それにしてもすごいレースでした! 2017年MOTUL日本グランプリ。残念ながら雨が上がることはなかったけれど、ものすごいレースでした! エキサイティング! ビューティフル! ファンタスティック! アンビリーバボー! もひとつおまけにインクレディブル!
スタートは、ポールポジションのヨハン・ザルコ(テック3ヤマハ)をブチ抜いて、マルク・マルケス(レプソルホンダ)がホールショットを獲得。そして、ここで序盤のレースをコントロールすることになるダニロ・ペトルッチ(プラマックドゥカティ)がその背後につけます。さらに2列目5番グリッドからスタートしたホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ・ファクトリー)がぐいぐいペースを上げて、V字コーナーでトップに立ちます。その背後にマルケス、ペトルッチ、ザルコ、その後方にアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ・ファクトリー)、アンドレア・イアンノーネ(チームスズキECSTAR)。下馬評通り、雨のもてぎはドゥカティが強い!
序盤は、とにかくペトルッチの動きが目立ちました。2周目にはマルケスを抜いて、抜かれて、また抜いて2番手に浮上。そのままS字で、なんとペトルッチがトップに立っちゃうのです! 今年のペトルッチ、ドライもですけど、雨になったら無類の速さを発揮しますから、ここでレースをコントロールし始めるんです。しかし、ペトルッチが逃げ始めるのと同じタイミングで、今度はロレンソが後退し始めます。マルケスに、ザルコに抜かれ(ザルコには軽く当たられちゃった)、ドビツィオーゾに抜かれた後はペースを下げてしまいます。うーん、まだロレンソ、タイヤの持たせ方がうまくいっていないのかな……。ドビツィオーゾとロレンソのマシンの違いについても、ドゥカテイのエンジニア、パオロ・チャバッティさんに伺ってきたので、それはまた後日!
トップに立つや、逃げを打つペトルッチですが、2番手マルケスとの差が2秒ほどになったのがピークで、あとはマルケスがじりじりと接近。ペトルッチ、マルケス、ドビツィオーゾのトップ3が等間隔で周回を重ねます。
13周目には、ついにマルケスがトップに立ち、今度はマルケスが逃げ始めます。トップに立って、すぐに後続との差を広げにかかる、いつものマルケス・スタイル。こうすれば、抜かれた方はガックリ来て後を追えなくなっちゃうからね。精神的にもダメージを与えられる戦略、トップの立ち方なんです。事実、抜かれたペトルッチはややペースダウン。糸が切れた、じゃないけど、さっきまでの勢いはどこへやら、とマルケスに差を広げられてしまうのです。
しかし! マルケスの必勝パターンを許さなかったのがドビツィオーゾ! 逃げたいマルケスをピタリとマークし、5周ぐらいかけて背後につけると、ついに19周目にトップに浮上! レースは24周、残り5周、逃げ切れるか、ってのが終盤の見どころになってきます。
ドビツィオーゾもマルケスと同じように、トップに立つとスパート! マルケスはやや差を広げられながら一時は1秒近く離されますが、まだあきらめない! まだまだ背後につけると、なんと残り3周で再びマルケスがドビツィオーゾをパス! ドビツィーゾも抜き返し、V字で再びマルケスがトップ! 場内の熱気は異様に高まっていきます。メディアセンターにいてもグランドスタンドのどよめきが聞こえてくるし、そのメディアセンター内も、イタリア人のジャーナリストとスペイン人のジャーナリストが、抜き合うたびに大声を上げるという(笑)。
最終ラップ、数車身のリードを保ってマルケスがトップ、2番手ドビツィオーゾ。しかし、1stアンダーブリッジを抜けた130Rで、マルケスがリアタイヤを大きく滑らせる痛恨のミス! そのスキに、またもマルケスの背後につけたドビツィーゾが、ついにダウンヒルストレートでマルケスに並びかけ、90度コーナーで再び(みたび? よたび?)トップに浮上! 90度の立ち上がりもマルケスを抑えて、あとコーナーふたつ!
しかし、それでもあきらめないマルケスは、最終コーナーでドビツィオーゾのインに無理やりマシンをねじ込んで先行! あ、このシーンどっかで見たことがある!と思ったら、4戦前のオーストリアGPもコレだった! その時も、ドビツィオーゾは冷静にマルケスをいなして勝ったんですが、今回もそのまま! 一瞬先行されるものの、冷静に接触も許さず、ドビツィオーゾがトップでフィニッシュ! 加速しそこねたマルケスは0秒249差の2位で、16ポイントあったふたりの差は、5ポイント縮んで11ポイント差で戦いの場をオーストラリアに移すこととなりました。
しかしマルケスも、最後の最後まであきらめないのがものすごい! あそこまで頑張ったんだもん、2位でいいじゃん、なんて微塵も考えないんですね。最終コーナーのインのインをついて、止まり切れていないから加速できないのはわかってるんだろうに、行かざるを得ないんだね。あのスピードでオーバーランもしないし、ちゃんと曲がれたし、転ばないし、なにしろドビツィオーゾを巻き込んだりもしないのが素晴らしい! ま、ドビツィオーゾが上手かったのかもしれないけど(笑)、オーストリアも今回も、ドビツィオーゾが一枚上手でしたね!
レース前にマルケスにもドビツィオーゾにも話を聞いて、もてぎとセパンはドゥカティが、バレンシアはホンダが有利かな――なんて予想が、まずひとつ当たりました! フィリップアイランドは、オレの方が有利、ってふたりが言ってるので、チャンピオン争いがやっぱり最終戦までもつれ込みそうです!ちなみに、まだ逆転の可能性が残されていたマーベリック・ビニャーレス(モビスターヤマハ)は、9位に終わって7ポイントのみを加算し、ランキングトップのマルケスまで40ポイントの差が開いちゃいました。
ランキングトップ5は以下の通り。
① マルク・マルケス ホンダ 244P
② アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ 233P
③ マーベリック・ビニャーレス ヤマハ 203P
④ ダニ・ペドロサ ホンダ 170P
⑤ バレンティーノ・ロッシ ヤマハ 168P
残り3レースですから、最大獲得ポイントは3連勝で75ポイント。つまり、このレースを転倒ノーポイントで終えたロッシは、チャンピオン獲得の可能性が、計算上もゼロになりました。事実上、もうマルケスとドビツィオーゾの一騎打ちとぎょう言ってもいいかもしれませんね。
写真/後藤 純 Photos/Jun GOTO