美しさを愛で、慈しむオーナーの喜びは不変

新排ガス規制が9月1日から施行されることを受けて生産終了となった車種は数多いが、中でも「惜しまれつつ」というフレーズがぴったりな1台がエストレヤだ。

画像: 美しさを愛で、慈しむオーナーの喜びは不変

初代のデビューは92年。レーサーレプリカブームが終息し、250〜400㏄クラスはネイキッドやアメリカンが人気の中心になっていた。そんな中、60年代風のルックスと、性能よりもテイストを追求した単気筒エンジンのエストレヤは、当時は異端の存在。業界関係者の多くは本格的な作り込みに関心しながらも、バブル期のキワモノモデルと同様、短命に終わるだろうと思っていた。

だが、エストレヤの人気は着実に高まっていった。「異端」ではなく「孤高」の存在として、女性ライダーを含めた幅広いユーザー層を魅了していったのだ。07年には排ガス規制に対応してFIを採用したモデルチェンジが行われたが、レトロなデザインと乗り味というキャラクターがまったくブレなかったのも、ユーザーの思いを大切にしたからだ。

しかし、市場規模を考えると基本設計が25年も前の空冷エンジンで、こうしたテイストを保ったまま新規制に対応させるのは難しい。開発スタッフは、今回、断腸の思いで生産終了を決断したのだと思う。そのためか、このファイナルエディションの変更箇所は、50歳代中盤以上のライダーには懐かしい、650RS(W3)をオマージュしたグラフィックやシートデザインの変更程度だ。

 エンジンはボア66㎜×ストローク73㎜で、現代の常識からみると「超」のつくロングストローク設定で、穏やかなピックアップと低中回転域での粘り強さが持ち味。早めにシフトアップすればタタタッ……という排気音と心地よい振動を味わえ、18馬力ながら非力さを感じさせないし、高速道路の100㎞/hクルーズも問題なくこなせる。

画像: 直立したシリンダーが個性的な249㏄エンジンは、独特のパルス感と、キャブトンタイプのマフラーから発する歯切れのいいサウンドが、ライダーを飽きさせない。

直立したシリンダーが個性的な249㏄エンジンは、独特のパルス感と、キャブトンタイプのマフラーから発する歯切れのいいサウンドが、ライダーを飽きさせない。

ハンドル切れ角が大きく、シート高も低いから、乗ったままでも降りて押しても取り回しやすいことも美点だし、厚手のシート、ソフトな設定のサスペンション、スポークホイールに組み合わせたバイアスタイヤで乗り心地がよく、ハンドリングも穏やか。エンジン特性と併せ、ロードモデルでここまで「のんびり走りたくなる」車種は珍しい。

僕は初期型に約7年乗っていたので、のんびり走らせる楽しさも磨き上げる喜びも知っている。エストレヤは牧歌的なオートバイライフを望むライダーには最適の1台だ。

SPECIFICATION
全長×全幅×全高: 2075×755×1055㎜
ホイールベース:1410㎜
最低地上高/シート高:170㎜/735㎜
車両重量/総排気量:161㎏/249㏄
エンジン形式:空冷4ストOHC2バルブ単気筒
ボア×ストローク/最大トルク:66×73㎜/1.8㎏-m/5500rpm
圧縮比/最高出力:9.0/18PS/7500rpm
燃料供給方式/燃料タンク容量:FI/13L
キャスター角/トレール:27度/96㎜
変速機形式:5速リターン
ブレーキ形式 前・後:φ300㎜ディスク・φ160㎜ドラム
タイヤサイズ 前・後:90/90-18・110/90-17

梅本まどかの「私も乗ってみました!」

画像1: 梅本まどかの「私も乗ってみました!」

またがった瞬間から安定感があるというか、「絶対に大丈夫」な感じがしました。ごく普通のポジションなので、気持ち的にも平常心で乗れますね。軽いし、足着きもすごくいいから、女性人気の高さも納得。初めてのバイクとして乗る人も安心だろうな。

画像2: 梅本まどかの「私も乗ってみました!」

私の手が小さいせいもあるのか、ウィンカーを出す時は良いけど、戻す時の操作に少しやりにくさを感じました。あと、ステップとシフトペダルの間が狭い気がするので、靴は細身の方がいいかもしれないですね。

でも、気になった点はそのくらい。大きめのステップは足が置きやすいし、丸いメーターも見やすくて、街中をトコトコと走るには本当に最高だと思います!

画像: サイドカバーの専用エンブレムなど、細部まで洒落たデザインを「すごくおしゃれ!」と高評価。

サイドカバーの専用エンブレムなど、細部まで洒落たデザインを「すごくおしゃれ!」と高評価。

画像: シートデザインも特別仕様。「すごくカワイイ見た目だけど、子供っぽくない。大人カワイイですね」

シートデザインも特別仕様。「すごくカワイイ見た目だけど、子供っぽくない。大人カワイイですね」

PHOTO:南 孝幸、森 浩輔

公式サイト

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