MotoGPのシーズン後半がスタート!
第9戦ドイツグランプリが7月2日でしたから、約1か月のサマーブレイクをはさんだことになりますね、MotoGP。この週末は、第10戦チェコグランプリ。この1か月は鈴鹿8耐の話題も満載だったRacingAUTOBYですが、ニュースはMotoGP後半戦に移ってまいります。
それにしても天候に翻弄されたチェコGPでした。金曜は雨、そこから曇りつつ土曜にカラリと上がって、と思ったら日曜にはmoto3決勝レース前にドンと降ってのウェットレース。moto3は小雨でウェット路面、moto2は曇りでウェット路面から雨が降り出して赤旗中断・再レース、そしてMotoGPは曇りのウェット路面からどんどん路面が乾いてのマシン乗り換えフラッグtoフラッグ。
不確定要素がある方が面白いレースになることが多いんですが、ドライでスッキリ最速王決定戦ってのもGPの醍醐味ですよね。
moto3は序盤3周が最重要!
最初に行なわれたmoto3では、SIC58スクーデリアコルセの鈴木竜生が安定した速さを見せました。タツキは予選で5列目13番手スタートでしたが、スタート3周くらいのゴチャゴチャした混戦を上手くくぐり抜けて、セカンドグループにポジションを確保。レースは、序盤にジャンフラン・ゲバラとボウ・ベンスナイダーのKTM勢が抜け出しますが、その後方の10台ほどのセカンドグループから1台減り、また1台減り、という展開の中、タツキはこのグループをキープ、対照的に予選11番手ポジションを確保していたSIC(セパン・インタナショナル・サーキット)レーシングチームの佐々木歩夢はこのグループに残れず、後方集団に飲み込まれてしまいます。moto3クラスは、序盤に10台くらいに絞られて、その後方との差が開いちゃうことが多いから、まずはここでセカンドグループにしっかりついて行くことが上位フィニッシュの最低条件ですね。
タツキはそのままセカンドグループをキープし、中盤から終盤には4台のトップ争いとなったレースで周回を重ね、結局8位でフィニッシュ。惜しくも自己最高リザルトの更新はなりませんでしたが、雨のブルノで8位フィニッシュは及第点をあげていいんじゃないでしょうか。あとは6台ほどのセカンドグループで4番手くらい、トップとの差は10秒差ってところを改善していかないとね。オートバイ9月号では、酷暑の秋ヶ瀬サーキットで黙々と走り込みをするタツキのインタビューをお送りしていますが、本人の目標は「今年じゅうに表彰台、来年は優勝!」ってことでしたから、まずは表彰台を早く見たいですね。
言いたかないけどあえて言う どうした中上!
降ってはいないけど、今にも降りそうな中でスタートしたmoto2クラス。鈴鹿8耐から2週連続のレースとなったIDEMITSUホンダチームアジアの中上貴晶は予選15位、teluruストップ&ゴーの長島哲太は23番手からのスタート。しかし、レースは8周目に雨が降り出して赤旗提示からレース中断、再スタートへ。中断前には、どちらもペースを上げられず、中上が15番手、長島が23番手でレース中断となり、レース2はこの順位がそのままスターティンググリッドとなります。
そして、ウェット路面、レインタイヤでのレース2で明暗が分かれてしまいます。再スタートからぐんぐん順位を上げていく長島に対し、中上はスタートをミスして1周目を23番手で終了。周回ごとにポイント圏内の15位が見えてくる長島に対し、中上はペースを上げることができず24位でフィニッシュ。長島はポイントへあとひと伸びが足りず、17位フィニッシュ。どちらもポイント圏外とはなりましたが、充実度はかなり違ったんじゃないかな、そんなレースになったと思います。
中上は「鈴鹿8耐で乗ったマシンからの乗り換えにてこずってしまって」というコメントを残していますが、来シーズンからMotoGPクラスに昇格するかもしれない日本のエースがそんなん言うてたらダメよね。期待しているだけに、中上の元気なさがちょっと気になったレースとなりました。
マルケス、ひと芝居打ったのか??
MotoGPは、moto2終了時にまだまだ濡れていた路面が、グリッドに着くころには太陽が出はじめ、どんどん乾いて行くような展開。レースはレイン宣言が出たまま、つまりライダーは、いつマシンを取り換えてもいい、ってことです。チームによっては、グリッドでタイヤ交換していたみたいですが、これきっと、レインタイヤの中でも柔らかめから硬めに替えていたんでしょう。まだスリックって路面じゃないけれど、路面が乾き始めるとソフトレインタイヤじゃ持たないな、って判断でしょうね。終わってから考えると、ここでスリック履いたライダーがいても面白かったかもなぁ! 「迷ったらスリック」って格言(笑)、日本には古くから言い伝えられてますからねぇ。
結局、全車レインタイヤで決勝レースがスタート。しかし、思った以上に路面が乾いていったのか、2周目には早くもマルク・マルケスがピットへ。スリックタイヤを履いたマシンに乗り換えます。ポールポジションからのスタートだったものの、マルケスは固めのレインタイヤでフィーリングが悪く、ソフト目のレインタイヤのままスタートしていたんですね。しかし、僕はこれ、マルケスがひと芝居打ったんじゃないか、って思ってるんです!
というのも、フラッグtoフラッグになると、どのタイミングでマシンを変えるか、が勝負のポイントになります。今回のように、レイン→スリックだと、いち早くマシンを替えて、数周はチョイ濡れ路面をスリックでヒヤヒヤ走り、そこから猛然とペースを上げていくか、まわりのライダーの様子を見つつ、同じタイミングでピットに入るか、って方法に分かれるんですね。または、ピットサインで強制的にピットインさせてマシンを替えさせる、って手もあります。
ほとんどは、トップグループのまわりのライダーの様子を見ながらピットインのタイミングを決める、ってパターンが多いんですが、ここで問題になるのは、トップに立ったライダーはどーするよ、ってことです。2番手、3番手のライダーは、前を走っているライダーの動きも見ながら決められますが、トップを走っているライダーは、まわりのライダーが見えないわけだから、自分の感覚か、ピットサイン頼みになるんです。
これが、実はマルケスは狡猾というか、上手いんです。2015年のシルバーストーン、2016年のサクセンリンクでのレースでも、ピットに入るかどうかのタイミングで、マルケスは必ずと言っていいほど後方に下がっているんですね。そうすれば、まわりのトップ争いのライダーに気づかれないうちにこっそり(笑)ピットに入れますからね。
今回も、ポールポジションからのスタートで、2周目の後半にはズルズルとペースが落ちてポジションが下がってしまったマルケス。しかし、これ「下がってしまった」ではなく「あえて下げた」のだとしたら、これはもう戦略というかひと芝居というか、もちろんアンフェアなことじゃありません。もちろん、ソフト目のレインタイヤが消耗し切っちゃっていたでしょうし。
そしてマルケスは、2周目でずるずるポジションを落とし、10番手あたりまでダウン。ここで3周目に入る前にスパッとピットに入るんですが、トップグループの誰もがこのことを知らず「あれ、マルケス下がったな。しめしめ」とでも思ったのかもしれません。ひょっとしたらスタート前のグリッドで、マルケスがソフト目のレインタイヤを履いていたのを知っていたのかもしれませんから「ソフト履いてたから下がったか、ふふふ」なんて考えたのかもしれません。策士マルケス、2重3重に伏線を張っていたのかもしれませんね。
結局レースは、トップグループの中でいち早くピットインしてマシンを交換したマルケスが、レインタイヤのまま頑張るトップグループより、一時は10秒も速いラップタイムをマークし、1周遅れてピットに入ったホルヘ・ロレンソやダニ・ペドロサ、マーベリック・ビニャーレス、さらに遅れたバレンティーノ・ロッシ、アンドレア・ドビツィオーゾに大差をつけて優勝を飾りました! ちなみにこの頃のラップタイムは
マルケスとロッシを比較すると、2周目にはロッシがマルケスより7秒強しか速くないのに、4周目にはマルケスの方が10秒弱、5周目には13秒以上速いですからね。これで勝負あり! しかし注目すべきは、ピットアウトした周、つまりスリックタイヤでハーフウェットを走ったタイムが、マルケス22秒8、ペドロサ22秒9に対して、ビニャーレスが25秒0、ロッシが23秒7、ってことです。チョイ濡れ路面を250psのMotoGPマシンで走るコントロールに長けているからこそ、マルケスはいち早くピットに飛び込めたんですねぇ。
「フラッグtoフラッグにはウチは弱いね。結果は悪くはなかったけど、引退するまでにはフラッグtoフラッグにちゃんと対応できるようにしなきゃ(笑)」とロッシ。なんとか4位まで追い上げたけれど、トップ5のランキングは変わらず、ポイント差は以下のようになったのであります。
ドイツまで チェコまで ポイント差
1 マルケス 129p 154 p
2 ビニャーレス 124 p 140 p 5→16p
3 ドビツィオーゾ 123 p 133 p 1→7P
4 ロッシ 119 p 132 p 4→1p
5 ペドロサ 103 p 123 p 16→9p
マルケスがこのまま抜け出すか、まだまだひと波乱あるか。のちのちに、語り草になるレースでしたね。次の第11戦オーストリアグランプリは連続開催、もう今週末です!