素直なZ900RS、強烈なXSR900に重厚感を楽しめるCB1100RS
まず、3台とも今をときめく現行車なので、どれもしっかり「スポーツ」はできる。多少コースを選り好みするヤツもいるが、ちゃんと操れば素直なので、峠道が楽しい。流すような走りから、高回転域で回し続けて遊ぶことだってできる。ただ、甘かったり、塩味だったり、酸味がきいていたりと、個々のバイクで「味」が違うだけだ。「味」については誌面から想像してもらうしかないが、走りのポテンシャルや速さは? ということなら、答えは簡単だ。
速さであればXSRが際立つ。もっともクイックでよく曲がるし、車体が軽い上に高回転域には強烈なパワーがある。ブレーキも強力だ。おまけに、他の2車がガコガコとステップやスタンドを接地させている横を、涼しい顔で走る。バンク角も深いのだ。
ただし、扱いこなすテクニックも必要。そもそもこのキレのいいハンドリングを的確に扱えないといけない。それにモタードテイストのベース車・MTI09のDNAが残っていて、サスをしっかり荷重させにくい中速以下のコーナーで大きなピッチングを起こしたり、意図しないドリフトを起こすこともある。
そんなややこしい要求がなく、誰が乗ってもかなり速く走れるのがZ。軽快だし、路面の荒れに強い接地性もある。どんな乗り方をしても、安定して行きたい方向に行ってくれる。ただ、誰にでも扱いやすいが、軽さや機敏さだけでイージーな感触になっているのではない。
これが魅力。走りが上質なのだ。ビギナーからベテランまで、Zの素直さは、どんな走りでもこなせるような信頼感を抱かせる。街中だけでなく、ブン回していても、排気音は腹に響く低音と弾けるような音の混ざった勇ましいもの。非常にイージーに、この音を楽しめるのも醍醐味のひとつ。
さらに濃厚な音や手応えで乗り手を魅了するのがCB。回すと少々振動も増えるが、排気音やエンジンの力量感は懐かしい空冷ビッグバイクのもの。ハンドリングはバイクなりに操ると素直だが、強引な操作では重たい車重が顔を出すタイプ。これらが他の2車にはない、重厚感ある操縦フィールを生んでいる。許容バンク角は浅く、コーナリング速度はそれなりだが、立ち上がりではオーバー1リッターのトルクが味方する。足の動きやエンジンの咆哮、ライディングに対する車体の応答などをじっくり味わいたいライダーにはたまらないテイストだ。
宮崎敬一郎が検証! 気になる『スポーツ適性』
誰が乗っても速い優等生 KAWASAKI Z900RS
パワーバンドは広く見ると4000〜1万回転。その中でも特に力強いのが6000回転以上。レスポンスは優しく、低回転域では粘りとトルクがあり、レッドゾーンまで極めて滑らかに吹ける。このエンジンとクセのない素直なハンドリング、それに快適で、路面の荒れにも強い、しなやかな足回りが武器。バンク角を使い切るくらいのスポーツライディングで、速度リミッターが効くような速度域でも破綻せず、素直でイージーな操縦性を維持する。勇ましい排気音はレトロっぽいが、スポーツライディングでの走行性能は全くクセやアクのない、スタンダードスポーツだと思っていい。使い勝手がよく、誰もが意のままに操れるのが魅力だ。
使いこなせた時の喜びは格別 YAMAHA XSR900 ABS
広く見て6000〜1万1000回転がパワーバンド。この中でも7000、8000回転と階段を上るように力強さが増す。他を置き去りにする無敵のダッシュは7000から上の回転域。ココを使えば、猛烈な立ち上がり加速をする。ハンドリングも軽快で、クィックな身のこなしが特徴。よく曲がるが、その分よく動き、姿勢を変化させやすいサスにクセがある。低中速コーナーでは過度な姿勢変化を抑えた走りをするように操作したり、高速コーナーでも波状に荒れた場所でのフルパワーやフルバンクを避ければ、SSをおびえさせるほどのペースで走れる。これらをわかっていて使いこなせれば愉しいが、いかんせん、本領発揮にはテクが必要。
懐かしの「空冷フィール」を楽しもう HONDA CB1100RS
エンジンは6速1000回転の40㎞/hで流せて、ノッキングせずに再加速できる上に8000回転強までフラットに吹けるフレキシビリティな特性。5000回転以上だとデキの悪いSS並みに振動が出るが、外部からその咆哮を聞くと、記憶の中に懐かしいバイクたちの音が甦ってくる。ハングオンをするかのように大きく体重移動すると身軽で素直だが、リーンウィズでダラリと操ると、短いハンドルと相まって、少しタチが強かった。これはたぶん個体の問題で、リアタイヤがやや摩耗ぎみだったためかと思う。それを差し引いても、少し手応えのある操縦性。でも、バイクなりに操れば素直だし、どっしりと回る直4のサウンドは何とも言いがたい魅力。
(写真/赤松 孝、南 孝幸、森 浩輔)
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