世界中で高い評価を得ている日本の4大メーカーは各国でさまざまなモデルを展開していますが、中には日本ではなかなかお目にかかれない珍しいモデルも数多く存在します。ということで、毎週火曜日に“知る人ぞ知る”激レアモデルを紹介するこの連載企画。5回目はアフリカで活躍中のスズキのTF125。ルーツはなんと、1970年代の2ストの名車・ハスラー125なのです!
まとめ:松本正雅

農園で大活躍する「ファーマーズバイク」

画像: SUZUKI TF125 販売国:ガーナ、ケニア、ギニア、ガボン等 総排気量:293.5cc エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒 シート高:859mm 車両重量:147/149kg 現地価格:2496.62USドル(ユニセフサプライ価格) ※約36万8811円

SUZUKI
TF125
販売国:ガーナ、ケニア、ギニア、ガボン等

総排気量:293.5cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒
シート高:859mm
車両重量:147/149kg

現地価格:2496.62USドル(ユニセフサプライ価格)
※約36万8811円

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日本ではほとんど聞かないのですが、海外には「ファーマーズバイク」や「アグリカルチャーバイク」と呼ばれるジャンルがあったりします。コレは何かといいますと、農場で作業に従事する方たちの移動用のバイクのこと。

広大な農園も数多く存在する海外だと、徒歩での移動は不可能。しかも農園と言っても平坦な土地だけではなく、中には山あいの急斜面に存在するものだってありますし、路面は当然ながら未舗装が主流。そんなこともあって、機動力に優れるバイクは移動手段に最適…ということで、農作業用に、トレールモデルをベースに独自の進化を遂げたバイクたちなのです。

画像: YAMAHA AG200(1985)

YAMAHA
AG200(1985)

かつては日本でもこのジャンルのバイクが国内市販されたことがありました。それがこのヤマハ・AG200。Xt200をベースとしたモデルで1985年に登場しますが、国内では広大な農場をバイクで移動、なんてシチュエーションはほぼなく、ちょっと個性的でタフなトレールモデルとして販売されましたが、知名度は残念ながらいまひとつでした。

画像1: 農園で大活躍する「ファーマーズバイク」

今回紹介するスズキのTF125もそんなファーマーズバイク。かつてはオーストラリアやニュージーランドなどで活躍していましたが、2ストロークエンジン搭載車、ということもあって、環境問題や排出ガス規制やらの影響で徐々に活躍の舞台は狭まっていき、現在はガーナ、ケニア、ギニア、ガボン…といったアフリカ諸国で販売されています。

画像2: 農園で大活躍する「ファーマーズバイク」

この写真を見てピンときた方はなかなかの通。そう、サイドスタンドが右側にも付いているんですねー。ちなみにこの右側サイドスタンド、このTFに限った装備ではなく、ファーマーズバイクならみんな付いているアイテム。傾斜地に停めるときやあぜ道の左右に畑があるときなど、どちら側にでも傾けて停められるように出来ているのです!

画像3: 農園で大活躍する「ファーマーズバイク」

フロントにはガッチリしたヘッドライトガード。ハンドル左右には素っ気ないパイプ製ですが、堅牢この上ないハンドルガードも装備。基本シングルシート仕様で、タンデムシートの代わりに、農作物を載せることもできる大きなリアキャリアを装備しています。

また、このTF125はクラッチレバーにロック機構を備えているのも大きな特徴です。路面が良くない場所やわだちの深い場所、急斜面などで停車する必要に迫られ、そこでエンストでもしようもんなら、キックスタートでセルを持たないTF125は再始動がかなり難しいので、エンジンをかけ、クラッチを切ったまま一時停止できる機構を備えているのです。いわゆる生活の知恵ですね。

メカニズムは1970年代のマシンそのまんま!?

画像: SUZUKI HUSTLER125(1977)

SUZUKI
HUSTLER125(1977)

さて、そんなTF125のベースとなっているのが1977年式の2代目TS125、通称ハスラー125です。パワフルな2ストローク単気筒エンジンをコンパクトなボディに搭載し、機動力と走破性の高さで人気となった、スズキが誇るトレールブランドのひとつであります。

この通り、ご覧いただければ分かると思いますが、エンジンはまったく同じ。リーゼントみたいな形をしたチャンバーを持つ、タックインマフラーと呼ばれるエキゾーストシステムも、サイドカバーも、車体関係もほぼ同じです。ちなみにTF125は6速ミッション採用ですが、TS125の方も1978年には5速→6速化されています。

そんな1970年代の名車のDNAを現代に継承する1台…と思いきや! 実はこのTF125も1977年から海外輸出されているんですねー。そりゃ、メカニズムが同じわけです。しかし実に50年近くもほぼそのまま作られ、販売されているってスゴいことです!

画像1: メカニズムは1970年代のマシンそのまんま!?

なぜ50年近くもそのまま生産され続け、活躍し続けてきたのか。

その理由のひとつが、構造のシンプルさにあります。

アフリカ諸国の農園…という環境を想像してみれば分かるのですが、近くにバイク屋さんなどないような使用状況において、求められるのは耐久性の高さとメンテナンスの容易さ。部品点数が少なく、構造がシンプルであれば、最低限の工具さえガレージにあれば、具合が悪くなっても部品を調達してなんとか修理することができるわけです。

画像2: メカニズムは1970年代のマシンそのまんま!?

アフリカの農場で黙々と働き、みんなから頼りにされている相棒・TF125。現地のスズキHPでは「価格はお問い合わせください」となっていて明示されていないのですが、ユニセフが現地で従事するスタッフ用に「ユニセフ・サプライ」を通じてこのTF125を提供しており、その価格は日本円で約36万8811円となっています。一時期日本にも少数ですが並行輸入されていて、現在も中古車が入手可能。気になる人は調べてみてください!

スズキ「TF125」の主なスペック・価格

全長×全幅×全高2170×935×1150mm
ホイールベース1335mm
最低地上高250mm
シート高835mm
車両重量102kg(乾燥)
エンジン形式空冷2ストローク単気筒
総排気量123cc
ボア×ストローク56×50mm
圧縮比6.2
最高出力11kW(15PS)/7000rpm
最大トルクNA
燃料タンク容量13L
変速機形式6速リターン
ブレーキ形式(前・後)ドラム・ドラム
タイヤサイズ(前・後)2.75-21・4.10-18
乗車定員1人
現地価格2496.62USドル(※ユニセフサプライ価格、約36万8811円)

スズキ「TF125」の写真

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