2024年3月22日、フランスの有名リゾート地であるニースでは、インドアのX-トライアル第3戦が開催されました。優勝したのは毎度お馴染み? トニー ボウ(レプソル ホンダ チーム)でしたが、ある選手の出場をめぐって、ちょっとした一悶着!? があったのです。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事はウェブサイト「ロレンス」で2024年3月24日に公開されたものを一部編集し転載しています。

招待はされたのだけど・・・出場はできない・・・?

トライアルの話題をいろいろ扱うフランスのウェブジン(ウェブ雑誌)のトライアル-クラブ.comの報道によると、電動トライアル車を製造販売するフランスのEM(エレクトリックモーション)は、FIM X-トライアル世界選手権のプロモーターから、3月22日開催の第3戦へ招待されたそうです。それに応え、EMは同社の最新作であるE-ピュア ファクター-eと、エースライダーのガエル シャタヌを派遣することにしました。

しかしFIMにはシャタヌは登録されていない、ということで出場は見送り・・・。EMがこの件についてFIMへ問い合わせたところ、すぐにFIM会長のホルヘ ビエガスから直々に回答がきたそうです。なんでもFIMは去る2月に安全規定を作成し、電動車を向かい入れる設備や教育などの諸々の準備が整うまでは電動車のクローズスペース(X-トライアル、スーパーエンデューロ、スーパークロス)競技への参加を認めないことを決定したとのことです。

画像: EMのエース、G.シャタヌ。電動車オンリーのトライアルEでタイトルを獲得した後、シャタヌとEMはアウトドアの世界トライアル選手権、トライアル2にICE(内燃機関)搭載車に交じって戦った経歴を持ちます。 www.facebook.com

EMのエース、G.シャタヌ。電動車オンリーのトライアルEでタイトルを獲得した後、シャタヌとEMはアウトドアの世界トライアル選手権、トライアル2にICE(内燃機関)搭載車に交じって戦った経歴を持ちます。

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単なる連絡の行き違い? EMとFIMがモメることはなさそうです

EMは公式ステートメントのなかで、ビエガスへの感謝を述べるとともに、EMや他の電動車メーカーが、インドアの世界選手権に出場できる解決策を見つける手助けをするために、今までどおりFIMへ最善の協力をすることを表明しています。つまりEMの希望としては、電動技術の性能をフルに発揮するとともに、他の駆動方式(ICE)と公平に競争ができる環境を作ること・・・です。

画像: テールパイプから有害な排ガスを出さない電動車は、屋外より換気に不利なインドア競技に適したモーターサイクルといえるはずですが・・・? www.facebook.com

テールパイプから有害な排ガスを出さない電動車は、屋外より換気に不利なインドア競技に適したモーターサイクルといえるはずですが・・・? 

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土壇場で出場できなかったことについては、EM創設者のフィリップ アレステンは失望を隠すことはありませんでした。しかし、この件でEMがFIMと反目しあうようなことはなく、今までどおり両者の協力関係は普遍であることをEMは主張しているわけです。なおSNS上ではトライアルファンたちの中から今回のFIMの決定に対する不平不満の書き込みもありましたが、それに対しEMは「論争がないのに、論争を探すのは止めてほしい」と諌めています。

3月14日には、MXGP(世界モトクロス選手権)をプロモートするインフロント モト レーシングが、独立した電動車のクラスであるMXEP(エレクトリック サポート クラス)を2025年から実施する構想を表明しましたが、これはICE搭載車と電動車の公平な競争を阻むものとして、電動モトクロッサーを製造販売するスターク フューチャーは、これに公式に反対しています。

なお昨年11月には、FIMスーパーエンデューロの2023/2024年シーズン開幕戦の直前に、タディ・ブラズシアックが駆るスターク フューチャー製マシンが、規制に合致しないという理由で排除される事件もありました。

今後モトクロスがどうなるかはさておき、FIMとEMの協調関係を見る限りとりあえずトライアルは現状どおり、ICE搭載車と電動車が同じ舞台で競う環境が維持されそうです。ただ気になるのは、FIMが電動車を排除する安全上の懸念が何なのか? です。

電動車による競技として、FIMが承認しているFIM E-エクスプローラー ワールド カップには、電気火災に対応した装備を抱えたマーシャルが配置されていますが、FIMとしてはガソリン火災とは異なる危険性をはらんだ電気火災の対策を、インドアでは完璧に用意できていないのが現状・・・という認識なのかもしれません?

ともあれ、FIMと各製造メーカーが協議を重ねることで、そのうちに電動車の扱いがどうなるかは定められることになるでしょう。選手、製造者、統括団体関係者、そしてモータースポーツファンの、誰もが納得できる結論が導き出されることを望みたいですね。

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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