近年、人気のオフロードバイクスポーツ「ハードエンデューロ」は、ハードというわりに敷居が低く、さらに順位を追わずとも「チャレンジ」という側面で楽しめる。この人気を下支えしているのが、ガミータイヤと言えるだろう。コンパウンドを、それまで考えられなかったほど柔らかくし、タイヤの「潰れ」を使って劇的なグリップ力を発揮する。我らが日本のブリヂストンがリリースしたのは、E50 EXTREME。世界最高峰のハードエンデューロ、エルズベルグロデオをひとつのベンチマークとしたこのプロダクトが、どこまで無茶をできるのか実証してみたい。
石戸谷蓮(いしどや・れん)
5年計画でエルズベルグロデオの完走を目指している、エンデューロライダー。2019年にはTBSのバラエティ番組クレイジージャーニーがレースに同行し、チャレンジが全国ネットで放映された。トライアルバイシクルや、MTBなど様々なスポーツを駆使して身につけたスキルが特徴。ハードエンデューロイベント「クロスミッション」シリーズの主宰者としても活躍。
タイヤを意図的につぶして、グリップを確保しやすい
これまでも、E50 EXTREMEをつかってきた石戸谷は、その使い方も熟知している。「このタイヤは、140サイズのエンデューロタイヤをベースにしています。エルズベルグで見たガミータイヤのほとんどは、同じくエンデューロタイヤを使っているのですが、モトクロスタイヤやオフロードタイヤとくらべて、圧倒的にエアボリュームがあるのです。
エアボリュームがある分、つぶれた時に路面と設置する面積が広くなるのですが、ガミータイヤはその『つぶれ』をうまく使うことで、よりグリップさせることができます。特に僕らがよく走るシチュエーションは、ゼロ加速を強いられることが多いのですが、その一瞬のタイヤのつぶれがないと、加速しづらいんですよ」とのこと。
そのためには、「ステップを踏めることが大事です」と石戸谷は言う。シートにべたっと座っていることは、リア荷重をそこまで生み出さない。ステップを踏むことでリア荷重を生み出せるライダーには、これ以上ない武器になるわけだ。
チャレンジ① スリッピーな木の根がある、ヒルクライム
まずは、エンデューロでもたびたび登場するシチュエーションとして、ヒルクライム中に木の根を超えるパターンだ。
スピードをコントロールしながら、この木の根を超えるのは、至難のわざ。
木の根に当たる瞬間、リアタイヤが潰れているのがわかる。
だが、さらに大事なのは「木の根を超えた後の加速です。少しタイヤが浮いてしまってトラクションが逃げてしまっているのですが、ここで意図的につぶしてやることで、その後のヒルクライムにつなげていくことができます」と石戸谷。
スーパースローで見ても、このとおり。木の根にあたる瞬間だけでなく、その後の加速時にしっかりタイヤをつぶせていることがわかる。