この週末はツインリンクもてぎで、鈴鹿8耐の長いインターバルを挟んでの全日本ロードレース後半戦がスタートしました。
なんせ、8耐前のレースが5・26菅生でしたから、実に2か月半ぶり。8耐に出場したライダーは、準備やテストで忙しかったし、8耐終わってもうレースやるの?って言ってるほどでしょうけど、8耐に出ていなかったライダー、暇だったろうなぁw ま、それも日本のロードレースですね。
この週末の関東地方、台風一過で8耐なみの猛暑に見舞われましたが、スーパーフォーミュラ、それにエンジョイホンダと併催される2&4ということもあって、もんのすごいお客さんでした。
特に今年は、いつもは夏前に行われる富士スピードウェイでのエンジョイホンダが開催されなかったこともあって、通常のレースファンに加え、FSWで開催されなかったエンジョイホンダを待ちわびてた関東のお客さん、夏休みの家族連れもぜんぶひっくるめて、の人出だったようです。
ちなみに観客動員は、土曜に1万7500人、日曜が1万9500人。ピットウォークなんか見てると、感覚的にはもっと入っているように感じましたね^^
このあっつい暑いなか、わざわざもてぎまで来てくれたお客さん、ホントに感謝です。
その全日本選手権は、事前テストから高橋巧(チームHRC)がリードしての後半戦スタートとなっていました。8耐では悲願の優勝こそ逃して3位に終わったとはいえ、ラスト2スティント連続走行というものすごいことをやってのけた高橋は、やはり8耐でも個人の走りではピカイチでしたから、この好調もむべなるかな。
ただし、その事前テストで高橋は、マシントラブルでマシンから振り落とされて転倒。左ひざ周辺骨頭を亀裂骨折。公式予選でも5レース連続となるポールポジションを獲った高橋でしたが、決勝へ一抹の不安を残していました。
「普通にしていたらちょっと痛いくらい。走行中は、予選なら大丈夫ですが、決勝の長丁場になるとどうなるかわからないのが正直なところですね」とは高橋。
公式予選は、気温がほぼ40℃に近づき、路面温度は50℃オーバーという過酷なコンディション。しかも4輪との併催で路面状況もよくないなか、なかなかタイヤがグリップしない、というレースになりそうでした。
公式予選は、高橋に続いて中須賀克行(ヤマハファクトリー)が予選2番手、水野涼(ハルクプロホンダ)、渡辺一樹(ヨシムラスズキ)、野左根航汰(ヤマハファクトリー)、渡辺一馬(カワサキTeamグリーン)までが2列目へ。いつものトップライダーに、水野が加わってきた印象ですね。
今年でJSB1000クラス2年目となる水野ですが、鈴鹿8耐前あたりからマシンがグレードアップし、HRCワークスマシンとほぼ同仕様。それを感じさせるタイムで上位に食い込んできました。
決勝レースは日曜正午の開催。もてぎは風がなくてね、ホント暑かった! なにもしないでコースサイドでカメラ構えてるだけで汗がツーッ、いやどわー、かな。この中で、ツナギ着てマシンにまたがってもてぎを23周するライダー、やっぱり超人す。
スタートは水野! もともとスタートには定評のある水野ですが、JSB初のフロントローで見事に飛び出しました! イン側でホールショット獲った!って思ったところでちょっと止まり切れず、折り重なるように前に出た中須賀、高橋、野左根に先行されますが、写真のとおり水野、中須賀、高橋、野佐根、一樹(渡辺一、まで一樹/一馬といますから、親愛の情を込めて渡辺ふたりは一樹、一馬と呼び捨てします^^)がトップ集団を占め、オープニングラップは中須賀→野左根→水野→高橋→一馬→一樹の順。
高温、さらに4輪のラバーが乗った路面は、序盤からまるでグリップしなかった、というなか、それでも中須賀が逃げ、野左根が追い、そこに水野がくらいついていくレース序盤。高橋はぺースが上がらず、トップ3になかなか迫ることができません。
これはヤマハの1-2か!と思われましたが、中須賀のハイペースに2番手野左根すら追いつかない展開の中、3番手の水野が徐々に野左根に接近し、5周目に水野が2番手に浮上。お、この若手対決が2番手争いで見られるなんてなかなか珍しい――と思ったら、その争いさなかの8周目に野左根が転倒してしまいます。
これで中須賀→水野→高橋→一樹→秋吉耕佑(MotoUPレーシング)→加賀山就臣(ヨシムラスズキ)の順。ただし、3番手の高橋もなかなかトップ2に追いつけず、レース中盤は水野がぐいぐい中須賀に迫っていく展開となっていました。
レース中盤、完全に中須賀に追いついた水野。立体交差前の5コーナーかな、一度は水野が前に出ますが、中須賀もすぐに抜き返します。これが王者、センパイの意地でしょうか。
レース後半は、水野が中須賀の後ろにピタリ。ここは、レース終盤に向けてタイヤをセーブできる、後ろの水野が有利、ラスト3周くらいでパッシング――を予感させましたが、まさしくそのタイミングでスパートしたのは、トップを走る中須賀でした!
「水野くんが後ろについているのは、ずっと音で分かってました。これはタイヤのマネジメント勝負だな、と思ってましたが、もてぎは後ろにつくより前を走ったほうがいいこともあるんです。ブレーキ冷やせるし、自分のペースで走れるから」という中須賀は、最後の最後に水野を引き離し、開幕戦もてぎ以来の3勝目。強い中須賀、8耐を超えても強いままでした!
「ここへ来てJSBマシンにもニューマシンにも慣れて、自分の走りができてきたような気がします。レースは、ずっと中須賀さんについては行けたんですが、アタックするチャンスもなかった。一度むりやり前に出たのは、ここにいるぞ、ってプレッシャーかけるつもりだったんですが、中須賀さんのほうが一枚も二枚も上手っていうか、引き出しがたくさんあった。JSBで初めての2位、中須賀さんと巧さんといっしょに表彰台に登れるなんて嬉しい、けど同じくらい悔しいです」と水野。いいですね、ここまでいいところを走ってきた若手、ってイメージでしたが、トップグレードのマシンを手に入れて、グンと伸びました。
この勢いが続けば中須賀vs高橋の戦いに割って入れるライダーになりそうです。野左根、水野、一樹に一馬、岩戸亮介(カワサキTeamグリーン)といったメンバーが中須賀と高橋にかみついてきたら、全日本はもっともっと面白くなりそうです。
「ケガの影響っていうより、路面のコンディションにうまく合わせられませんでした。路面がグリップしないと、やっぱり体全体を使って走らせる感じになるんですが、それが最後まで続かなかった。この3位は、航汰が転んだタナボタの表彰台ですが、シリーズのことを考えると最少失点で済んだ、と。次は8月末の岡山、なるべく体を治して、精一杯走ります」と高橋。連勝は4でストップしましたが、表彰台に上がる階段も辛そうな体調で23周……痛みに耐えてよくがんばった!
後半戦巻き返しに好スタートを切った中須賀、これまでより1ランクアップした走りを見せた水野、チャンピオン争いを考えて3位表彰台に滑り込んだ高橋――ライダーみんなに、それぞれのドラマがあった後半戦のスタートでした。これでチャンピオン争いは以下の通り。
JSBクラス ポイントランキング
(第5戦もてぎ大会まで)
1:高橋巧 164P
2:中須賀克行 141P
3:野左根航汰 130P
4:水野涼 119P
5:渡辺一樹 106P
6:秋吉耕佑 97P
残りは岡山国際、オートポリス、鈴鹿の3戦、オートポリスと鈴鹿は2レース制ですから、あと5レース。最終戦はボーナスポイントがありますから、全勝で約130ポイントも獲得できます。まだまだチャンピオンはわからんぞ^^
写真/文責 中村浩史