いよいよ開幕直前となった全日本モトクロス。熊本で巨大な工場を持ち、CRFのスイングアームなどを製造する合志技研株式会社では、GOSHI Racingという社内のレース活動をおこなっており、合志技研としての開発能力を底上げし続けている。昨今では非常に珍しい形での全日本参戦に密着しつづけて3年目。今年は、ライダー石浦諒が負傷によって参戦できないため、T.E.SPORTとのコラボレーションでレース活動を続ける。その開幕前の開発を追った。
まずはサイレンサーに手を付けた
彼らがCRF450Rのエキゾースト開発に手をつけたのは、2020年のこと。それまでのCRF250R用とは違った難しさがあったという。ただ、当時の量産車は2本出し。すでに先行開発されていて、MXGPのファクトリーマシンとして公開されていた21モデルのCRF450Rは、1本出しだった。だから、昨年取り組んでいた開発は、20モデルの1本出しという変則的なもので、なかなかうまくいかなかったという。その開発を経て、あらためて今季に向けて21モデルの開発に取り組んでいる。
「まずは基礎研究として、スリップオンマフラーを制作しています。インナーパイプ形状を変えたりとか、いろんなアイテムをいれて、その変化をみているような段階ですね。ボディはチタン材、中身も開発しやすいように、ボルト止めでエンドを留めています。
今はまだ研究段階で答えはわかっていないことなんですが、たとえばヌケをよくしようとしてインナーパイプの流速をあげたとしますよね。ダイナモにのせていい結果が出たとしても、実際には乗りづらいと言われたりします。データでわからない部分が、あるのです。だから、モトクロスの場合は特にトライ&エラーを走ることでもしていかなくてはいけない。だいたい、ダイナモのデータは2割くらいしか参考にはなりません。250の時は、ダイナモとフィーリングの違いがあまりなかったんですが、450になってからその辺で苦労するようになりました」と石浦。
量産モデルと近い形ではあるものの、異形のサイレンサーとして開発。騒音を制御するためのリゾネーターは、まだ装着していないが、MFJの騒音規制には通っているとのこと。これを、量産モデルの出荷状態に取り付けて性能を引き出す開発、そしてコラボするT.E.SPORT大塚豪太のチューンドマシンに取り付けて勝利を目指す開発の二面性を持っているとのことだ。