鈴鹿8耐ヘ向けて、事前合同テストも終わり、いよいよ決勝まであと10日! 今年の鈴鹿8耐は決勝日が7/30のため、毎月1日発売の本誌では、いかなフル回転で超速報をしようとしても、誌面に載ることはありません。なので、レース前情報、鈴鹿入りしてからのニュースは、ここWebオートバイで詳報します! よろしくご覧ください^^
さて、カウントダウン③は2017年の全日本ロードレースで4戦2勝を挙げている、MuSASHi RT ハルクプロHONDAの高橋 巧インタビューです!
ここまで4戦を終わった全日本選手権で開幕2連勝を挙げ、強さを見せている高橋 巧。高橋は、どちらかと言うと感情を表に出さないクールなライダーなんですが、今年のレースぶりを見ていると、走りと成績、それにマシンづくりがいい形でリンクして、これまであまり感じなかった「自信」をもってレースをしているように見えます。
レースは第4戦オートポリス大会をマシントラブルで落としてしまい、ランキングこそヨシムラスズキの津田拓也、カワサキTeamグリーンの渡辺一馬に続く3位に終わってはいますが、ここまで2勝。文句なく今シーズンのチャンピオン候補最右翼です。
「ここまでの全日本は、2連勝とはいえ中須賀さんが転んでの優勝。でも、第2戦の菅生は、ドライでもウェットでもいい勝負ができる、勝てると思ってました。菅生は雨で、今まであまり得意じゃなかったんですが、今回は絶対勝てると思ってたし、新しいCBR1000RRと新しいレギュレーションの17インチタイヤが、マッチングいいんだと思います」
確かに高橋が言うように、開幕2連勝はどちらも中須賀が転倒した結果でもありますが、開始早々に中須賀が姿を消した開幕戦はまだしも、第2戦菅生は、オープニングラップからグイグイ飛ばして、後続をまったく寄せ付けない、強い高橋が見られたレースでした。レースタイムでも、中須賀は転倒するまで高橋のペースには追い付いていませんでした。
「オートポリスでは勝負できると思っていたんですが、トラブルでリタイヤしちゃいました。ランキングも、あれで振出しに戻っちゃった。でも、新しいCBRのポテンシャルは高いし、去年よりぜんぜん自信もってレースできています」
高橋は鈴鹿8耐で、MotoGPライダーのジャック・ミラーと、moto2ライダーの中上貴晶とトリオを組みます。16年はニッキー・ヘイデン、15年はケーシー・ストーナーとチームを組んだ高橋でしたが、今大会はふたりとも年下、後輩ライダーということもあって、今年はは違う役割を求められます。
「チームのリーダーって意識はありませんが、ふたりよりも常にいいタイムを出して、特にマシンのセッティングに関してはイニシアチブをとって行こうと思ってます。ずっと開発してきたマシンだし、この状態がイチバンだよ、と。ふたりは後輩とはいえ、おとなしく黙って乗る、というタイプでもないので(笑)、自分の好みはいろいろあるでしょうし、いろんなセッティング違いをトライはしているみたいですが、今のところ大きな変更はないですね。そのためにもチーム内のトップはもちろん、ホンダ勢でもトップタイムを出し続けていかないと」
これまでのテストで、3人のライダーともに抱えていることは同じだといいます。それは、やはりタイヤのこと。灼熱、それも路面温度が60度に届くことも珍しくない鈴鹿8耐では、やはりタイヤ性能、タイヤ選択が勝負の大きなキーポイントになるからです。
「ウチは17インチで行きます。現時点ではまだ去年の16.5インチの方が進んでいるかな、とは思いますが、もういい勝負はできる。無難に行くなら16.5インチなんでしょうが、先のことも考えての決定です。僕らは鈴鹿でもう1回テストできるんですが、そこに持ってきてもらえるタイヤを決勝で使えるはず。上手くいかなかったら、ジャックと中上君と、人間で何とかします(笑)」
ここで、勝負のひとつのカギが公開されました。前回アップした中須賀インタビューでは、ヤマハが16.5インチタイヤを使用することを公表しましたが、高橋は17インチで行く、と。レース専用の16.5ンチと、市販車へのフィードバックを考えた17インチでは、やはり16.5の方に分があるような気もするんですが、16.5インチタイヤの開発は、昨年でストップしています。そこに、開発を続けている17インチで挑もうというのです。
そこには、いまHRCで、主にアジア選手権などで若手ライダー育成などを手掛けている「ミスター8耐」宇川徹さんが付け加えてくれました。
「去年の段階で、16.5インチは開発をストップする、ということでした。当たり前ですよね、レースで使わなくなっちゃうんだから。レギュレーションの関係で、今年の8耐までは16.5インチを使えるんですが、ホンダはいわば昨年の段階で16.5インチで行くと決めたようなものです。1年間、開発がストップしたものでレースを戦うなんて考えられません」
17インチで行く、というのは高橋も了承済み、というか、高橋の意見でもあります。8耐だけじゃなく、その先も見据えての、勝算あるチョイスなのだといいます。今年の高橋は、マシンのセッティングのイニシアチブやタイヤ選択に関しても、昨年までにはない闘志を感じますね。いい意味で、我を通しているというか、そのために当然リスクも負っているのです。
「全日本も8耐も、新CBRのテストの段階から、こうしたい、こうさせてください、ということを強く言ってきました。8耐で組むジャックや中上君にも、いい状態の、僕の仕様のCBRをゴチャゴチャにされたくない、って想いもあります。今年の8耐は勝たないと、いい勝負ができるってだけではだめだと思う。なんだか自分のことばっかり考えているみたいですが、それが結果的にホンダのためになるんだと思って強く言っています。そういう風に自分を追い込んでここまで来た。その分、結果を出さなきゃいけないんです」
高橋は今年の全日本選手権、そして8耐を自分のアピールの場にしたいと考えています。もちろん、結果を出して、言いたいことを言うという、プロフェッショナルな態度です。
「全日本でチャンピンを獲って8耐も勝てば、アピールできます。それが最低条件ですよね。これまでも、何度も海外のレースをしたい、ワイルドカードで日本グランプリに出たい、と言ってはきましたが、全日本でチャンピオンも獲ってないし、説得力もない。だから、今年はチャンスだと思っています。今までより強く、会社に言っていると思います」
ここで、再び宇川さんが登場。宇川さんの時代は、全日本で結果を出して、日本で行なわれる世界格式のレースにワイルドカード参戦して、それから海外へ、というレールがありました。
「僕の時代はそれがありました。全日本で結果出して、GPへ、と。125も250も500もスーパーバイクもありましたから、それを考えると、今のライダーはチャンスが少ないですよね。その少ないチャンスっていうのは、全日本のタイトルであり、鈴鹿8耐だと思うんです。僕も、GPを走っていて成績が悪く、これは来年のシートはないかな、と思った年に鈴鹿8耐で優勝して、次の年もGPを走れた、ってことがありました。あれはきっと、8耐で結果を出したおかげかな、って思いましたよ」
鈴鹿8耐で5勝している先輩ライダー、宇川さんがいる前で
「記録として残っているものなら、すべて越えたい」といった高橋。今まで、あまり表に出なかった感情、闘志がはっきりと見える、そんな表情でした。
高橋が日本グランプリにワイルドカード参戦できるか、そしてワールドスーパーバイクへの階段を掛けられるか、その目標が達成できるかどうかも、鈴鹿8耐、そして全日本のタイトルへと続いているのです。