灼熱の鈴鹿、ではなかった40回大会
波乱の、って形容詞がつくことが多い鈴鹿8耐ですが、やっぱり今年も鈴鹿のいたずらな神様はいくつかのチームにいたずらしちゃいました。それでも決勝日に7万4000人を集めた、日本で最大のオートバイレースは見ごたえ充分の好レース。ライダー、チームの皆様、関係者の皆様、大きな事故なく終われてよかったです。お疲れ様でした。
神様の最初のいたずらは、天気だったでしょうか。このウィーク、鈴鹿は朝イチにちょっと降り、そのまま晴れていく、というパターンの日々が続いていたのですが、きょう30日の決勝日は朝から雨がぱらつき、そのまま金曜や土曜のようには回復せず、ついに鈴鹿8耐らしい灼熱の太陽にお目にかかることはありませんでした。
決勝スタートは、いつものように午前11時半。素晴らしいダッシュで真っ先に1コーナーに飛び込んだのは、#11カワサキTeamグリーンのレオン・ハスラム。以下#634ハルクプロホンダの高橋巧、#25ホンダ鈴鹿レーシングの日浦大治朗、#19モリワキレーシングの清成龍一、その後方に#21ヤマハファクトリーレーシングの中須賀克行といったオーダー。予選2番手、#12ヨシムラスズキの津田拓也はエンジン始動に手間取り、オープニングラップを11番手で終了。それが焦りにつながったのか、2周目のヘアピンで、その津田が転倒してしまうのです! 優勝候補の一角が、開始からわずか4分足らずで消えてしまった! これも神様のイタズラなのかなぁ……。
オープニングラップの逆バンクでトップに立っていた#634高橋の後方につけたのは、#21中須賀と、#11ハスラム。序盤はこの3台が先頭グループとして4番手以降を引き離します。4番手以降は#5TSRホンダ、#71チームカガヤマ、#7YARTヤマハ、#104ホンダドリームレーシングといった顔ぶれ。トップ3台と4番手の差が開きつつ、10周目あたりには周回遅れが出現、さらに西コース、東コースと雨がパラつき、3番手につけていた#11ハスラムが徐々に後退。トップ争いの#634と#21は何度か順位を入れ替えつつ、最初の1時間を終えることになります。
1スティント目の終盤には#21がトップに浮上し、#634がピタリと背後につける展開。大まかに話すと、この展開がレース中盤まで続き、次に神様のいたずらが炸裂するのは、開始2時間半を過ぎたあたり。次のいたずらは、なんと#634ハルクプロホンダの中上貴晶に降りかかることになるのです。中上は2位走行中の71周目にヘアピンでスリップダウン! スピード域が低いためマシンに大きなダメージはなかったものの、マシン修復のためにピットインを強いられ、#634は4番手まで順位を落としてしまい、徐々にトップとの差も広がってしまいます。
かわって2番手に浮上したのは#5TSRホンダ。TSRはドミニク・エガーターを軸にランディ・ドゥ・プニエと2人のライダーで序盤を回し、ジョシュ・フックを温存。それが功を奏したか、淡々とスピードラップを刻む耐久レースらしい戦略で、#21ヤマハファクトリーを追走。しかし#21のコンスタントな走りはライバルチームを圧倒するほどのハイレベルで、34周目にはマイケル・vd・マークが、この日のベストタイム2分07秒4をマーク! 決勝レース中にこのタイムはスゴい…と思っていたら、のちにアレックス・ロウズが117周目に、鈴鹿8耐レコードタイムを更新する2分06秒9をマーク! これでは、ライバルチームはちょっと手が出せません……。
#21が後続との差を2分もキープし、徐々に独走態勢を築きあげる中、レースの焦点は2番手争いへ。ここは#5TSRホンダと#11Teamグリーンのバトルにしぼられることになり、最後の神様のいたずらは、レース終了のほぼ30分前。200周を前に転倒車が出現し、コースに2度目のセーフティカーが介入すると、隊列を組んだフォーメーションが解き放たれた19時、なんと2番手を走っていた#5TSRのマシンのアンダーカウルあたりから火が見え始めるではありませんか! 騒然とする場内(とメディアセンター)、ライダーのドゥ・プニエは気づかずに走り始めるも、マシンの異常を知らせるオレンジボールフラッグが#5に提示され、TSRのCBRは強制ピットイン! この頃には火は消えていたものの、マシンチェックを済ませて再コースインする頃には、#11Teamグリーンははるか先に逃げてしまい、そのまま8時間のレースは終了。
ヤマハファクトリーは3年間ノントラブルノーミス
結局、8時間をノントラブル、ノーミスでハイペースな走行で終えた#21ヤマハファクトリーが3年連続の鈴鹿8耐優勝! しかも3年ともポールtoウィンで、ヤマハはこれまで2連覇こそあったものの(1987-88年)、3連覇は初めて! この3連覇中にライダーは変更されているものの、中須賀克行は3年連続でチームの軸となり、同一チームのライダーによる3連覇は、鈴鹿8耐史上初(アーロン・スライトが1993-94-95に3連覇するものの、チームはカワサキ-ホンダ-ホンダ)! まさに記録づくめの40回記念大会となりました。
「3連覇できて本当にうれしい! 8耐らしい灼熱のコンディションではなかったんですが、僕ら3人は3人とも揃ってハイペースで周回できたのが効いたと思います。僕の1回目の走行では、小雨も降り始めて難しいコンディションだったんですが、僕が離されても残りの二人で挽回してもらえるし、と思って、大事にタスキをつなげました。鈴鹿8耐3連覇覇は日本人で初めてということで、本当にうれしい。ふたりのライダーとチームスタッフのみんなにお礼が言いたい」と中須賀。今大会のマシンは基本的に2016年仕様と同等で、それはつまり、中須賀が軸になってこの3年間の全日本選手権、鈴鹿8耐で作り上げてきたマシンでもあります。
速いマシン、強いライダー、そしてミスのないチーム戦略が組み合わさって、全車を周回遅れにする完全勝利!ヤマハはこれで、鈴鹿8耐を3回分、つまり24時間分もずっと最速マシン、最速チームだったことになりますね。アレックス・ロウズ、マイケル・vd・マーク、そして中須賀克行、おめでとう! 君は文句なく日本最速の男だ!
第40回 鈴鹿8時間耐久ロードレース 決勝暫定結果
1 ヤマハファクトリーレーシング 216周
2 カワサキ チームグリーン 216周
3 F.C.C. TSR ホンダ 215周
4 MuSAHi RT ハルクプロHONDA 214周
5 YARTヤマハ 212周
6 ホンダドリームレーシング 212周
7 ヨシムラスズキMOTULレーシング 212周
8 Satu HATI ホンダTeamアジア 211周
9 MotoMapサプライ FutureAccess 211周
10 ホンダドリームRT桜井ホンダ 211周