第14戦スペイン・アラゴンGPが終わりました。8月末にトレーニング中の転倒で右足脛骨と腓骨を骨折したバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハ)驚異の復活、ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティチーム)の快走、そして最後はマルク・マルケス(レプソルホンダ)の完勝というドラマが見られたレースでしたが、注目すべきはもうひとつ、いやふたつ、いやみっつ……。
それは、2位フィニッシュを飾ったロレンソの走りであり、アレイシ・エスパルガロ(アプリリアレーシング・グレシーニ)2度目の6位入賞であり、ポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリーレーシング)の10位フィニッシュでした。あ、偶然エスパルガロ兄弟だ(笑)、しかもロレンソを含めて3人とも地元スペインだし、それも関係あるのかな。
ロレンソの快走は、まぁ予想できたというか、時間の問題だったと思います。予選では、Q1=予備予選の方ですね)行きからの勝ち抜きでQ2行きを獲得、そこでも2番手タイムを出し、フロントロー2番手グリッドを獲得。これも驚きですね。Q1から勝ち上がってフロントローなんて、過去になかったんじゃないかな。
ロレンソは、決勝でもスタートから飛び出して、2番手以降との差を広げ、トップを独走。でも、2番手との差は、一定のところまで広がったところでジリジリと縮められ始めてしまいました。1周目の2番手との差が0秒83、2周目が0秒6、目視では2周目の途中がいちばん差を広げていましたかね、これが、ヤマハ時代のハンマー・ロレンソとの差でしょう。
結局、ラスト7周でマルケスに、ラスト3周でペドロサにかわされて3位に終わりましたが、これで今シーズン2度目の3位表彰台、けれどこれで「ロレンソ完全復活」というわけではなく、まだまだ良かったり、悪かったりのレースが続くでしょう。まずはこのレース、結果的にマルケスに敗れたけれど、優勝争いをして3位に入った、ってことです。
「すごくキツかったけど、なんとかまとめることができた。ヘレスでも3位だったけれど、あの時よりもトップとの差が縮まったし、最後の最後までファイトできていたから、今回の方がいい気分だね。終盤にペースが落ちるのを覚悟してリアにソフトタイヤを履いたので、最後の7周、マルケスとペドロサと同じペースで走れなかったのが残念。ドゥカティでの初優勝は遠くない」とロレンソ。自信も回復してきたかな。今回はパッとしませんでしたが、アンドレア・ドビツィオーゾと合わせて、もてぎでは面白い存在になりそうですよ!
もうひとつ驚いたのが、アプリリアとKTMの躍進です。いや、エスパルガロ兄弟の躍進というのかな、でもKTMはテストライダーのミカ・カリオもいい走りをしていましたから、ライダー個人のスキルだけではなさそうです。
KTMは、正真正銘のブランニューマシン。2017年にMotoGPデビューを果たして、ブラッドリ・スミスがデビュー2戦目のアルゼンチンで15位初ポイントを獲得、ミサノで初のトップ10に入ってみせました。チームメイトのポル・エスパルガロも第2戦アルゼンチンで14位に入って、チェコGPでは9位に入賞。スミスよりも安定してポイント圏内を走っている印象ですね。
そのポルは、予選14番手から、オープニングラップで12番手にアップし、そのポジションをキープ。序盤はヨハン・ザルコ(テック3ヤマハ)を追いつつ、ジャック・ミラー(マークVDS)を引き離すレースをしていましね。中盤には残念ながらザルコには引き離されてしまいましたが、終盤すこしペースの落ちたザルコに、また迫りながら10位でレースを終えました。中盤までポルより前を走っていたテストライダー、カリオをも、最後にはきっちりパスしてゴールしたのが意地でしたね。
アレイシに関しては、予選8番手から、序盤もずっとそのポジションをキープし、レース中盤にはペドロサに、ビニャーレスについていき、最後はドビツィオーゾをかわして、ロッシの背後でフィニッシュしました。ロッシとは一時、0秒3まで詰めたんですが、最後に大きくタイムを落としちゃいました。見にくいけど、レースペース書き出します。Mがマルケス、Aがアレイシ、Pがポルです。
驚くべきことに、23周回数のうち、アレイシが6回もマルケスを上回り、ポルも1回マルケスよりアレイシより速く周回しています。もちろん、その周のレース展開によって、前が詰まっていたり、うまく前のスリップについたりするケースがあるので、一概に速いとは言えないんですが、正直アレイシの走りは、改めて数字で見るとスゴいですね。惜しいのはラスト5周にタイムが大きくドロップしちゃっていることでしょう。これは、もうタイヤが完全に終わっちゃったんでしょうか。
もちろんロレンソと同じく、これがこのまま続くとは思いません。コースレイアウトの有利不利もあるし、路面コンディションにうまくタイヤを合わせられた、っていうのが快走の一番の要因だったりしますしね。しかし特にKTMは、デビュー1年経たずしてここまで進化するとは、だれも考えていなかったかもしれません。少なくとも中の人には衝撃的なタイムシートでした。
それに引き換え、スズキはどうしちゃったんだろう……。そのあたりも、日本グランプリで時間があったら聞いてみたいと思います。
さぁ次は、いよいよ10月15日、日本グランプリ!マルケスvsドビツィオーゾのチャンピオン争いはどうなるのか、ロッシはミサノを1回休んだけど、またチャンピオン争いに加わるのか、チョー速かったり普通だったりするビニャーレスはもてぎをどう攻略するのか、楽しみがテンコ盛りです。何度か書きましたが、もてぎとドゥカティの相性が、ちょっとおもしろくなりそう、と予想しときます。