8耐が終わって早や半月。ツインリンクもてぎでは、全日本選手権ロードレースの後半戦がスタートしています。今回のレースは「ツインリンクもてぎ2&4」として、4輪レースの最高峰・スーパーフォーミュラとの併催でJSB1000クラスのみが開催されます。1枚のチケットで、クルマもバイクも見られる、しかも夏休みまっただなか、ってこともあって、土曜からスゴい観客のみなさんです。やっぱ2&4、すげぇなぁ。
そのJSB1000クラスは、この土曜に公式予選が行なわれました。
ノックアウト予選でまず勝ち残ったのは以下の6名のライダー。タイム順に並べると
1:中須賀克行 1分48秒743
2:野左根航汰 +0秒471
3:津田拓也 +0秒705
4:高橋 巧 +1秒459
5:渡辺一馬 +1秒675
6:高橋裕紀 +1秒710
それに、Q2を勝ち上がった山口辰也、藤田拓哉、酒井大作、清成龍一の4名を加えて、計10名による最終セッションが行なわれました。
結果、ポールポジションは、ヤマハファクトリーレーシングの野左根。2番手に、チームメイトで先輩ライダーである中須賀を差し置いてのポールポジションは、お! と思わせるに十分。6月のもてぎでは、同じ展開で中須賀がポール、野左根が2番手、という順でしたからね。レースは中須賀が独走したものの、最終ラップで周遅れのライダーと接触して転倒、その間に野左根がトップでフィニッシュ。野左根がJSB1000クラス初優勝を飾ったのでした。
そして3番手には、ヨシムラスズキMOTULの津田拓也が入りました。トップ2はヤマハYZF-R1、つまり鈴鹿8耐で優勝したし、SSTクラスも勝ったし、世界選手権までかっさらっていった最強マシンということもあって、6月のもてぎ大会では予選5番手/決勝3位に終わったスズキGSX-R1000Rと津田の組み合わせが、なんとも不気味に映るのです。
というのも、ご存じのように、鈴鹿8耐で3年連続ポールtoウィンを決めた中須賀と、世界耐久レギュラーチームの正ライダーとして、シーズンを通して十分すぎる活躍を見せた野左根に比べ、津田は、鈴鹿8耐でスタートライダーを務めながら、2周目に他マシンと接触して転倒。ヨシムラの1年間の集大成といえる鈴鹿8耐で、開始わずか3分ほどで優勝争いから脱落させてしまいました。
「誰が何と言おうと、あれは僕の責任です。スタートで始動に手間取って遅れてしまって、焦らないように焦らないように走ったんですが、結果として他マシンと接触してしまって転んでしまった。もう、頭が真っ白で、1年間頑張ってきたチームのみんなに、ペアライダーのギュントーリ、ブルックスに本当に申し訳なくて」と、鈴鹿8耐終了後の津田は話してくれました。かくなる上は、と前を向いて絞り出した言葉がこうでした。
「こうなったら、全日本チャンピオンを獲りたいです。前半戦を終わって、まだ勝ってはいませんが、他ライダーのミスにも助けられてランキングトップにいるので、これを守りきって、このリードを広げて、全日本チャンピオンを獲りたいと思います」
走っている時には闘志の塊ですが、普段の津田は穏やかそのものの性格で、普段話をしていても、燃える心を隠したがる、そんなライダーです。もちろん、走るセッションごと、レースごとにトップを目指していますが、そんな津田から「全日本チャンピオン」なんて具体的な言葉を聞いたのは初めてだったかもしれません。
この日の予選でも、セッション終盤に中須賀を突き離し、最後の最後に捕まえようと迫ってきた中須賀を振り切ってポールポジションを獲得した野左根は絶好調に見えます。さらに、前戦のオートポリス大会、そして鈴鹿8耐を勝って「強い中須賀」復活を証明している日本最速の男にも、死角は見当たりません。
けれど、このレースは津田に注目したい。ニューマシンGSX-R1000Rも、走るごとに完成度を高め、鈴鹿8耐を走ったことで、もう「いつでも勝てるマシン」になっているのでしょう。今日の予選でも、津田の走りはキレていて、6月のもてぎよりラクラクとヨシムラGSX-Rを振りまわしているように見えました。
鈴鹿8耐でドン底を味わった男のリベンジを、まずはもてぎで見届けたい。