マレーシア・ジョホールで開幕!
WSBK第3戦アラゴン大会と同じ週、アジアロードレース選手権の開幕戦が行なわれました。全6戦で行なわれる選手権の開幕戦舞台はマレーシア・ジョホールサーキット。なつかしいですね、1998年には一度、WGPが行なわれたサーキットです。125で上田さん、250で原田さんが勝ったんでした。
開催クラスは、今シーズンからADC(=アジア・ドリームカップ:CBR250Rワンメイク)がなくなって、SS600(=スーパースポーツ600)、AP250(=アジア・プロダクション250)、そしてSAC(=スズキ・アジアン・チャレンジ)、アンダーボーン150の4クラスが行なわれます。
このアジア選手権には、多くの日本人選手・日本のチームが参戦。格式的には「FIM アジアロードレース選手権」と、ナショナル選手権である全日本ロードレースのひとつ上になりますから、世界のレースへのステップとしてとらえられ始めている選手権ですね。
SS600クラスは、山田誓己、羽田太河、芳賀紀行、伊藤勇樹、山口辰也、名越哲平がフル参戦。山田と羽田は、先にお伝えした、手島雄介率いるT.Proイノベーションからの参戦。伊藤はヤマハのサポートを受け、名越はチャンピオンチーム、ブンシューホンダから、山口はAPホンダ(タイホンダの販社が母体ですね)からエントリーになっています。芳賀はチームカガヤマから移籍し、兄・健輔さん率いるK-Maxレーシングチームからの参戦です。
AP250は、初代王者・山本剛大、小山知良、高杉奈緒子が参戦。山本は昨年までのカワサキNinja250からCBR250RRへマシンをスイッチしての参戦! 小山はT.Proイノベーション在籍のまま、クラスをSS600からスイッチしての参戦。高杉は宇井陽一率いるチームOne For Allからの参戦です。
そして、チーム加賀山がプロデュースするSACは、アジア各国のジュニアライダ―育成のクラスですが、昨シーズンまでのアンダーボーンのマシンSATRIA-FU150をGSX-R150にスイッチし、一気に本格育成クラスになってきました。ここに、日本から藤田哲弥が参加。藤田はハルナ育ち、青木宣篤の秘蔵っ子として16年シーズンはKTM-RCカップに出ていたし、今シーズンはもてぎ選手権なんかに参戦するようです。
タイガ優勝!これはフロックじゃない!
今回は、SS600クラスでビッグサプライズがありました!
土曜に行なわれたレース1では、日本でもおなじみ、WSSPのタイ大会でもトップ集団を走ったデチャ・クライサルト(ヤマハ)、昨年のチャンピオン、ザクワン・ザイディ(ブンシューホンダ)、世界選手権moto2帰りのアズラン・シャア・カザルザマン(カワサキ)、それに日本の伊藤がレースをリード。そして、予選でフロントローを獲得した羽田もトップ集団にくっついて行くのです!
レースは序盤、ザクワンがリードし、中盤にはデチャがトップに浮上。6台くらいがトップグループを形成する中、一時はデチャ-ザクワン-伊藤のトップ3が逃げ始める展開。羽田は一時、やや離れての4番手にいたんですが、中盤あたりから徐々にトップ3に迫ります。
ザクワンが再びトップに立ってレースを引っ張り始めた終盤、やや間を空けてデチャ、伊藤、羽田が2番手争い。このなかで伊藤をかわし損ねたデチャがオーバーランする間に羽田が3番手に上がると、なんとそのまま伊藤をもかわして2位に浮上し、ポジションをキープ。ラスト3周には、そのままザクワンの背後にひたひたと迫りながら、そのままチェッカー。なんとなんと、アジア選手権4年目の羽田が、初表彰台を獲得したのです!
羽田は勢いそのままに、日曜に行なわれたレース2で、ザクワンがややスタートに失敗する間にホールショットを奪い、レース序盤にトップに立つと、ザクワン、デチャとトップライダーが次々と転倒。レース1で表彰台に上がった伊藤も、3番手に上がったと思ったとたん、オーバーランで後退。こういう荒れた展開だと、トップを走り慣れていないライダーって、やらかすことも少なくないんですが、タイガ大丈夫か、タイガこらえろよー、と思っていたら羽田はそのままトップを譲らず、なんとなんと2番手を走行するアズランを引き離しての独走態勢を築いてそのままフィニッシュしてしまいました! アジア4年目、SS600クラス3年目で、念願の初優勝です! 昨年までの成績だと、今シーズンはトップ争いにいつもいられるように、とか、表彰台を狙って、なんてシーズンになりそうですが、2位/優勝とは!
羽田はアジア選手権のUB130(=アンダーボーン130ccクラス)から2015年にSS600クラスにステップアップし、2015年の開幕戦では、雨のレースで一瞬いきなりトップに立ったこともあってビックリしたことを覚えています。しかし600ccの壁は厚く、15年にはランキング22位、16年にはランキング10位と、徐々に育ってきたライダー。これまでの最高位は16年の開幕戦、ここジョホールでの5位。まだまだ成績が安定しない、もうひと伸びすると面白いんだけどなぁ、と思っていたら、いきなり来ました! ひと伸びどころか、レース1で2位、レース2で優勝と、開幕戦を終えてランキングトップです! 今年18歳、アジア選手権で純粋培養されたライダーというニュータイプですね。
「なんとか優勝できました。難しかったけど、なんとか5秒差をつけられました。次も表彰台を狙って走ります!」と羽田は言葉少な。
かわって手島監督が「タイガはきのう表彰台、きょう優勝と、まさかとは思いましたが、やってくれました。準備期間も短い中、各クラスで5台もマシンがあって、スタッフは本当によくやってうれました。第2戦も、出来る限りいい順位を残したい。応援、よろしくお願いします!」
T.Proは、インドのRAMAのスポンサードを受けているからか、レース後に英語でインタビューするんですね。小山は長い間、世界で戦ってきたライダーですからスラスラですが、羽田とか山田のたどたどしさがいい! こういうのが世界を経験する、ってことのひとつなんですね。タイガもセナも英語、勉強せーよ!(笑)
CBR250RRを小山知良がライディング!
CBRがフルモデルチェンジしたことで、カワサキNinja、ヤマハR25との戦いも第2段階に入った感のあるAP250。昨年まではNinjaとR25が当然の250ccなのに対し、CBRは単気筒エンジンってことで300ccで参戦OKでしたからね。スズキもGSX250Rを発売しましたが、あれはスーパースポーツというより、このカテゴリー向きじゃないスポーツバイクのようですから、GSX-R250待ちなのかな。
このクラスには、AP250初代チャンピオン、山本剛大が3年目のエントリー。しかも、チームをトリックスターカワサキから、インドネシアのシドラホンダへ移籍し、つまりマシンもNinjaからCBRへスイッチしての参戦となります。けれど、チームにはトッリックスターの鶴田竜二さんも帯同して、チーム名にも「イカヅチレーシング」(=イカヅチはトリックスターのマフラーブランドです)と入っていますから、トリックスターがテクニカルサポート、関係性は持続しているようです。
そのホンダCBRですが、日本では未発売、つまり日本勢はマシン製作も出来ないとのことで、このマシンを使用するT.Proイノベーションでは、マレーシア仕様を購入してそのままサーキット入り、現地でメカニックがレースマシンを製作するというギリギリさだったようです。ちなみにマシンが手元に来たのはレースウィークの4日前。保安部品を外してレース仕様にして、ナラシしてセットアップ(の準備だけ)してレースと、これはなかなかの突貫作業ですw
土曜に行なわれたレース1では、ジェリー・サリム(ホンダ)、山本剛大(ホンダ)、アヌパブ・サムーン(ヤマハ)の3台が抜け出してトップグループを形成。何度もトップに立った山本でしたが、フィニッシュラインでギリギリ、サリムに抑えられて悔しい2位。
レース2ではこのトップ3の間隔がやや広がって、3番手につける山本が後方からのアタックを受ける展開。そして、その山本にアタックをかけたのが小山でした!
小山はレース1、7位に終わって急ごしらえのマシンの苦しさを物語っていましたが、レース2ではトップグループに離されず、3番手の山本のペースが上がらないと見るや果敢にアタック。最後は2台の3位争いに持ち込んで、0秒2差の4位でフィニッシュしました。山本はAP250開始初年度にチャンピオン、2年目にはランキング3位という「AP250スペシャリスト」ですから、そこに迫って行った小山はさすがだし、T.ProイノベーションのCBR250RRもすでに戦闘力はトップクラス、ということができると思います。
アジアンチャレンジでも日本人ライダー躍動!
ニューマシンGSX-R150をワンメイクマシンに使用する3年目のスズキ・アジアン・チャレンジ(=SAC)。このクラスにはこれまで、15年に2人、16年に3人の日本人ライダーが参加していましたが、今年はひとり、それが藤田哲弥です。
藤田は、雨となった土曜のレース1こそスタートから下位に沈んだものの、ドライとなったレース2では、10番手あたりという、ワンメイクレースでは致命的に抜け出しにくい中盤集団から、ファステストラップをマークしながら1周、また1周とポジションを上げ、終盤には激しい2番手争いのトップに立つまで追い上げます。トップのエイプリル・キング・マスカルド(確かSAC2年目のライダーですね)は独走で逃げちゃっていましたから、2番手争いが激しかったんです。
結果、藤田はマスカルドに続いて2位でフィニッシュ。藤田は国内を走っている頃から見ていますが、文句なく国内ジュニアライダーのトップクラス。なのに勝てないとは、SACのレベルの高さよ! レース2の走りを見ると、藤田はこのクラスの主役のひとりになりそうですね!
SS600、AP250、そしてSACと、初戦から日本人ライダーの活躍が目立ったアジアロードレース選手権。1週おいて4月15日には、WSBKも行なわれたタイ・チャーンサーキットで第2戦が行なわれます。全クラス日本人ライダーが優勝、なんて日もそう遠くはないような気がします!
ちなみに、すべてのレースはyoutube公式チャンネルで視聴できます!
https://www.youtube.com/user/AsiaRoadRacing へ行ってみてください。