いま「地方自治体」がライダーに熱い視線を送る理由

人口減少や過疎化など、地方の活力が徐々に失われつつあるようなニッポン。このままじゃいかんということで、全国の各地方自治体が地域活性化に力を入れている。このごろ強く感じるのは、ツーリング・ライダーを呼び込むことで、地域を盛り上げようとする取り組みが増えているということ。公共交通機関がしっかり整備されているとはいえない地域でも、ライダーならその高い機動力を活かして縦横無尽に走り回ることができる。もともとライダーは山奥の高原ワインディング・ロードだとか、海に突き出した岬の突端など、バスや電車じゃ行きづらい場所に出かけるのが大好きだ。クルマではUターンするのが困難な細い道でも、オートバイなら「この先はどうなってるんだろう」と気軽に分け入っていけるもの。地方自治体は、ライダーのそんな特性に期待を寄せているのだ。

画像: 「カシオペア ライダーズミーティング2018」第一部に参加してくださったみなさん。

「カシオペア ライダーズミーティング2018」第一部に参加してくださったみなさん。

写真は9月22日に岩手県北「カシオペア地域」で開催されたライダー誘致イベント「カシオペア ライダーズミーティング2018」の第一部の記念集合写真。「カシオペア地域」というのは二戸市、一戸町、軽米町、九戸村、旧浄法寺町(現二戸市)を合わせた総称で、それぞれの役場の位置がちょうどカシオペア座の5つの星の位置と重なることから名付けられた。この地域は高原が多くワインディング・ロードに恵まれ、安くておいしいご当地グルメや温泉なども多いことから、こうした観光資源を積極的にアピールしたいとライダー向けイベントを企画したというわけだ。

画像: カシオペア地域の飲食店や土産物屋に用意されていたフラッグ。ミーティング参加者には、フラッグが置かれている各店舗のリストと詳細なツーリングマップが配布されていたので、ミーティングの前や後にフラッグを集めながらツーリングを楽しむことができた。

カシオペア地域の飲食店や土産物屋に用意されていたフラッグ。ミーティング参加者には、フラッグが置かれている各店舗のリストと詳細なツーリングマップが配布されていたので、ミーティングの前や後にフラッグを集めながらツーリングを楽しむことができた。

ご当地ならではの「おもてなし」がいっぱい

イベント会場となったのは岩手県一戸町の奥中山高原センターハウス。イベントは午後に開催された「第一部」と、夜の「第二部」があり(募集定員は各部とも50名)、第一部では地元の銘菓とコーヒーが、第二部では地場産の肉や野菜をふんだんに使った料理やデザートが無料で振舞われた。ステージでは地元・岩手県出身の作家・斎藤純氏、写真家・ホッカイダー小原信好氏、そして私・菅生雅文のトークショー。司会進行役も同県出身の女装家ライダー・岩手蛍さんと、食べ物からゲストまで、すべて岩手県産で取り揃えた。奥中山高原センターハウスはそもそも温泉を備えた宿泊施設なので、あらかじめ宿泊予約を済ませていた第二部のイベント参加者には、ワインや日本酒の世界大会「IWC」で2017年に世界一に輝いた二戸市の銘酒「南部美人」も振舞われるなど、「これで参加費無料!?」と誰もが驚いた様子(宿泊費は有料)。カシオペア地域では、それだけライダーに地元の魅力をアピールしたいということなのだ。

画像: 第一部のトークショー。プロジェクターを使って地元のお勧めスポットを紹介したり、ちょっとしたツーリング写真講座をしてみたり。参加者はコーヒー片手に地元銘菓を頬張りながら、くつろいだご様子だった。

第一部のトークショー。プロジェクターを使って地元のお勧めスポットを紹介したり、ちょっとしたツーリング写真講座をしてみたり。参加者はコーヒー片手に地元銘菓を頬張りながら、くつろいだご様子だった。

画像: 第一部のステージを務めたのは写真家のホッカイダー小原信好氏(右)、写真中央は九戸城主の武将・九戸政実のコスプレで登場した女装家の岩手蛍(いわて けい)さん、左は筆者。登壇前のバックヤードで記念撮影。

第一部のステージを務めたのは写真家のホッカイダー小原信好氏(右)、写真中央は九戸城主の武将・九戸政実のコスプレで登場した女装家の岩手蛍(いわて けい)さん、左は筆者。登壇前のバックヤードで記念撮影。

ライダー誘致の継続的な活動を期待!

岩手県といえば、日本でも屈指の山岳ワインディング・ロードが延びる八幡平や、私営としては日本一の規模を誇る小岩井農場、リアス式海岸で知られる三陸海岸など、超有名観光地が点在。そんな中で、いままで県北のカシオペア地域はアピール不足が否めなかったともいえる。県央の盛岡市出身の筆者でさえ、今回の催しが開かれるまで「カシオペア」の愛称も「稲庭高原」の絶景ロード(この記事のトップの画像)も知らなかったぐらいだ。ところがいざこうして足を運んでみれば、見どころ豊富、走りどころもいっぱいで、二戸市内には地元ライダー有志「愛輪塾」の手で運営されているバイク博物館「みちのく記念館」もあるなど、ツーリング・ライダーを魅了する観光資源に満ちている。今回の「カシオペア ライダーズミーティング」を契機に、今後も地域をあげての「ライダー歓迎」活動を期待したいところだ。

画像: 地元のライダー有志「愛輪塾」が運営している旧車の博物館「みちのく記念館」。閉校した農業校の牛舎、豚舎跡を活用していて、いかにもみちのく的な温かさを感じる施設だ。開館期間は4月末から10月末。入館には事前に問い合わせが必要。(撮影:小原信好)

地元のライダー有志「愛輪塾」が運営している旧車の博物館「みちのく記念館」。閉校した農業校の牛舎、豚舎跡を活用していて、いかにもみちのく的な温かさを感じる施設だ。開館期間は4月末から10月末。入館には事前に問い合わせが必要。(撮影:小原信好)

画像: 「カシオペア ライダーズミーティング2018」第二部の記念集合写真。今回のイベントに来てくださった最年長ライダーは76才、最も遠くから参加してくださったのは岐阜県のライダー。北海道ツーリングの帰りに寄ってくれたというライダーも。カシオペア地域は青森県八戸市のフェリーターミナルからも近いのだ。

「カシオペア ライダーズミーティング2018」第二部の記念集合写真。今回のイベントに来てくださった最年長ライダーは76才、最も遠くから参加してくださったのは岐阜県のライダー。北海道ツーリングの帰りに寄ってくれたというライダーも。カシオペア地域は青森県八戸市のフェリーターミナルからも近いのだ。

ライダー歓迎の地方自治体は今後も増える!?

今回は岩手県の県北地域のお話をさせていただいたが、ライダー歓迎の地方自治体は今後も増えていきそうな予感。まもなく山梨県の小菅村でも‥‥!? 詳しくは10月1日発売の「オートバイ」11月号もしくはこの「webオートバイ」で。以上、アウトライダー菅生がお伝えいたしました!

オートバイ 2018年11月号 [雑誌]

モーターマガジン社 (2018-10-01)

This article is a sponsored article by
''.