パワーをしっかり引き出して、走る楽しさは格別のもの!
オートバイという乗り物を操ることの面白さ、難しさを知ったのは50㏄のマニュアルミッション車だった、というライダーは多いだろう。しかしスポーツモデルに代わって50㏄の主役となったスクーターはオートマチック変速なので、今ではスポーツモデルへの乗り換えで苦労するライダーも多いと聞く。
だから、GSX-S125という、スポーツライディングスキルを楽しく身に付けられるオートバイの登場には大きな意味がある。125㏄クラスにも、グロムやZといったマニュアル車はあるが、両車とも乗りやすさを最優先した穏やかな特性のエンジンにワイドレシオの4速ミッションという組み合わせで、前後に小径ホイールを採用したミニバイク。パワーとハンドリング性能をきっちりと引き出して走るようなキャラクターではない。
対して、このGSX-S125は15馬力を発生するエンジンに6速ミッション、前後17インチホイールという本格的なパッケージング。走りの質は大きく異なる。
車体サイズは250よりひと回り以上小さいが、ポジションに窮屈さはない。上体を起こしたり、タンク上に伏せることがスムーズに行なえ、前後タイヤへの荷重コントロールを身に付けやすい。サスペンションの動き、タイヤのグリップ状態が明確に伝わってくるのもフルサイズの車体があってこそだ。
そして思わずニヤリとしてしまうのがエンジン特性。アジア圏での使用を前提にした実用性重視の性格だと思っていたが、現在の基準で見れば高回転・高出力型のスポーツライクな設定。鋭くダッシュするにはしっかり回転を上げて効率的な半クラッチ操作を行う必要があるし、ダイレクトなスロットルレスポンスを得るには7000回転以上を保つことが必須。となれば的確なギア選択と素早いシフト操作も必要になる。
扱いやすさと引き換えに「ぬるい」特性になっているエンジンとは異なり、スロットルワークとシフト、クラッチ操作を連携させ、パワーを引き出して走る面白さが最大の魅力。低中回転でも思いのほかフレキシブルで、コミューター的なトコトコ走りもできるが、7000〜1万1000回転あたりでガンガン回せばパワーバンドを実感できる。それがスポーツライディングの第一歩だ。
爽快なエンジンフィールに対し、ハンドリングはどちらかといえば安定志向。このあたりはアジア圏の路面状況も考慮されているのだろう。ギャップ通過時の衝撃吸収性が高く、寝かしはじめからフルバンクまでの旋回性も一定しているので、安心してコーナリングできる。前後ブレーキ効力のバランスも良く、標準装備のABSの介入タイミングも違和感なし。これみよがしな装備はないが、十分なスポーツ性能を秘めている。
操る楽しさを凝縮しながら、価格も35万円台というリーズナブルなもの。ぜひ若いライダーに乗って欲しい。
●全長×全幅×全高 2000×745×1035㎜
●ホイールベース 1300㎜
●最低地上高 165㎜
●シート高 785㎜
●車両重量 133kg
●エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
●総排気量 124㏄
●ボア×ストローク 62×41.2㎜
●圧縮比 11.0
●最高出力 15PS/10000rpm
●最大トルク 1.1kg-m/8000rpm
●燃料供給方式 FI
●燃料タンク容量 11L
●キャスター角/トレール量 25度30分/93㎜
●変速形式 6速リターン
●ブレーキ(前・後) φ290㎜ディスク・φ187㎜ディスク
●タイヤサイズ(前・後) 90/80-17・130/70-17
DETAIL
RIDING POSITION
車体サイズは小さいが、グリップ位置、着座位置、ステップ位置の関係はミドルクラスと大差なし。エンジン幅、メインフレーム幅がどちらもスリムに仕上がっているので左右ステップの間隔が狭く、車体をホールドしやすい。同時に足着きの良さにも貢献している。