文・写真:松下尚司/取材協力:アライヘルメット、ホンダモーターサイクルジャパン、サインハウス
機械生産では実現できない安全性への強い信念
ライダーの頭を護るため安全性への飽くなき追求
あなたは何を基準に現在被っているヘルメットを選んだのだろうか? デザイン? 値段? 重量? それとも店員からのお勧め? 実際、量販店の店頭で並んでいるヘルメットはメーカー、ブランド、タイプもカラーリングも様々。その種類の多さに圧倒されて「選ぶ基準」そのものが散漫になり、ヘルメット選びに苦労することも想像できる。
しかし、オートバイに乗る際に最も護りたい部分である頭を保護するヘルメットの選択において、最も大切なのは「安全性」だ。それは絶対に迷ってはいけない。そして、その安全性・プロテクションの進化のために、日々、追求し続けているのが、日本で最初にオートバイ用ヘルメットを作ったメーカー、アライヘルメットだ。
今回、お誘いいただいたプレスライド企画は新型『ツアークロスV(海外名TOUR-X5)』の海外でのリリースタイミングで日本で開催され、埼玉県にある本社R&Dからスタートし、検査、塗装、組立と見学。翌日はツアークロスVのテストを兼ねたツーリングをしつつ、群馬県の榛東工場の見学をするプランだ。そこで見たのは「職人の手」による精巧な手作業で生み出される安全を追求したヘルメットたちだった。
金型から自社で作り、剛性の高いファイバーの間に弾性の富んだ特殊ファイバーを挟み込むように成形するclc製法や、部位ごとの強化要求に応じて使用する通常のガラス繊維と比べて30%以上の強度を持つスーパーファイバー製のベルト、部位ごとで最適な発泡倍率を組み合わせて成形する衝撃緩衝ライナなど、アライ独自の製法で誕生し、強度を最大限に引き出す数多くのパーツたちがハンドメイドで一体となっていく。
非常に繊細で、詳細な工程は、決してオートメーションでは出来ない。熟練の職人ならではの手作業は、どの工程も美しく、見ていて爽快感すら感じるほどだった。それと共に、ここで作られたヘルメットを愛用している一人のライダーとして誇らしくもあった。
同行してくれた新井章仁副社長は、「ヘルメットに対して安全性の追求はどこまでやってもやりたりないものなので、少しでも安全性能は高められるのであれば工程を増やしてでもやっていきたいと思っています。だから、全ての工程には意味があるし、機械には任せられないことばかりなんです。どうしてもスキルが要求されるので一人前になるには工程によっては数年必要ですし、どの部門でもアライヘルメットの一員として同じ思いでヘルメットを世に送り出して欲しいので、弊社ではアルバイトがいないんですよ」と、教えてくれた。
全ては「衝撃吸収性能」と「かわす性能」のために
ひとつひとつ職人の手で作る