ユーザーの声にハイレベルで応える充実モデルチェンジ
初代ニンジャ250Rの登場を契機として日本国内では250ロードスポーツ人気が復活。一方、東南アジアでは経済成長に伴って人気の中心がコミューター的要素の強かった125〜150㏄クラスから、より大排気量のスポーツモデルへとシフトしている。
日本の4メーカーが250㏄に注力しているのは、日本を含めた東南アジア市場を重視しているから。初代ニンジャはタイ工場で生産して世界各国に輸出するグローバルモデルに位置付けられ、ニンジャに続いて登場したホンダCBR250Rがタイ、スズキGSRが中国、ヤマハYZF-R25がインドネシアで生産されている理由もここにある。
新型ニンジャも、そんな東南アジア諸国でのセールスを念頭に開発されたはず。アジアで盛んなプロダクションレースでの成績が市販車のセールスに大きく影響することを考えれば、走力性能の強化は必須。現地では250クラスも大型高級モデルだから、存在感のある車体デザインも重要。それらの要求にハイレベルで応えたのが新型ニンジャだ。
これまでのニンジャは低く構えたシャープなフォルムだったが、新型は張りのある曲面で見た目のボリュームが増した。好き嫌いは分かれるだろうが、ストリートからツーリングまで幅広く使われることを考えれば納得のいく造形。しかも、車体からエンジンに至るまで完全新設計で、前モデルより7㎏も軽くなり、実際の足着き性も良くなっている。
まるで排気量が増えたような力強さと好セッティングの車体
今回の試乗会はサーキット(オートポリス)で行われたが、まずはコースの外周路を一般路に見立て、公道走行ペースでチェック。前モデルは重心が低いフィーリングで、見た目の印象に反してしっとりしたハンドリングだったのに対し、新型は寝かし込みや切り返しが軽快で初期旋回力も高まった。
車重が軽くなったことも効いているが、新設計された車体の剛性バランスとライディングポジションのアップライト化、OEMタイヤの変更(試乗車はダンロップGT60
1)が大きいだろう。低速域でフロントが重い感じが解消され、ギャップ通過時の突き上げも減った。加えて正立フォークの適度な剛性が上質な乗り心地を生んでいるし、倒立フォーク採用車よりもハンドル切れ角を大きく取れる。こうした要素によって、市街地でのハンドリングと扱いやすさが向上している。
しかし、個人的に興味があるのはエンジンのキャラクター。前モデルは高回転で胸のすくような伸びを見せる反面、低中回転域での反応が眠たげで、ライバル車に比べると発進加速も鈍め。パワーバンドを保てれば気持ち良く走れるが、高回転域を使うことに躊躇するビギナーには扱いづらい面もあった。
その点、新型も回転上昇に応じてパワーが盛り上がるスポーツライクな特性に変わりはないが、低中回転域でのレスポンスがダイレクトになり、停止状態から発進するときと登り坂では明らかに力強い。前モデル以上に高回転・高出力型だが、排気量が2割ほど増えたような感覚。これは新設計エンジンのフレキシブルな特性とフリクションの少なさ、そして車体の軽さの合わせ技だろう。
オートポリスのコースを走るのはほぼ初めてだったので、3〜4周はラインとペースが判らず、メリハリもリズムもない走りだったのだが、突っ込み過ぎて寝かしたまま強めにブレーキをかける状況でも唐突な挙動の乱れはなく、落ち着いて対応できた。車体剛性と前後サスペンションセッティングの好バランスはこんな形でも実感できた。
コースに慣れてペースが上がっても、車体が部分的に捻れるような感覚はなく、車体全体が適度にしなって旋回性を生む。前モデルは高い荷重が掛かっているときにフロントタイヤの接地感が掴みにくく、タイトターンではアンダーステアに感じることがあったが、このあたりもきれいに解消され、タイヤのグリップ限界まで不安なく攻め込めた。
クラストップの39馬力(※試乗車は海外仕様・国内仕様は37馬力)だけに、8000回転以上のレスポンスは爽快そのもの。1万3000回転位まで使えるので、各ギアの守備範囲が広く、回り込んだコーナーや連続コーナーでもシフト操作を省け、ギア選択をミスしても失速しにくい。高回転でのパワーはもちろん、楽しくスポーツできる特性だ。
試乗車は海外仕様だが、国内仕様も大差はないはず。東南アジアと日本でニンジャ人気が再燃することは間違いない。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 1990×710×1125㎜
ホイールベース 1370㎜
最低地上高 145㎜
シート高 795㎜
車両重量 166㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
総排気量 248㏄
ボア×ストローク 62.0×41.2㎜
圧縮比 11.6
最高出力 37PS/12500rpm
最大トルク 2.3㎏-m/10000rpm
燃料供給方式/燃料タンク容量 FI/14L
キャスター角/トレール 24.3度/90㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ310㎜ディスク・φ220㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 110/70-17・140/70-17
DETAIL
RIDING POSITION(身長:176㎝ 体重:60㎏)
前モデルとの数値的な差は小さいが、ハンドル位置が高いのでポジションは街乗りも楽な軽い前傾で、Uターンもやりやすい。シート高の数値は10㎜高くなったが、シート前方の左右幅を狭くしたことで足を真っ直ぐに下ろせ、足着き性はむしろ向上している。