日本人ライダー3人が参戦する600ccクラスです!
この週末は、オーストラリア・フィリアップアイランドで世界スーパーバイク選手権(ワールドスーパーバイク=WSBK)が開催されました。土曜にレース1、日曜にレース2が行なわれるこのレース、勝ったのは2015-16チャンピオン、カワサキのジョナサン・レイ。圧巻のWウィンでした!
…って、WSBKそれだけ?とお思いでしょうが、今シーズンのレーシングオートバイでは、WSBKはすこーしおいといて、WSBKの併催クラスであるワールドスーパースポーツ選手権(WSSP)にスポットを当てていこうと思います。なんたって、参戦2年目の大久保光、初フル参戦の渡辺一樹、さらにヨーロッパランドからは國川浩道が合流と、3人の日本人ライダーが出場しますからね。
09年に藤原克昭が参戦を終了して以来、正直言って日本のファンにはそう馴染みのなかったWSSPですが、今年は面白いですよ! 誰かに肩入れして応援していくレースって、面白いもんね!
市販600ccモデルをベースに行なわれるWSSPですが、15-16年はWSBKと同じく、カワサキNinjaZX-6Rが勝っています。ライダーはケナン・ソフォーグル--なんか聞いたことない? そう、市販モデル KAWASAKI NinjaH2Rで、公道最高速度400km/hをマークしたライダーです! ソフォーグルはカワサキで3度、ホンダで2度、WSSPタイトルを獲得したトルコ人ライダーですが、今年もチャンピオン最有力候補!
しかし、好事魔多し! ソフォーグルはシーズン前のトレーニングで転倒し、なんと右手首を骨折! 開幕から数レースを欠場することになりそうです!
さらに17年シーズンからは、New YZF-R6がリニューアルされたのを受けて、ヤマハがWSSPチームに注力して、ファクトリー体制で参戦することになりました! ライダーはフェデリコ・カリカスロとルーカス・マヒアス。カリカスロは16年にホンダでWSSPに参戦し、ランキング9位だったライダーで、マヒアスは15年にWSSP、16年はWSBKにスポット参戦。ただし、16年はヨーロッパ選手権の1000ccストッククラスのSTK1000で、後半4戦に参戦して優勝2回、2位1回という結果を残し、17年はどのクラスにステップアップしてくるんだ、と注目されていたライダーです。
絶好調の大久保光 無念の欠場!
事前テストを経て開幕したWSSP。フリー1回目ではMVアグスタのパトリック・ヤコブセンがトップを引き、カリカスロとマヒアスのヤマハR6が2-3番手ポジション。4番手にロベルト・ロルフォ、5番手にアレックス・バルドリーニと、ここもMVアグスタが入り、ソフォーグルのいないカワサキ勢はジーノ・レアの8番手が最高位。ジーノはWSBKチャンピオンの弟さんですね。
注目の日本人勢は、大久保が11番手、渡辺が19番手。しかし大久保はフリー2回目に5番手、フリー3回目に7番手に上昇し、公式予選では10番手と、上位12人が通過できるスーパーポールに進出! 大久保、2年目にして初通過! …と思ったら、スーパーポールの3周目に転倒して鎖骨を骨折! あぁぁ、これもまた好事魔多し! 大久保、開幕戦を欠場することになりました。調子上がってたのになぁ、惜しい!
「大久保くんはリラックスして進めてたよ。走りも勢いがあったし、セットも少しアドバイスしたら、方向性はつかんでくれたみたい。これからもうひとつ調子上げていくタイミングだったのにね」とは開幕戦直前に本人に会った、Jスポーツ解説者の八代俊二さん。第2戦タイには間に合いそうだから、しっかり直せよ、光!
公式予選はヤコブセン(MV)、ジュール・クルーゼル(ホンダ:大久保のチームメイトですね)、カリカスロがトップ3、カイル・ライド(カワサキ)、マヒアス、バルドリニが2列目、渡辺はブービーの23番手スタートですが、初チーム、初マシン、初コースというWSSPデビューの洗礼を受けてます。テストもほんの数回で、まだチームとのコミュニケーションも難しいもんね。ここから這い上がってこいよー、一樹!
ヤマハR6が1-2でラストラップへ!
決勝レース当日の朝フリーは、ヤコブセン、カリカスロ、マヒアスがトップ3。渡辺は14番手、フリーとはいえ、予選であったトップとの差1秒84が、ここへ来て1秒2まで縮んでいます。この0秒6は大きいね。
決勝レースは、ライド、クルーゼル、バルドリーニ、ヤコブセン、マヒアス、カリカスロといった、ここまで好調なメンバーがレースを引っ張る展開。しかし、3周目に転倒車のマシン破片がコース状に散乱し、レースは赤旗→仕切り直し。ここで、中止寸前になんとヤコブセンがマシントラブルでいったんストップ! 赤旗で助けられたねー!
赤旗の原因を作ったのは、ロビン・マルハウザとジーノ・レア。そうです、大久保と渡辺のチームメイトですね……。
再スタートでも、やはり上位につけるのは事前までの絶好調ライダー。オープニングラップはカリカスロが獲り、2周目にはクルーゼルが首位に浮上。この2周目あたりからは、もうミニバイクやmoto3みたいな展開の、バチバチのサイドbyサイド。マヒアスやバルドリーニ、ライド、ヤコブセンといったメンバーで、常時トップグループは7~8台といった接近戦。スーパーバイクより、もっとマシン差がないバトルがずーーっと続きます。
10周で行なわれるレースは、中盤あたりからクルーゼルとバルドリーニがトップ争い、けれどラスト3周目にトップにいたクルーゼルが、次の周には6番手に落ちてる--そんな激戦となりました。
マヒアスが真っ先にファイナルラップに突入し、2番手以下のオーダーはカリカスロ、ロルフォ、アンソニー・ウエスト(ヤマハ)、バルドリーニ、クルーゼル、ライドというトップ6! ここからロルフォがするするっとヤマハの2台をかわしてトップに出て、ロルフォ→カリカスロ→マヒアスがやや抜け出したか、と思ったら、ラスト2~3コーナーを残すあたりで、カリカスロがクルーゼルと当たってふたり転倒リタイヤ! そこからマヒアスがぐーっとロルフォに近づいて、ほぼふたり並んでゴールイン!
一瞬はマヒアスが1着に表示されましたが、写真判定でロルフォ→マヒアスの順でゴール! なんともうすぐ37歳ロルフォが優勝! ロルフォはGP250のトップライダーとしても久しぶりのライダーですね。最高位リザルトは03年のランキング2位です。それからMotoGPでドゥカティに乗った(04年)あと、WSBKにスイッチしたんですね。13年からWSSPに参戦し、最高位は13年のランキング6位です。
渡辺デビュー8位の大健闘!
リタイヤ9台、完走14台という波乱に終わった開幕戦。ただし、ロルフォがこのままリードするというよりは、タイ大会をはさんでヨーロッパに戻ると、ホンダ勢、ヤマハ勢も力を発揮してくるでしょうね。ソフォーグルもどこかで戻ってくるだろうけど、最初から本領発揮、とはいかないかもしれませんね、ケガが手首だもんね。開幕戦の走りを見ていると、クルーゼル、マヒアス、ヤコブセン、それにソフォーグルらを軸にシリーズが動いていくと思います。
「昨シーズンは苦しんだシーズンだったから、この素晴らしいフィリップアイランドで優勝できてすごくうれしい! つい4日前に脱臼して、きょうの朝フリーでもあまり調子が出なかったから、レース中ここまで戦えるとは思っていなかった」とロルフォ。この先もトップグループにいて、雨とかコンディションの悪いときとか、前に出てきそうなベテランです。
そして渡辺は、開幕戦8位フィニッシュと大健闘! 転倒者が多かったレースですが、そのおかげの順位じゃない、きちんと最後まで走り切っての8位です。特に、5台ほどのセカンドグループにいて、最終ラップに4台抜いての8位! 勝負強さをみせられたね! 初戦は「このルーキー、けっこうやるな」ってライバルに思わせるのが大事だよね。
第2戦は3月12日・タイ大会です。大久保も間に合う、とのことなので、日本人ライダーによるポジション争い、あるかもしれませんね!