2か月間のウィンターテスト禁止時期が終わり、1月末からついに2018年シーズンが本格スタートしました。ウィンターテストは、17年シーズン最終戦のバレンシアGP明けに続き、18年に入ってからは1/28-30にマレーシア・セパンで、2/16-18にタイ・ブリラムで、3/1-3にカタール・ロサイルで行なわれます。タイ・ブリラムは、18年シーズンから追加されたGPで、10/7に第15戦として(つまり第16戦もてぎの前です)行なわれるサーキットですね。それから3/18に開幕戦カタールGPを迎えることになります。
この年明け1回目のテストは、各メーカーにとっては17年シーズンから冬の間に作り上げた18年モデルの様子見テストです。現在では、ホンダ/ヤマハ/ドゥカティは、シーズン中のエンジンアップデートがレギュレーションで禁止されていますから、シーズン前に最低でもエンジンスペックを決めとかなきゃいけない。そのために、冬の時期は重要なのです。
今では、17年モデルと18年モデル、という風にハッキリ分かれてはいないようですが、ミシュランから供給されるタイヤは、ここから18年モデル、という区切りがあるようなので、それに合わせた車体とエンジンスペックは、やはりシーズンごとにアップデートされます。
ちなみにマニエッティ・マレリ製のECUソフトは、基本的に不具合を修正するだけなので、シーズンごとのアップデート(=性能向上という意味では)ないんだそうです。意外~!
MotoGPのモデルチェンジ内容っていうものはある意味簡単で、ラップタイム=レースタイムが向上するために、レギュレーション内でなんでもする、ってこと。もちろん、エンジンはパワーがあればいいってものじゃなく、燃費がよくて耐久性があって扱いやすく、タイヤへの攻撃性が少ないものを目指しているわけです。
車体もしかり、タイヤのグリップを最大限に出せて消耗が少なく、ライダーに優しいものが理想。カウル全体の形状だってウィング内蔵式ブリスターカウルだって、最高速を犠牲にせずに、車体を路面に押しつける(=押し付けすぎない)ダウンフォースを稼ぐ形状を模索しているわけです。
電子制御は、もうソフトが共通仕様ですから、その中にどんな機能があって、どうセッティングしたら制御がワークするか、という解析競争。これが、大まかなMotoGP進化の過程なんですね。
シーズン中のエンジン開発が禁止されているとはいえ、たとえば18年型のエンジンスペックは、17年半ばにはプロトタイプが出来上がっていることが多いみたいです。数種類のエンジンスペックが用意されて、それが夏あたりの事後テストでライダーに供給され、基本仕様を決めてバレンシアGP明けのテストで実戦に降ろされます。そのテストで新型エンジンや車体を味見してもらって、年明けに基本スペックを決定。年明けの2回3回のテストで煮詰めていく――これが理想のウィンターテスト。
ただし、この間にもいろいろとドラマはあるようで、冬の間にいい、って評価されたエンジンスペックが、シーズンが始まってみたらアレレレ、ってこともあるし、2017年シーズンでいえば、ふたりのファクトリーライダーの中で、ひとりが「ん?コレはどうも…」と感じていたスペックが、相方のあまりの成績のよさでかき消されてしまって、いよいよおかしいとなって修正するも、時すでに遅し――なんてことがありました。どこのことか、わかりますねw このドラマの詳細は、3月1日発売のオートバイ誌4月号で公開いたします。
そして、このセパンテストの3日間。言ってみれば、冬の間のマシン開発のチェック、様子見、選択できる仕様からの選択がメインテーマで、タイムアタックはさして重要ではありません。とはいえ、毎日のテスト終盤にはタイムアタックをしておくのが習わしみたいなもので、特に最終日はレースウィークばりのタイムアタックが見られることになります。
そのアタック合戦を制したのは、ドゥカティで2年目のシーズンを迎えるホルヘ・ロレンソ! コースレコードをブレイクする1分58秒台のタイムをマークし、オレは2年目は行くぜぇ、をアピールしました。考えてみれば17年シーズンにドゥカティに加入したロレンソは、16年中に開発されたマシンで17年シーズンを戦っていたわけで、大まかに言うとそのモデルにはロレンソの意見や希望が、あまり反映されていない、と考えていいものです。
だから18年モデルは、17年シーズンを戦ったロレンソの意見が反映されているものと考えるのが普通で、それで1発目のこのタイムは、ドゥカティ陣営にもロレンソのチームにも、もちろんロレンソにも自信とモチベーションを与えるものでしょう。
ひとつめのテストを終えて、2018年、まずはロレンソが注目の中心に躍り出ましたね。
3日間の、あくまで参考のラップタイムは以下の通りです。
■初日 1/27
1 ダニ・ペドロサ ホンダ 1:59.427 55/56L
2 アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ 1:59.770 33/35L
3 ホルヘ・ロレンソ ドゥカティ 1:59.802 38/38L
4 ダニロ・ペトルッチ ドゥカティ 2:00.123 29/30L
5 ジャック・ミラー ドゥカティ 2:00.178 42/43L
6 バレンティーノ・ロッシ ヤマハ 2:00.233 44/50L
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12 中上貴晶 ホンダ 2:00.664 63/64L
■2日目 1/28
1 マーベリック・ビニャーレス ヤマハ 1:59.355 66/68L
2 バレンティーノ・ロッシ ヤマハ 1:59.390 38/39L
3 カル・クラッチロー ホンダ 1:59.443 56/65L
4 ホルヘ・ロレンソ ドゥカティ 1:59.498 37/44L
5 ジャック・ミラー ドゥカティ 1:59.509 43/44L
6 ヨハン・ザルコ ヤマハ 1:59.702 45/48L
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21 中上貴晶 ホンダ 2:00.952 19/51L
■最終日 1/29
1 ホルヘ・ロレンソ ドゥカティ 1:58.830 21/48L
2 ダニ・ペドロサ ホンダ 1:59.009 9/58L
3 カル・クラッチロー ホンダ 1:59.052 18/65L
4 アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ 1:59.169 16/51L
5 ジャック・ミラー ドゥカティ 1:59.346 11/36L
6 アレックス・リンス スズキ 1:59.348 14/52L
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14 中上貴晶 ホンダ 2:00.071 19/54L
■3日間総合
1 ホルヘ・ロレンソ ドゥカティ 1:58.830
2 ダニ・ペドロサ ホンダ 1:59.009
3 カル・クラッチロー ホンダ 1:59.052
4 アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ 1:59.169
5 ジャック・ミラー ドゥカティ 1:59.346
6 アレックス・リンス スズキ 1:59.348
7 マーベリック・ビニャーレス ヤマハ 1:59.355
8 マルク・マルケス ホンダ 1:59.382
9 バレンティーノ・ロッシ ヤマハ 1:59.390
10 ヨハン・ザルコ ヤマハ 1:59.511
11 ダニロ・ペトルッチ ドゥカティ 1:59.528
12 ティト・ラバト ホンダ 1:59.547
13 アンドレア・イアンノーネ スズキ 1:59.615
14 アレイシ・エスパルガロ アプリリア 1:59.925
15 中上貴晶 ホンダ 2:00.071
ちなみに17年のマレーシアGPは、ポールタイムが1:59.212(ダニ・ペドロサ)で、ベストラップは同じくペドロサの2015年ポールタイム、1:59.053。この時はまだブリヂストンタイヤ+各社オリジナルのECUソフトでしたから、ロレンソのテストタイムがかなりのものであることがわかります。
タカ中上は、総合15番手です。この時期の順位は関係ない、といいつつ(笑)、本選でいえばポイント圏内であり、バウティスタとりポル・エスパルガロよりスミスより上で、ついでに言えばルーキー勢トップタイム、モルビデリよりシメオンよりルティより上ですね!
ちなみに2017年ウィンターテストのレポートはこちらです^^
www.autoby.jp/_ct/17036762