衝撃を吸収するような動きでいなして安定させ、もし吸収しきれずに不安定な状況になっても緊急的にローポジションへ移行して転倒を防いでくれる。ちなみに、駆動用の2輪はカバーによりほとんど見ることはできないのだが、これはひとと衝突したときに相手を怪我させない工夫でもあるのだという。

画像: スラロームをジグザグに走行。体を傾けると速度の微調整が難しいので頭を傾けるようにして体重移動する。

スラロームをジグザグに走行。体を傾けると速度の微調整が難しいので頭を傾けるようにして体重移動する。

交換式のリチウムイオンバッテリーを搭載して走行可能時間は約3時間、距離にすると10kmほど。広大な敷地面積を持つアウトレットモールやテーマパークなどでお客が乗って移動、配達スタッフや警備員が巡回するために乗る、また病院では座位バランスを取ることが困難な人のためのリハビリトレーニングツールなど、場所や用途はさまざま。

また、AR(拡張現実)グラスを組み合わせて、水中や空中、そして宇宙空間を浮遊するような擬似体験できるコンテンツも検討されており、ユニワンの用途は今後も多方面へ拡大していくだろう。

テーマパークへの導入も決定

販売は、日本国内の法人を対象に、公式ウェブサイトを通じて行われる。ユニワン本体のほか、交換式バッテリーやメンテナンス、保険(対人・対物)をパッケージとした「サービス契約」の形式で提供。販売予定台数は2030年までの5年間に1000台(200台/年)を計画している。

なお、大分県の屋外型施設「サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド」はすでに導入を決定しており、2025年10月19日から稼働を開始するという。まずは10台が導入されて、内2台はスタッフ用、8台は来場者向けに配備されるという。利用方法はまだ確定していないが予約制になることが予定されている。

同施設は親子三世代をはじめ幅広い層の来園者が訪れる場所であるため、長時間の歩行が困難な人々にもパーク内の快適な移動体験が提供されることになるだろう。

【ユニワン月額料金/1台】

10台未満10台以上
3年契約12万円10万円
6年契約9万円8万円

※期間限定のイベント用に、1日から利用できる「短期レンタルサービス(UNI-ONE、バッテリー2個、充電器、保険)」を、1日当たり5万5000円/台で提供。

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