文:丸山淳大/写真:関野 温
クロスカブ110に電装パーツを装着

右)新橋モーター商会 店主 丸山淳大(通称マル)
某二輪用品店ピットスタッフ、某バイクメンテナンス専門誌の編集部を経て限界フリーランスに。バイクは乗るよりイジる派の偏執タイプ。
左)常連客 ハチ黒
何回も登場している俺のコレクションをマルに整備させるために考えたこの新企画。目指せ! 20年先まで動態保存。
なんでもやります! 教えます! こちら新橋モーター商会
皆様はじめまして。フリーライターの丸山と申します。前職ではバイクメンテ専門誌という超絶ニッチな雑誌の製作に約10年も携わり、しっかり潰しの効かないおじさんに仕上がったところで、事情によりフリーランスとなりました。
今回、わけのよくわからぬまま「作業ツナギ着用の上、某所に来い」とハチ黒さんに指令を受け「お前はバイク屋、俺は客だ! 」などと、無茶苦茶な言動に押し切られて、結局ハチ黒さんの旧車コレクションを整備するという職を与えられました。
ハチ黒って名前からしてブラック労働の臭いがするのですが、無職とフリーランスのボーダーを往く限界フリーライターの身の上にNOはありません。まな板の上の ''マル'' として頑張っていく所存です!
さて、今回のお題である電装パーツ取り付けですが、キモは電源の確保です。ここで取り付ける「無線充電機能付きスマホホルダー」と「グリップヒーター」は、プラスとマイナスの2本の配線だけ車体から取れば良いわけで、あまり難しく考える必要はありません。ただし、プラス線はバイクの「アクセサリー電源」から取るのが重要なポイントです。

装着するスマホホルダーはデイトナ製。スマホをセットするだけでワイヤレス充電してくれる優れもの! バイクだからこそ無線が便利だ。グリップヒーターは、使いやすい別体スイッチで5段階に温度調整できるキジマのGH08。
バイクの電気の流れを確認しよう

エンジンは走るための動力を生み出すだけでなく、発電機の役目も担っており、発電された電気はレギュレーター・レクチファイアによって直流12Vに変換されてバッテリーを充電している。まずはバイクの電気の流れを理解しよう。
アクセサリー電源とボディアースとは!?
バイクの電装は車種や年式で様々な違いはあるが、主流となるのが上の図の方式。エンジンに固定されたステーターコイルの外周をクランクシャフト直結のフライホイールが回転することで、コイルに交流電気が発生。
それをレクチファイヤで交流から直流に変換、レギュレーターで電圧を12Vの一定値に調整してバッテリーを充電している。そのバッテリーから灯火類やセルモーターなどの電装品、点火のための電力が供給されている(発電した交流電気でヘッドライトや点火を行う機種もあり)。
エンジンがかかってさえいれば、常に発電が行われているので、バッテリーが上がる心配はない。しかし、逆にエンジンが停止している状態でバッテリー電力を消費すれば、それはバッテリー上がりを招く。
つまり、エンジンがかかっている状態で使用する電装パーツのプラス(+)の電源は、バッテリーから直で取るのではなく、メインキーONと連動して電気が流れるアクセサリー配線から確保する必要があるのだ。
【オートバイ電装の基礎知識】
電装パーツはアクセサリー電源に繋ぐのが基本
アクセサリー線とは車体メインスイッチをONにすると電気が流れ、OFFにすると電気が流れないプラスの線。これを後付け電装パーツの電源にするのが基本。
メインキーから出るアクセサリー線から分岐させるのが確実だが、それだと配線処理が大掛かりになるので、車体各電装品に繋がる線から分岐させて確保するのが作業効率的に正解だ。

サービスカプラー
最近のモデルは後付け電装パーツの電源用にサービスカプラーがあらかじめ用意されていることが多い。CC110はハンドル下に装備。

ヒューズ
電源取り出し用として販売されている配線と本体が一体となったヒューズをノーマルヒューズと差し替えれば簡単に電源確保できる。

ホーン
ホーンのプラス配線からアクセサリー配線を確保することもできる。エンジンに近い場合は、配線が熱で溶けないよう注意が必要。

ブレーキスイッチ
ブレーキランプへの電気をON/OFFするフロントブレーキスイッチは、ハンドルに近いので、USB電源やホットグリップの電源に適している。
一方のマイナス(−)はボディに落とす(つなげる)のが基本となる。バイクやクルマの電装では、車体をマイナスの電気の通り道として使っており、これを「ボディアース」と呼んでいる。
バッテリー端子をマイナスから先に外す理由は、このボディアースによるもの。プラスから先に外した場合、端子を緩めるドライバーが誤って車体に触れると、そこでプラスとマイナスが直接つながることになり、ショートしてしまうからだ。
ただし、ボディのどこでもアースが取れるということではなく、塗装部品は塗膜で絶縁されているし、ラバーマウントされた部品には電気が流れないので、アースを取ることはできない。

テスターでバッテリーマイナスと車体各部の抵抗(Ω)を計測し、抵抗値が表示されれば導通している=アースが落ちていると判断できる。

テスターでバッテリーマイナスと車体各部の抵抗(Ω)を計測し、抵抗値が表示されれば導通している=アースが落ちていると判断できる。
配線加工に使用する工具と部品を5つ紹介

電装パーツの取り付けには、一般的なハンドツールとは異なる専用工具や部材が必要となる。以下で紹介するものを揃えておけば、基本的な電装パーツの取り付けやメンテに困ることは無いだろう。
すべてバイク用品店やホームセンターで手に入る。見えない電気を可視化するためのテスターは、簡易な検電ペンタイプでも事足りる。

電工ペンチ
ギボシのかしめ、配線のカットや被覆の皮むきなどマルチに活躍する電工ペンチは、電装パーツの装着作業に欠かせない工具。

ギボシ端子
配線同士を簡単、確実に繋げるギボシ端子は、後付け電装パーツの装着に最も使われる。平型タイプはより大きな電流に対応する。

テスター
デジタル表示のポケットテスターは、電圧や抵抗、通電の確認など、電装パーツの取り付けだけでなく、車体電装の良否判定など修理にも使える。

テスター
デジタル表示のポケットテスターは、電圧や抵抗、通電の確認など、電装パーツの取り付けだけでなく、車体電装の良否判定など修理にも使える。

配線
配線を追加する際は、必ず自動車用を使用する。純正配線は系統別に各メーカーで異なる色に色分けされており、デイトナから純正色の配線が販売されている。

熱収縮チューブ
ライターやヒートガンで熱を加えると縮んで配線や接続部を絶縁、保護できる。様々なサイズがあるのでひととおり揃えてあると便利。

熱収縮チューブ
ライターやヒートガンで熱を加えると縮んで配線や接続部を絶縁、保護できる。様々なサイズがあるのでひととおり揃えてあると便利。
配線加工が簡単なおすすめアイテム
1.デイトナ「ワイヤレスチャージャー スマートフォンホルダー +e」

DAYTONA
ワイヤレスチャージャー スマートフォンホルダー +e
税込価格:8250円

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ワイヤレスチャージャー スマートフォンホルダー +e
税込価格:8250円
ケーブルとサヨナラ! 置くだけ充電マウント
スマートフォンのワイヤレスチャージャーとスマホマウントが一体となった電装アイテム。スマホがワイヤレス充電「Qi」に対応していることが条件となるが、マウントに固定したら即充電の手軽さは最高だし、ハンドルまわりがスッキリするしで、良いことづくめ。スマホマウントは、ハンドル固定タイプで、首振りと360度回転できて、見やすい位置に固定でる。
肝心の装着に関しては非常に簡単。ブレーキスイッチからアクセサリー電源を確保する配線と、ボディアースを取るための配線が同梱されており、電工ペンチやギボシなども基本的には必要なし! ただし、配線の長さを車体に合わせたりと、よりスマートな装着を目指すなら配線加工が必要となる。
プラス電源を取るブレーキスイッチは本体を設置するハンドルと一緒に動くので、配線をどこかに挟み込んだりする心配もなく、配線の取り回しにあれこれ頭を悩ます心配もなかった。
一方のマイナスはブレーキパイプをフレームに固定するボルトにクワ型端子と共締めにして確保した。車体側配線を無加工で装着できる配線が付属しているので、DIYでも簡単にできる。

面倒な配線加工は必要なし! 付属のギボシ端子付き配線をブレーキスイッチに接続するだけでOK!

スイッチに繋がる2本の配線のうち、プラス側に付属の配線をつなげる。メインキーをオンにして12Vが流れる方がプラス線。

スイッチはフロントブレーキレバー根元部分にあり、レバーを握れば接点が繋がり、ブレーキランプに電気が流れて点灯する。

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デイトナ「ワイヤレスチャージャー スマートフォンホルダー +e」
2.キジマ「GH08 グリップヒーター」

KIJIMA
GH08グリップヒーター
税込価格:1万1000円

KIJIMA
GH08グリップヒーター
税込価格:1万1000円
配線の取り回しに気を使いたい!
ひと昔前のグリップヒーターと言えば、グリップが不自然なほど太くなってしまい、操作に違和感が出ることも多かったが、近年では純正グリップとそれほど変わらない太さのものが多くなってきた。
キジマのGH08は、ウインターグローブでも握りやすいスリムタイプで、操作性は純正グリップとそん色なし。3種のグリップ長が用意されており、装着できる車種も非常に幅広い。
真冬でもしっかり暖かい発熱能力を発揮するが、最大消費電力は34.8Wとなり、小排気量車のヘッドライト分ぐらいの負荷となるので発電量の少ない小排気量車は注意が必要。
取り付けに関しては、車体アクセサリー電源を確保する必要があるが、サービスコネクターのある車両の場合、別途カプラー接続の電源取り出しハーネスを用意すれば、作業難易度は普通レベル。
ただし、ハンドルは左右に動くし、スロットル側グリップは回転するので、グリップヒーター全般、配線の取り回しには注意が必要。

電源取り出しハーネスを使ってオス側ギボシ端子を取り付ければOK! でも配線の取り回しに工夫が必要!

GH08のプラス線にオスのギボシを装着し、サービスカプラーの電源線のメスギボシに接続。マイナスは車体かバッテリーマイナス端子に共締め。

サービスカプラーを備える機種なら、電源取り出しに使わない手はない。カプラーはメーカーや車種ごとに違うので、適合をよく確認しよう。

ギボシ端子と配線の位置関係がとても重要。ギボシは端側の爪で配線の被覆を挟み込み、内側の爪で芯線を挟み込むように電工ペンチでかしめる。失敗したら必ずやり直そう。
【オートバイ電装の基礎知識】
なぜギボシにはオスとメスがあるのか?
車体側プラスの配線は、ギボシ端子がすべてカバーで覆われるメスギボシを使用すれば、万が一ギボシが車体に触れてもショートしない。
一方、車体マイナス配線はオスギボシにしておけば、配線のプラスとマイナスを間違えて繋ぐ作業ミスを防ぐことができる。


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キジマ「GH08 グリップヒーター」
www.amazon.co.jp3.デイトナ「HOT GRIP 巻きタイプEASY」

DAYTONA
HOT GRIP 巻きタイプEASY
税込価格:7700円
何もいじらなくて良し! 巻くだけでホットなグリップ誕生
一方、一切面倒な作業はしたくないけど、手だけは温めたい! というわがままライダーは、USBから電源を取るデイトナのホットグリップ巻きタイプがおすすめ。
その名のとおり、グリップに巻いてUSBを差し込むだけなので、出先でちょっと手元を温めたい時にも気軽にさっと装着できちゃうのが魅力。

USBに差し込むだけの簡単グリップヒーター!

巻きタイプのホットグリップは配線加工もハンドルグリップの交換も工具も一切必要なし。車体のUSB電源やモバイルバッテリーが電源になる。

USB端子の側面にはオンオフを行うスイッチがある。グリップへの装着はフィルムヒーターを靴紐のように付属の紐で固定するだけ。11Wの省電力仕様。

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デイトナ「HOT GRIP 巻きタイプEASY」
文:丸山淳大/写真:関野 温