レポート:黒石研仁(スマートモビリティJP編集部)
※この記事はウェブサイト「スマートモビリティJP」で2025年5月24日に公開されたものを一部編集し転載しています。
\記事を読む前に知っておきたい!/
【関連記事】特定小型原付について詳しく解説
唯一無二! 特定小型原付なのにペダル付きのEVバイク
16歳以上が免許不要で乗れる特定小型原付は、法律の規定により「最高速度20km/hを超えて加速できない車体」である必要がある。つまり、自転車やモペッドのようにペダルのみで車体を駆動できてしまうモデルは存在できないのだ。

ハイパワーモデルの「T600GR」(左)と標準モデルの「T350 Pro」(右)
しかし、今回ご紹介する「T350 Pro」および「T600GR」は、特定小型原付に区分される電動バイクでありながらも、ペダルを搭載している。
しかも、T350 Proにいたっては国土交通省の性能等確認制度で適合認定をもらっているため、車両の保安基準を満たしていることが公的に証明されているモデルである。いったいどういうカラクリなのだろうか。
種明かしをすると、同製品には「自転車のようにペダルを漕いで発電できる」システムが搭載されており、発電した電気はコンバーターを介して駆動モータに直接供給される=ペダルの動力を直接駆動に利用しないことで「ペダル付きの特定小型原付」を実現しているのだ。

チェーンが後輪に直結しておらず、発電機を回すように設計されている。
見た目は折りたたみ自転車、あるいはモペッドそのもの。後輪の前、フレームに隠されるように搭載された発電機は、スプロケットとチェーンで接続されたペダルを50〜100rpm(回転/分)で漕ぐことにより、バッテリーとほぼ同じ電圧を発生。ペダルを漕ぐことによりバッテリー消費量の半分ほどの電力を相殺する程度の発電能力を持っている。
カタログスペックだとバッテリーのみでの航続距離は最大70km、ペダル発電込みだと最大140kmとなり、特定小型原付でもトップクラスの航続距離を誇るモデルと言えるだろう。

ペダルを漕いで発電した電気は、リアキャリア下にあるコンバーターを介してモーターに供給される。
【実用性】折りたたみ自転車サイズで扱いやすいバイク
ENNEが手がける電動バイク「T350 Pro」と「T600GR」は兄弟車種で、モデル名の数字はそのままモーターのパワーを表している。「T350 Pro」は定格出力350Wモーター搭載の標準モデル、「T600GR」は特定小型原付の規格上限ギリギリとなる定格出力600Wモーター搭載のハイパワーモデルとしてラインナップされている。

ハンドルの右下にキーシリンダーが、左下に方向指示器(ウィンカー)と警音器(クラクション)のスイッチが配置されている。
ハンドルバーとサドルに高さ調整できる機能が備わり、適用身長も140cmから210cmまでと幅広い(参考:記事内写真は180cmの人物が乗るために調整している)。16歳以上が免許不要と、多くの人が乗れる特定小型原付だからこそ、こうした特性は大きなアドバンテージと言えるのではないだろうか。
車両の電源オン・オフは、物理キーをキーシリンダーに差し込んで回すアナログタイプを採用。スロットルの開度で車速をコントロールする方式。特定小型原付の中にはクルーズコントロール機能を備えるモデルも登場しはじめているが、本モデルは非搭載となっている。

車両の電源は物理キーを差し込んで回すクラシカルなタイプ。
とはいうものの、車体制御の関係でペダルを漕ぐとスロットルを回さずとも20km/hの定速走行が可能となり、ペダリングが実質的にクルーズコントロールとして機能する。長距離を巡航するようなときは、航続距離延伸と速度維持を同時にできる一石二鳥のシステム構成ゆえ、積極的にペダルを漕ぐのが良さそうだ。
ブレーキは両モデルとも前後ディスクブレーキを採用し、自転車と同様に右レバーを引くと前輪ブレーキが、左レバーを引くと後輪ブレーキが作動するタイプ。スロットルを戻すと減速力が発生する回生ブレーキとは異なるので、とくに下り坂の手前で減速し始めるタイミングに注意が必要だ。
ちなみに、歩道走行モード(最高速度6km/h)に切り替えると、普通自転車が通行できる歩道を走行できるようになるため、うまく活用することで自転車のような運用もできる。

「T600GR」では、+ボタンを押すと車道モード、−ボタンを押すと歩道モードに切り替えできる。
充電については、車体にバッテリーを装着したままでも、車体からバッテリーを取り外してもOKなタイプ。駐車スペースにコンセントがある人はそのまま、集合住宅や職場などコンセントが駐車場所の近くにない場合は取り外して充電すると良いだろう。

車体中央部の左側にある黒いフタを外すことでバッテリーの充電プラグにアクセス可能だ。
また、折りたたみ機構を備えており車体重量も18kgと電動バイクとしては軽量な部類なので、持ち運んだり、クルマのラゲッジルームに載せて旅行先で乗るなど、運用の幅は広いモデルと言えそうだ。
↓↓車両の写真はこちらから↓↓
↓↓取り扱い店舗・試乗可能な店舗一覧はこちらから↓↓
主要諸元 ENNE T350 Pro
全長×全幅×全高 | 1360×570×1040mm |
(折りたたみ時) | 750×500×600mm |
重量 | 18kg |
耐荷重 | 150kg |
ブレーキ | 前後ディスクブレーキ |
歩道走行モード対応 | あり |
バッテリー(容量) | リチウムイオン(10.4Ah) |
モーター定格出力 | 350W |
航続距離 | 70km(ペダリング併用で140km) |
充電時間 | 非公開 |
タイヤサイズ | 14インチ |
防水性能 | IP54 |
本体価格 | 28万円(定価) |
主要諸元 ENNE T600GR
全長×全幅×全高 | 1360×570×1040mm |
(折りたたみ時) | 750×500×600mm |
重量 | 18kg |
耐荷重 | 150kg |
ブレーキ | 前後ディスクブレーキ |
歩道走行モード対応 | あり |
バッテリー(容量) | リチウムイオン(10.4Ah) |
モーター定格出力 | 600W |
航続距離 | 70km(ペダリング併用で140km) |
充電時間 | 非公開 |
タイヤサイズ | 14インチ |
防水性能 | IP54 |
本体価格 | 32万円(定価) |