日本でもっとも注目されるモトクロッサーは、ユーザー数からいって4ストローク250cc。ヤマハは、今季このカテゴリーに区分されるYZ250Fをフルモデルチェンジしてきた。深掘りして見えてくるのは、わかりやすいスマホ対応だけではなく、ヤマハの250に対する姿勢だ

画像: 剛性を上げたのに、ソフトな仕上がり。ヤマハの主力レーサーYZ250Fはユニークな方向性へ

YAMAHA
YZ250F

874,800円 [消費税8%含む] (本体価格 810,000円)

登録型式/原動機打刻型式B7B3/G3L4E
全長/全幅/全高2,175mm/825mm/1,285mm
シート高970mm
軸間距離1,475mm
最低地上高335mm
車両重量106kg
原動機種類水冷, 4ストローク, DOHC, 4バルブ
気筒数配列単気筒
総排気量249cm3
内径×行程77.0mm×53.6mm
圧縮比13.8:1
始動方式セルフ式
潤滑方式ウェットサンプ
エンジンオイル容量0.95L
燃料タンク容量6.2L(無鉛プレミアムガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式フューエルインジェクション
点火方式TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式
1次減速比/2次減速比3.352/3.846
クラッチ形式湿式, 多板
変速装置/変速方式常時噛合式5速/リターン式
変速比1速:2.142 2速:1.750 3速:1.444 4速:1.222 5速:1.041
フレーム形式セミダブルクレードル
キャスター/トレール26° 50′/119mm
タイヤサイズ(前/後)80/100-21 51M(チューブタイプ)/ 100/90-19 57M(チューブタイプ)
制動装置形式(前/後)油圧式シングルディスクブレーキ/ 油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後)テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
乗車定員1名

マディに沈まないパワフルさ

「セッティングは、マディ用にしてもらったのに、ほとんどダルさがない。マディ用といっても、相当にパワフルだね。深いマディにも沈まずに、泥をかきわけて走るような印象がある」とテスター、和泉拓。

画像1: マディに沈まないパワフルさ

近年、4スト250のトレンドは「ピークパワーの追求」。レーサーながらエントリーユーザーも範疇にいれるべきこのカテゴリーは、想定するユーザー像の設定が難しい。そもそもの開発背景から言うと「クロスカントリーレーサーであるYZ250FXも、着手段階から考慮にいれているんですよ」とエンジン担当の北原氏。

「レブは、伸びるような感じがあるね。もしかすると、レブリミット上がってるんだろうか」という和泉に北原氏は「レブリミットは同じなのですが、レブ域での制御を旧モデルから変えています。失速感のないような伸び方をするのでレブ域を常用できる」とのこと。特に4スト250では、この数年チューニングのトレンドでもあった部分だ。レブが伸びる感覚があれば、1枚1枚のギヤを長く使えるので、ライディングに余裕ができてくる。シフトアップをエンジンに急かされないのだ。

クラッチの容量も今回は上がっているのだが、このあたりは旧型で選手権を戦っているようなライダーに影響する部分だとおもわれる。北原氏は「容量があがったことで、より大きなパワーでも滑る感覚がなくなったと思います」と説明してくれた。

画像2: マディに沈まないパワフルさ

セルスターターを採用。YZ250FXとは異なり、シリンダーの後ろにセルモーターを配置、マスを集中させている。

乗って感じ取れる、モア・スリム

車体関係で和泉が強調するのは、コンパクト感。「YZは、後方排気になってからだいぶシュラウドまわりが太くなっていたけど、この19モデルからはスリムになったことがよくわかる。ニーグリップが必要なところで、力の入り方もだいぶ違っていて、ライダーインターフェイスは好印象だよね。ハンドル位置も旧モデルより手前にきている感じがする、これは僕の体格には合わないけど」とのこと。元々、YZは他社と比べて大柄な印象だが、言うなれば国産なりの設定になったということだろうか。

画像: 乗って感じ取れる、モア・スリム

18モデルで先行してフルモデルチェンジしたYZ450Fと共通のフレームを使用している。横幅がスリムになったのならフレームのスリム化と勘ぐりたくなるが、実はそうではなくシュラウドでのスリム化だ。後方排気であることで、シュラウドはエアスクープを兼ねる特殊な形状をしているため、シュラウドをスリム化することはエンジン出力に影響する。エアスクープの長さや太さを調整しながら、結果10mm弱のスリム化を達成できた。

縦・ねじれ・横すべて15%剛性アップ。しかし柔らかく感じるその秘密

これも近年のトレンドの一つだが、縦方向の剛性は確保しつつも、ねじれ剛性をコーナリング特性の確保のために、落とし気味にする傾向がある。だが、ヤマハがとった手段は、「コーナー入り口で、しっかり安定してつっこめる性能を得るために、ねじれ方向も堅くしている」そうだ。だが、和泉は「フレームの堅さは感じないし、コーナリングではいりづらさもない」と評価。

画像: 縦・ねじれ・横すべて15%剛性アップ。しかし柔らかく感じるその秘密

その柔らかさは、エンジンハンガー位置に起因する。
「上部のエンジンハンガーを後方へもってくることで、エンジンの前部分はほとんどがフローティングしていることになります。つまり、メインフレームの後ろは固まっているけど、前側はたわむ構成になっています」とのことで、これが新YZハンドリングの根拠だ。市販の先行テストになる全日本モトクロスのファクトリーチームにおいても、数年前の旧フレームYZ450FMから同じようなエンジンハンガーにチャレンジしていた。この後方排気第二世代になって、フィードバックがなされたわけだ。

さらには、通常450と250では、250のエンジンハンガーの剛性を落とす傾向にあるが、19モデルでは250のほうがエンジンハンガーの剛性は高いそう。「その理由は答えられませんが、ライダーのフィードバックによるものです」と。堅さをある程度保持しつつ、柔らかさを兼ね備える考え方は、近年見られなかったものと言える。ここからは推測だが、YZは剛性バランスにおおきく抑揚をつける方向でチューニングしているのではないだろうか。また、エンジンハンガーは、通常旋回性を左右するところだ。有り余るパワーをもつ450は素直な特性が好まれるのに対して、250はある程度強引にコーナーにねじこませていくような方向性、あるいはライダーの支配下における部分をを出そうとしているのかもしれない。

サスは応答性をアップ。応答性とは何か

サスペンションに関しても大幅に変更されているが「モトクロッサーにしては、入りやすい感じをうける。ただ、ジャンプを飛んで底付きしやすいなんてことは特に感じない。高級になったっていったらいいのかな、コツコツとかガチガチするような感じがしない。でも、フワフワもしない。これは舗装路を走るだけでも、すぐにわかるね。まだサスペンションが暖まってないうちから、すっと引っかかりなく沈み込んでくれる。ただ、2度目乗ってみると、バネレート自体は変わっていなそうで柔らかいわけじゃなさそうなんだよね。オイルシールにSKF(低フリクションのシール)を付けたときのような感じ」と和泉。

画像1: サスは応答性をアップ。応答性とは何か

これに関しては、KYBの回答がある。「内部の構造を変更することで、応答性を上げています」とのこと。応答性というのは、サスペンションが戻ってきて再び入る時の切り替わりの反応のよさを指しているそうだ。「内部のオイル流路を拡げています。シリンダー径は24mmから25mmに、中速域での減衰力を受け持つミッドスピードバルブに、リーフバルブを盛り込んでいます。その辺で、減衰の反応がよくて、そこを感じ取っていただけたのではないでしょうか」とのこと。リアサスペンションに関しても「アブソーバーのエア室が大きくなっているので、こちらも反応がよくなっています」と説明してくれた。

概して、コンパクトにパワフルに進化したYZ。言葉にしてしまえば、他メーカーと変わらないように見えるが、そのマシンの方向性はユニークだ。

画像2: サスは応答性をアップ。応答性とは何か

若手育成ユースチーム「YAMALUBE RACING TEAM」からは、鳥谷部晃太と大倉由揮が試乗会でデモライド。後半戦の成績も、あがるはず。

This article is a sponsored article by
''.