いよいよテスト、まだテスト!

2月に入って、ワールドスーパーバイクに続いて、いよいよMotoGPのオフィシャルテストが始まりました。場所はマレーシア・セパン。昨シーズン最終戦後に、最終戦の舞台となったスペイン・バレンシアのリカルドトルモサーキットで行なわれた「事後テスト」とよばれるセッションに続いての、オフィシャルなテスト、第2弾。ここでほとんどのライダーが2024年仕様のモデルに乗るわけです。

このセパンテストは、まず3日間「シェイクダウン」ステージが行なわれ、本来ならこれは各メーカーのテストライダーとルーキーのみが参加できるテスト。
けれど2024年は、2023年の成績不振(獲得ポイントが規定を満たさなかった)を理由にコンセッション(優遇措置)が適用されて、ホンダとヤマハはGP正ライダーも参加OK、という措置が取られました。
そのため、初日にホンダからステファン・ブラドル、ヤマハからカル・クラッチロー、KTMはダニ・ペドロサとポル・エスパルガロ、GASGASがペドロ・アコスタ、ドゥカティからミケーレ・ピロ、アプリリアからロレンツォ・サバドーリが参加。さらに2日目からはホンダのジョアン・ミル&ルカ・マリーニ、中上貴晶&ヨハン・ザルコ、ヤマハのファビオ・クアルタラロ&アレックス・リンスら正ライダーも参加。

画像: 早くも大器の片りんを見せ始めたペドロ・アコスタ バレンティーノ→ケーシー→マルクと続いた最速の系譜を継承するのでしょうか

早くも大器の片りんを見せ始めたペドロ・アコスタ バレンティーノ→ケーシー→マルクと続いた最速の系譜を継承するのでしょうか

画像: ナマイ…いや、不敵な表情の、これがMoto2チャンピオン、アコスタ 5月に20歳です!

ナマイ…いや、不敵な表情の、これがMoto2チャンピオン、アコスタ 5月に20歳です!

この3日間で、早くも大器がその片鱗を見せ始めます。23年Moto2チャンピオン、ペドロ・アコスタが、3日間通してのトップライムをマークしたのです!
なにか、2013年を思い出しましたね。この年、19歳のMoto2チャンピオンがMotoGPクラスにステップアップし、現在よりテスト日数が多いとはいえ、セパンテストで総合3番手タイムをマークした時のこと。そう、マルク・マルケスのことです。

当時のマルケスですら、走り始めは「MotoGPがどんな動きをするのか自分のライディングをマシンに合わせていかないと」的なコメントを残していたけれど、今年のMoto2チャンピオンは、いきなりこれか!という走りを披露してくれました。
もちろん、MotoGPの10年間の変化は大きく、マルケスの頃とは事情が違います。完全に外野の意見で言えば、年々とMotoGPマシンのライディングは「ライダーの技量」を問わない方向に進化しているともとれるので、その結果のアコスタのトップタイムなのかもしれませんね。
マルケスは13年、開幕2戦目で早くもMotoGP初優勝を飾り、そのままデビュイヤーチャンピオンにまで駆け上がって行きました。さて、アコスタはどうなるでしょう。

レギュラー勢ぞろいで早くもドゥカティ勢が!

シェイクダウンの3日間が終わったら、いよいよオフィシャルテスト本番。
ここには全MotoGPライダーが参加してきます。ただし、プライベートテストで転倒したフランク・モルビデリはセパンテストに参加できず、ラウル・フェルナンデスは初日に転倒、負傷のために2日目以降に参加できていません。

画像: とにかくどんなセッションでも様子見、がなく全開全開また全開のマルティンが初日トップ!

とにかくどんなセッションでも様子見、がなく全開全開また全開のマルティンが初日トップ!

テスト開始と同時にやはり猛威を振るったのはドゥカティ勢。初日のトップタイムは、昨年惜しくもフランチェスコ・バニャイアに届かず、ランキング2位に終わったホルヘ・マルティン。この時点でのコースレコードに0秒5まで迫るタイム=1分57秒951で、23年のマレーシアGPの予選タイムまで0秒4! 初日の走り出しがこれだもの、燃えてるなぁ、マルティン! ちなみにマルティンはターミネーターに引っ掛けたか「マルティネーター」ってなニックネームです。
2番手にはここでもアコスタ! タイムはシェイクダウン最終日よりちょいオチで、これはこの日から参加したライダーたちより3日間多く走っているから、ともいえるかもです。

画像: 1回目のテストから最高速の課題をクリアしたように見えるYZR-M1 でもまだテスト! まだテスト!

1回目のテストから最高速の課題をクリアしたように見えるYZR-M1 でもまだテスト! まだテスト!

画像: まだレプソルじゃないツナギに慣れませんが、これが2024年のマルクです

まだレプソルじゃないツナギに慣れませんが、これが2024年のマルクです

画像: 24年のレプソルホンダのエースはジョアン・ミル ヘルメットには感じで「絶賛仕事中」って…… Hard work nowを翻訳ソフトで直訳でもしたのかな あれ、つなぎに転倒跡が…

24年のレプソルホンダのエースはジョアン・ミル ヘルメットには感じで「絶賛仕事中」って…… Hard work nowを翻訳ソフトで直訳でもしたのかな あれ、つなぎに転倒跡が…

3番手には復活の手ごたえをつかみたいクアルタラロ。なかなかの滑り出しです。
注目は24年からドゥカティライダーとなったマルク・マルケス。初日は9番手で、タイムは23年のマレーシアGPの予選タイムを0秒1、上回りました。
さらにはホンダRC213Vをライディングするホンダルーキー、ここセパンを得意とするルカ・マリーニがこの日のトップスピード336.4km/hを記録しています。この最高速でも2番手にアコスタがつけていますね。

画像: ゼッケン1のデスモセディチGPはV2チャンピオン、バニャイア 順調すぎる滑り出し

ゼッケン1のデスモセディチGPはV2チャンピオン、バニャイア 順調すぎる滑り出し

テスト2日目はマルティネーターをドゥカティワークスチームのエネア・バスティアニーニが捉えて、初日のトップタイムから0秒8も縮めてトップスポットを奪取! 2番手にマルティン、3番手にはKTMのブラッド・ビンダーがつけました。ビンダーも23年のマレーシアGP公式予選タイムを更新しています。
注目は、徐々にタイムを上げてきたワールドチャンピオン、フランチェスコ・バニャイア。初日16番手から5番手にアップして、黙々とテスト項目をこなしているのが見えますね。この2日目もマルケス要注意で、順位は14番手ながら、全ライダー中最多の72周を走っています。
さらに最高速のトップについにクアルタラロがついて、この数年ずっと課題にしてきた最高速のビハインドを解決しつつあるのかもしれません。季節や路面温度、コンディションが違うので一概には言えないでしょうが、23年のマレーシアGP決勝レースのトップスピードを8km/hも上回っています!

画像: 最終日にポンとタイムを上げてきたタカ中上 次のレポートではアライヘルメットのサイン会で聞いてきたお話でもアップします

最終日にポンとタイムを上げてきたタカ中上 次のレポートではアライヘルメットのサイン会で聞いてきたお話でもアップします

テスト最終日はついにバニャイアがトップの座を獲りました。もちろんこの時期の順位なんか重要視していないでしょうが、順位は初日から16→5→トップ、タイムは58秒813→57秒469、そして最終日に絶対レコードを更新する56秒682とは、順調なテストだったのかがわかるというものです。
2番手はマルティン、3番手にバスティアニーニ、4番手にアレックス・マルケスと、ここまでがドゥカティ勢、5番手にアプリリアのアレイシ・エスパルガロが入って、このトップ5人がセパンでは初となる1分56秒台に入っています。ひゃー、のっけからすげぇなぁ、というタイムです。

画像1: レギュラー勢ぞろいで早くもドゥカティ勢が!

この時期のテストは、タイムや順位はあくまでも参考程度。それは「あくまでテスト」だからって全力アタックするするライダーばかりではないし、まだテスト項目を消化したり、予選タイヤを使ったり使ってなかったり、というそれぞれのチーム、ライダーの戦略があるからです。
それでも、総合15番手のベッツェッキ以外は、最終日がベストタイム。それもほとんどが、気温がまだ上がり切らない最終日午前に出したタイムです。
これは、テストとはいえ「最終日だし、一発タイム出しとこうか」というライダーが多かったのだと思います。ちなみに2023年マレーシアGPの予選レコードは、バニャイアの1分57秒491ですから、10人のライダーがコースレコードを更新しているってことです!

「いいテストだった。でもまだテストだからね。新型マシンは特にブレーキングがよくなってる。パワー特性は次のカタールテストまでにもう少し煮詰めないと」とバニャイア。

われらが中上貴晶は最終日に13番手まで浮上して、ワークスチームのミルに続いてホンダ勢2番手タイムをマークしています。タカも23年のマレーシアGP公式予選タイムを1秒1も更新。ほんの数行前に「この時期のテストはタイムや順位、重要じゃない」って書いといて、タカのこういう順調なタイムを見ると嬉しくなりますね。

画像2: レギュラー勢ぞろいで早くもドゥカティ勢が!
画像: もう暑いセパンで、文字どおり涼しい顔したおすましショット 勝負の年、FORZA TAKA!

もう暑いセパンで、文字どおり涼しい顔したおすましショット 勝負の年、FORZA TAKA!

ドゥカティ勢の相変わらずのスピード、着実にステップアップしている感のあるKTMとアプリリア、そこにヤマハもホンダも少しは追いつき始めてるのかな……どうだろ、という感じのセパンテスト。マシンの進化も、ライダーの進化も見えたテストでした。
次回カタールテストまでに、いろいろ見えたマシンのアップデートなんかにも触れてみます。
お楽しみに。

写真/motogp.com 文責/中村浩史

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