常に先進を追い求めた結果究極のオールラウンダーへ
60年代のホンダを代表するスポーツモデル、247cc空冷並列2気筒エンジンを積んだCB72には、共通の基本設計のまま排気量を305ccとした上級モデルのCB77が存在した。
68年にCB72がCB250にモデルチェンジしたのに合わせ、CB250の排気量アップ版のCB350もCB77の後を継いで登場している。
70年代に入ると、こういった250ccベースの2気筒ミドルスポーツとは別系統のモデルが注目を集めるようになった。
69年デビューのCB750Fourの圧倒的な人気によって、ホンダが4気筒モデルのラインアップ拡大を進める中、72年にデビューしたCB350Fourがそのきっかけとなるモデルだ。

HODNA CB350Four(1972/6)
CB750・500に続く4気筒CBシリーズ第3弾モデル。4本マフラーやディスクブレーキ、大光量ヘッドライトなど、装備面でも最先端だった。
●空冷4ストOHC2バルブ並列4気筒●347cc●34PS/9500rpm●2.79kg-m/8000rpm●170kg●3.00-18・3.50-18●26万5000円
クラス初の4気筒エンジンを搭載したCB350Fourだが、スタイリングも走りもややジェントルだったため、販売台数が伸び悩み僅か2年で生産が終了。
しかし後継モデルとして74年に現れたCB400Fourは、美しい集合マフラーが目立つスポーティさを増したカフェレーサー的スタイルと、排気量拡大でパワーアップした直4エンジンによって驚異的な人気となる。
にもかかわらず、76年のCB400FourⅡを最後に生産は終了。

HONDA CB400Four I/II(1976/3)
中型免許に合わせた398cc版、パワーはダウンしたが実際の走りに変わりはない。ハンドルがコンチタイプのIとセミアップタイプのIIの2タイプあり、408cc版も併売。
●空冷4ストOHC2バルブ並列4気筒●398cc●36PS/8500rpm●3.1kg-m/7500rpm●184kg●3.00-18・3.50-18●32万7000円
後継モデルとして77年にデビューしたのは、空冷並列2気筒エンジンを積んだCB400TホークⅡで、ホンダの4気筒搭載車が400ccに復活するのは、81年のCBX400Fまで待たねばならなかった。

HONDA CBX400F(1981/11)
クラス唯一のDOHC4バルブは、中空カムシャフトやオイルリザーバータンクを装備し、パワーも当時最強の48PS。インボードディスクブレーキやアルミ鋳造スイングアーム、セミエアサスなど車体の完成度も高く、テールとウインカーを一体化したコンビランプなど、デザインも先進的だった。
●空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒●399cc●48PS/11000rpm●3.4kg-m/9000rpm●189kg●3.60-18・4.10-18●48万5000円(単色47万円)
このCBX、DOHC4バルブエンジン、インボードディスク、プロリンクサスなどにより、当時400ccクラスで抜群のスポーティさを備え、当時盛んだった市販400ccマシンのレースでも大活躍し、4スト400ccモデルの人気を牽引した。
だが400ccクラスの注目度の高まりが、より高性能なモデルを求める声を強めたため、83年に後継モデルのレーサーレプリカ・CBR400Fが登場、僅か2年あまりでCBXは姿を消してしまう。根強いCBX人気に答えて84年には異例の再生産が行われたが、その後しばらく400ccクラスはレーサーレプリカに席巻された。
そんなレプリカブーム真っ只中の89年、CBR400RR系の水冷直4エンジンをノンカウルのボディに搭載したCB-1が登場する。
しかしCB-1は、同時期に登場してネイキッドブームを巻き起こしたカワサキ・ゼファー400のような人気を得られなかったため、新たなネイキッドスポーツの開発が進行。
91年の東京モーターショーでCB1000SFと同時に、その弟分のCB400SFとして公開され、好評に応えて92年に発売がスタートした。

HONDA CB400SF(1992/4・6)
CBシリーズの伝統を色濃く受け継いだグラマラスなネイキッドスタイルのボディに、CB-1用ベースの、空冷エンジンを想わせるフィンが刻まれた水冷直4エンジンを搭載。完成度の高さでたちまちベストセラーに。
●水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒●399cc●53PS/11000rpm●3.7kg-m/10000rpm●172kg(乾)●110/70-17・140/70-17●58万9000円/59万9000円(ツートーン)
CB400SFは、CBシリーズの伝統を感じさせるワイルド&セクシーなスタイルと、CB-1のエンジンをベースに大幅な改良を加えられ、力強さと扱いやすさを増したことなど、徹底した造り込みによって一気に400ccクラスのベストセラーモデルの地位に駆け上る。
99年の初めてのモデルチェンジで可変バルブ機構のハイパーVTECを採用しスポーティさと優れたドライバビリティを両立。
05年にはハーフカウルを装着したCB400SBが追加され、07年にはエンジンを一新するのに合わせてPGM-FI化を図るなど、休むことなく細かな改良やモデルチェンジを積み重ね、完成度を高め続けてきたCB400SF。
日本のライダーの好みや使い方に最適化され、あらゆるライダー、あらゆる用途をカバーできる、真のオールラウンドモデルと呼ぶに相応しい存在だろう。