お天気に恵まれた今週末の鈴鹿サーキット。きょう日曜日も、朝からカラリと晴れて、昨日より気温の上がりが早いくらい。そんな中で行なわれたJSBのレース2、もはや無敵モードに入ったと思われる中須賀克行(ヤマハファクトリーRT)が昨日のレース1に続く連勝。今シーズン、開幕から負けなしの2戦4レース全勝で、昨年9月のオートオリス大会から続く連勝記録を「8」まで伸ばしました。しかも、昨年の岡山大会から今日まで、7レースずっとポールtoウィン! スイープ、完全勝利、完封――まさに中須賀無双モード、フルパワーで継続中なんです。
朝8時からスタートしたフリー走行でも、中須賀は2番手秋吉耕佑(auテルルMotoUP)に0秒8の差をつけてトップタイムをマーク。相変わらず絶好調を維持しています。2番手秋吉は、今シーズンからブリヂストンタイヤに履き替え、開幕戦から上昇一途。3番手に高橋巧(Team HRC)、以下、津田拓也(ヨシムラスズキMOTUL)、渡辺一馬(カワサキTeamGREEN)、渡辺一樹(ヨシムラスズキMOTUL)、高橋裕紀&清成龍一(モリワキMOTUL)が続きます。15分という短い走行ですが、昨日との路面コンディションの違いを確認し、昨日のレース1で出た症状を補正する、そんなウォームアップ走行でした。
決勝レースは10:55スタート。ここでは、またも巧が好スタートを見せ、ホールショットを獲得します。すぐに一馬が前に出ますが、巧が抜き返してオープニングラップ終了。このパート、ライダー名を姓じゃなくて名前で呼んでるのは、高橋も渡辺もトップグループにふたりずついるからです、ご了承くださいw
序盤レースは巧がリード、すぐに2番手につけた中須賀が後を追います。このふたりが3番手以下を引き離してマッチレースに持ち込むんですね。これは、序盤にペースを上げて、トップ集団の台数を減らしたかった、という巧のレースコントロールです。トップライダーって、そんなとこまで見てるんですね。
逃げる巧、追う中須賀。でも間隔は開くでもなく詰まるでもなく、ずっとテールtoノーズ。ふたりはお互いに速い場所が違うので、差は開いては詰まり、の連続。中須賀が巧を泳がせているようにも見えるし、巧が懸命に逃げて中須賀にスキを与えていないようにも見える、そんな展開でした。
こうなると、中須賀が前に出るタイミングが注目されるんですが、ひとつの目安は総周回数の2/3、つまり不意のアクシデントなんかでレースが赤旗中断になった時、その時点で前にいる方が勝ちですから、それがひとつ目のヤマなのです。つまり、18周のレースなので、12周終了時が目安なんですね。
しかし、中須賀は前に出ません。こりゃ、巧が逃げている説、の方が有力になってきます。となると、中須賀が狙うはラストスパート。周遅れでゴチャッとすることがあるので、最後の最後に抜くのはリスクがある、ラスト2周、いや3周の時点で行くか――!
その通り、ラスト3周で中須賀は勝負に出ました。2コーナーで巧のインを刺してトップに浮上。そのまま逃げ切るパターンに持ち込みたいんですが、巧も意地を見せて3コーナーで逆転! そのまま西コースに入ってヘアピンで前に出る中須賀。でも巧はバックストレッチで抜き返します。昨年のマシンよりパワーアップしたという18年型CBR1000RRW、トップスピードではやや中須賀のYZF-R1を上回っていました。
ラスト2周に入ると、とにかく巧の背後にびたびたにつけた中須賀が、今度はスプーンで前へ。周遅れを利用して、抜いた後に抜きにくい位置に周遅れのマシンを置いてのパッシング。中須賀は、これが抜群にうまいですね。
これで万事休す。中須賀は最終ラップに自己ベストタイムをマークして逃げ切り、今シーズン4戦4勝。上に書いたように、昨年からの連勝を8に伸ばしました。
「巧君のペースが速かったから、前に出なかったというより、出られなかった。抜くタイミングはうかがってましたが、1回抜いた後、また抜き返してくるとこまで読んではいました。最後は前に出てスパートしたんですが、思った以上にタイヤをセーブできていなくて、ラスト2周はサインボードも見ずに集中して走りました。去年より、ずっと差を詰められているけど、こっちにだって伸びしろがある。8連勝、素直にうれしいです」と中須賀。
序盤から前に出ても、誰かに前を行かせても、どちらも中須賀の勝ちパターン。予選で2レース分のポールポジションを獲り、タイムも04秒台に入れ、2戦連続ダブルウィン。これ以上の勝ち方、ありませんね。まさに中須賀無双。絶対王者が完全に強さを取り戻しました。
対して、きのう今日と2連敗した巧ですが、それでも明るい材料は、いちど抜かれた後、抜き返して、バトルに持ち込めたこと。ちなみに中須賀との差は昨日のレース1が1秒961、今日のレース2が2秒128。これが、昨年の最終戦・鈴鹿大会では、レース1が3秒909、レース2が2秒420でした。このタイム差の縮み方が、去年からの巧の成長であり、ワークスチーム効果、ってことになるのかもしれません。さらに言うと巧は、いまだシーズンオフに負った左手の負傷が癒えていなくて、レース後すぐにアイシングするほどなのです。巧本人は、もうケガの影響はない、といいますが、HRCの鎌田トレーナーによると、完治まではまだまだ、痛みのないように、テーピングで固めてのレースだったのです。
「スタートが決まって、最初から逃げてやろうと思ってました。もちろん、逃げられないけど、中須賀さんと一騎打ちになって、一度抜かれても抜き返せたし、少しは戦えた。去年はいいようにやられていたので、そこが今年の進歩だと思います」と巧。敗れてなお、光明あり、という感じでしょうか。2連敗したとはいえ、表情はそう暗くはありませんでした。
そして3位には一馬。レース中、ずっと単独で3位番手を走り切り、トップふたりに逃げられてしまったものの、確実に3位表彰台を獲得しました。
一馬も、もう一息ですね。序盤のスピードは、もうトップふたりと肩を並べていますから、あとはそのスピードをいかにレース距離持たせるか、が課題でしょう。早くしないと、鈴鹿8耐にはジョナサン・レイがやってきますからね。NinjaZX-10RRとブリヂストンタイヤの組み合わせを、早く仕上げとかないと!
これで2戦4レースが終わりました。状況は、中須賀無双! 次戦オートポリス大会は。地元九州のレースってこともあって、中須賀、しばらく負けていません……。
写真・文/中村浩史