土曜の予選日には雨に見舞われたMotoGP第2戦アルゼンチンGPですが、決勝日はなんとか持ったようです。日曜には、moto3の朝ウォームアップから、路面はドライ。決勝レースは3クラスともドライコンディションで行なわれました。
しかし、スゴかったなMotoGPクラス! 呪われたレースというか、上位陣総崩れというか……なんだかおかしなレースでした。公式予選では、ファクトリーライダーであるペドロサ、ロッシ、ドビツィオーゾ、ロレンソの4人がQ1スタート、という異常事態となったことはお伝えしましたが、決勝レースでも、このおかしな状況が続いてしまったんです。
5メーカー10人のファクトリーライダーが…
決勝レース、スタートで飛び出したのはポールシッターのマルク・マルケス(ホンダ)。オープニングラップからぐいぐい飛ばして、2周目に入る時には、なんと2番手カル・クラッチロウ(ホンダ/サテライト)に1秒3の差をつけてしまいます。まさに、スタートからスパートして独走態勢に持ち込みたい――そんなスタートに見えました。
しかし実はその前に、1周目の1コーナー立ち上がりで、なんとホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)が転倒してしまいます。ロレンソのスターティンググリッドは6列目16番手。スタート直後、1周目で少しでもポジションを上げたい、という焦りにしか見えませんでした。アンドレア・イアンノーネ(スズキ)の後方に接触したようで、ロレンソはほんの数秒で第2戦を終えてしまいました。さらに実は、そのイアンノーネもジャンプスタートを取られ、その数周後にライドスルーペナルティを受けるのです。この時点で、ファクトリーのライダーがふたり、優勝候補から消えてしまうんですね。
マルケス独走のレース序盤。しかし4周目の第2コーナー、マルケスは単独で転倒してしまいます。ハイペースでややラインを外し、ブレーキングの瞬間にフロントが切れてステーン、と。独走していたトップが単独で転倒――これは開幕戦のヨハン・ザルコ(ヤマハ/サテライト)と同じパターンですね。これでファクトリーライダー3人目。しかし、異常なレースはこれで終わりませんでした。
次の餌食はアレックス・リンス(スズキ)。リンスは、レース前のトレーニングで右足首を負傷、しかしドクターチェックをパスして出場がかなったのに7周目に転倒、再スタートしましたが、痛みが激しく、12周目にリタイヤしてしまいます。その周にはアレックス・ロウズ(アプリリア)、14周目にはダニ・ペドロサ(ホンダ)が転倒し、15周目にはアレイシ・エスパルガロ(アプリリア)が、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)を巻き込んで転倒。これでホンダ、ヤマハ、スズキ、ドゥカティ、アプリリアの5メーカー10人中、4メーカー8人のファクトリーライダーが戦列を去ってしまいました。これはまさに異常事態! ちなみにドビツィオーゾは、ここアルゼンチンで2年連続、他ライダーの転倒に巻き込まれてのリタイヤです……。気の毒……。
結局レースは、マルケス→クラッチロウに続いて3番手でレースをスタートしたマーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)が4周目にトップに立つと、後方をジリジリと引き離してレースを支配。序盤2番手にはクラッチロウがつけ、そのクラッチロウを抜きあぐねたバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が終盤に2番手に浮上すると、その頃にはビニャーレスは3秒前方、という展開で勝負あり! ビニャーレスが開幕戦カタールGPに続いて2連勝、ロッシが2位に入って2戦連続表彰台を獲得し、3位にクラッチロウ、4位にはアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ/サテライト)が入りました。
しかし、5メーカー10人のファクトリーライダーのうち、8人が転倒(イアンノーネはジャンプスタートですが)でノーポイントという異常事態。しかも生き残ったのはヤマハファクトリーのふたりのみという、統計学的にもかなり天文学的可能性でしょう。しかもヤマハはサテライトのふたり、ザルコとヨナス・フォルガーも5位と6位に入賞し、ヤマハライダーだけが全員完走、無事に走り切りました。ずいぶんレースファンを続けていますが、こんな展開、ちょっと記憶にないですね。
2連勝のビニャーレスはもちろんスゴい! しかし、これがGP参戦350レース目(!)で223回目(!)の表彰台となったロッシはもっとスゴい! ちなみにロッシのGPデビューは1996年3月29日のマレーシアGP予選日。この時、ビニャーレスは1歳2か月です……うわーロッシすげぇぇ!
moto3/moto2では明暗分かれた日本人ライダー
MotoGPに先立って行われたmoto2クラスでは、22番手スタートとなった日本代表・中上貴晶(IDEMITSUホンダTEAMアジア)が、なんとなんと1周目の1コーナーで転倒! これ、MotoGPでロレンソが転んだパターンと酷似(場所もほぼ同じ)していて、予選順位わるい→スタートから1周目が勝負→ミスで転倒、という焦りが生んだ最悪パターン。これはタカ、反省せねばいけません。熱烈応援しているだけに、残念、口惜しいです。
長島哲太(Teluruストップ&ゴー)は2戦連続19位フィニッシュで、再デビュー2戦目もノーポイントながら、7人もが転倒する波乱のレースで、キッチリ完走を果たしました。ラップタイムを見てみると、ペースこそ速くはなかったものの、安定したペースで23周を走り切りました。終盤、フリアン・シモン(ガレージPlusインターヴェッテン)、イサック・ビニャーレス(ストップ&ゴー)との3台での競り合いに負けての19位ですね、次は集団を抜け出して、少しずつ上を目指してもらいたい!
この日のオープニングとなったmoto3クラスでは、鈴木竜生(SIC58スクアドラ・コルセ)がセカンドグループにしぶとく食らいついて8位、鳥羽海渡(ホンダTEAMアジア)は7台ものグループでぐいぐい順位を上げて10位でフィニッシュ。佐々木歩夢(SICレーシングチーム)は20位とノーポイントに終わってしまいました。このクラスで、日本人ライダーがトップ10にふたりも入ったのは、2008年のイギリスGPでのGP125クラス、小山知良&中上貴晶が6位&8位に入って以来のことです。
これでGPは2戦を終わって、次戦は4/23に決勝を迎えるアメリカズGPです。こ、これも時差がキツいフライアウェイですが、第4戦ヘレスGPからはヨーロッパ時間に戻りますからね~!