スポーツバイクを「学べる」情熱のこもった1台
もともと150㏄クラスのバイクがポピュラーなインド市場に向けて開発されたジクサー。「カッコよくて走りが元気なバイクが欲しい」という現地の声に応えたモデルだったが、その完成度の高さから「日本でもいけるんじゃないか」という話が持ち上がったのが、今回の国内市販のきっかけだった。
チーフエンジンアの田中氏はこう教えてくれた。「スクーターだと150㏄のモデルも発売されていますし、このクラスの市場自体がないわけではない。ビギナーの方にはぴったりのバイクだし、250㏄ではちょっと手に余る、という方もいらっしゃるので、そういうところを狙えるモデルだ、ということで国内市販が決まりました」
ジクサーで非常に印象的なのはそのスタイリング。このクラスでは珍しい、大胆なストリートファイタースタイルだが、これはデザイナーの毛塚氏が開発チームのスタッフ全員を説得して決めたものだという。
「当時はストリートファイターが全盛でしたから、ジクサーもそうしたかったんです。しかし、ここまで思い切ったスタイルを実現するには、全員の気持ちをひとつにしないといけません。そこで、スケッチを描いて開発チームの一人一人を訪ね、こういうバイクがいま必要だ、と説得して回ったのです」
スズキらしさが詰まった楽しい1台
この熱意ある説得がチームを動かし、結束力を高めた。ジクサーの開発は、これを皮切りにブレることなく突き進むことになる。田中氏はこう続ける。
「開発中も、このバイクはデザインコンシャスなんだから、せっかくのデザインを保てるよう造ろう、という話になりましたし、結果として開発チームが、目指すべきひとつの方向を向くことができました。スズキだから、この開発チームだから、ここまで思い切ったバイクを造れたんだと思います」
走りに関しても、ジクサーは精悍なスタイルに見合ったものを実現している。テストを担当した大庭氏はこう語る。
「カリカリのピュアスポーツではありませんが、ジクサーの走りはそのスタイルに見合ったものとなっています。ツーリングを爽快にこなせ、街乗りでも実用性が高く、しかもコーナリングも楽しい。素直さと快適さがジクサーの柱です。あらゆるシーンで楽しんでいただけるよう、手は一切抜いていません。このバイクは、スズキが真面目に造った、スズキらしい1台だと思います」
魅力的なスタイリングに、あらゆるシーンで楽しめる走り。高い完成度に大胆な設定の価格もあいまって、新型ジクサーはいよいよ日本の道を走り出そうとしている。
「ジクサーは、まさに『ザ・エントリーバイク』と呼ぶべきスタンダードです。あらゆるシーンで走りを楽しめ、ライダーとして必要なことは、このバイクが全て教えてくれます。まずはここから、スポーツバイクの面白さを学んでいただけたら嬉しいですね」