舞台は世界選手権初開催のスロバキアリンク
世界耐久選手権 第4戦スロバキア8時間耐久が終わりました。
舞台となったスロバキアリンクは全長5.9kmのコースで、世界選手権格式のレースが行なわれるのは初めて。各チームは5月末に事前テストを行い、この週末に決勝レースを迎えました。
「初めてのコースだけれど、もし例えるなら…スズカに似ているかもね。コースのテクニカルなセクションと高速セクションのバランスが似ているかも」とはYARTヤマハのテクニカルチーフ、ルードビッヒ・レイナーさん。鈴鹿は5.821km、スロバキアリンクは5.922mですから、約100m差。
そして、スロバキアリンクのコースレコードが、2016年アルプアドリア選手権の2分04秒577といいますから、カテゴリーは違えど、鈴鹿のJSB1000レコードが2分05秒192(15年10月/中須賀克行)ということは、スロバキアリンクがやや高速型、といえそうですね。2輪専用の「日立オートモティブシステムズシケイン」(アナウンサー泣かせw)の分、平均スピードが高い感じなのかもね。
そして、このスロバキア8時間耐久、公式予選を制したのは、日本の野左根航汰も所属するYARTでした。野左根は、同日に九州で行なわれている全日本ロードレース選手権をパスしてまで、このスロバキアに出かけています。もてぎで初優勝して、勢いに乗ってオートポリスも……と行きたいところだったでしょうが、契約内容です、しょうがないね。
あらためて、ポールポジションを獲得したのはYARTヤマハ。2番手にGMT94ヤマハ、3番手にTSRホンダ、4番手にBMWを駆るTeamLRPポーランド、5番手にスズキエンデュランスレーシングチーム(=S.E.R.T.)がつけました。決勝日朝のウォームアップランは、TSRがトップタイムに、YARTヤマハが2番手、GMT94とLRPポーランドをはさんで、トリックスターが5番手につけました。
日本のファンなじみのチームが上位につけましたね、これってコースが鈴鹿っぽいって言われることと関係あるのかな^^
序盤はTSRとYARTがトップ争い!
決勝レースは好天に恵まれた土曜日13:30にスタート。ホールショットを奪ったのは日本でもおなじみのS.E.R.T.バンサン・フィリップ。これを追うのはTSRのジョシュ・フックとYARTヤマハのブロック・パークス。しかし、路面温度が高く、S.E.R.T.はフロントタイヤの不調を訴えて後退し、4周目にはTSRがトップに浮上します。しかし、同じタイミングで2番手に上がったのがYARTで、しばらくTSRとYARTがトップ争い。1回目のピットイン直前に、パークスがトップに立ち、YARTは野左根、TSRはダミアン・カドリンがピットアウト。野左根はそのままカドリンを引き離し、ほぼトップ独走のポジションを固めた頃に転倒車が出て、セーフティカーが介入し、YART-TSR-GMT94の3台が集団を形成。せっかく後続車との差を広げても、セーフティカーが出ると間隔ほぼゼロになりますからね。つらいところです。
そしてペースカーがアウトすると、すぐにGMT94がトップに浮上。2番手にYART、3番手にTSRというオーダーでレースが再開します。
2度目のピットを終えるころには、トップは再びYARTに。2番手GMT94、3番手TSRというオーダーが続きますが、この時間帯にYART(おそらくマービン・フリッツ)が2度コースアウトを喫し、転倒こそ免れたもののGMT94が逆転。しかし、3度目のピットインでYARTはパークスがコースインすると、パークスは三たびトップに浮上し、2番手GMT94との差を広げにかかります。
TSRとYARTにトラブル発生!
そして開始3時間を過ぎたころ、3番手を走るTSRにトラブルが発生。エンジントラブルのようで、一度ピットアウトするもののペースが上がらず、再びピットへ。長時間の修理が始まります。
これでトップYART、2番手GMT94、3番手は大きく遅れてMACOレーシング、その後方に序盤のタイヤトラブルを挽回したS.E.R.T.が5番手。TSRは20番手過ぎまで順位を落としてしまいます。
YART、GMT94のトップ争いで5時間を経過。15~20秒差は、8時間耐久ではまだセーフティリードとはいえません。
そして開始5時間半ごろ、なんとトップを走るYARTも予定外のピットイン! 駆動系まわりのトラブルのようで、チェックして一旦ピットアウトするものの、翌周にまたピットインし、どうやらチェーン引きまわりのパーツにトラブルがあったようです。ピットに入って、なにごとかを喚き散らすパークス。順調にトップを走っていただけに、チームも動揺、メカニックどうしも言い争って、それがライブタイミング動画に乗って流れちゃう。
どうにかピットアウトした時、YARTは3周遅れの5番手あたりまでポジションを落とし、そのまま追い上げを開始。これで順位は①GMT94②MACOレーシング③S.E.R.T.④ホンダエンデュランス⑤YARTといったオーダー。ここまで世界耐久ではいいところがなかったホンダエンデュランスが、順調に耐久レースらしい走りを見せていますね。この後、MACOレーシングも転倒で戦列を離れ、表彰台争いを繰り広げていたボリジャースイスカワサキも電気系トラブルで後退してしまいます。
結局、そのまま21:30にチェッカーが振られ、GMT94がノントラブルでル・マン、ドイツに続いて3連勝! 2位にじりじりと追い上げてコンスタントに上位に上がってきたS.E.R.T.、3位にホンダエンデュランスが入りました。YARTは追い上げ及ばず、4位フィニッシュ。TSRは終盤にフックがファステストラップをマークしたものの、トラブル修理時間の長さが響いて21位に終わりました。
正式結果は以下の通り。
① GMT94ヤマハ 223周
② S .E.R.T. 222周
③ ホ ンダエンデュランス 〃
④ YARTヤマハ 〃
⑤ N RT48シューベルトモータース 219周
⑥ ヤマハビルテュスエクスペリエンス 〃
これで世界耐久4戦を終えて、ランキングは以下の通り。
① S.E.R.T. 132P
② GMT94ヤマハ 131P
③ YARTヤマハ 105P
④ SRCカワサキ 92P
⑤ MACOレーシング 87P
⑥ F.C.C. TSRホンダ 84P
⑩ EVA RT WeBike TRICK STAR 54P
さぁ耐久最終戦は7月末の鈴鹿8耐!
これで世界耐久選手権、残すは7月末の鈴鹿8耐のみ。鈴鹿8耐はもちろん、単独のビッグイベントとはいえ、耐久選手権の一戦。鈴鹿8耐だけに参戦するチームが上位入賞することが多いレースですから、チャンピオン争いはまだまだわかりません。たとえば、何が何でも優勝、表彰台に乗らなくてもいいけど、あのチームよりも3つ前のポジションでゴールするんだ、とかね。というか、TSRやトリックスターがフル参戦し、YARTに野左根が加入したことで、がぜん世界耐久チャンピオン争いに注目が集まってますね!
最終戦でチャンピオンが決まり、その舞台が鈴鹿8耐ってことは、こういうことなんだね!