しっかりとした造り込みで、高速道路でも抜群の安定感!
前2輪、後1輪のリバーストライクレイアウトにリーン(傾く)機構を組み合わせた新しい乗り物として2014年9月に登場したトリシティ125。3輪ゆえの安定性に維持費の安い原付二種区分という手軽さもあって、メーカー想定以上の人気を博している。そして1月に追加されたのが、自動車専用道路にも乗り入れられる軽二輪区分の155㏄版だ。
トリシティ155は250スクーター以上の安定感がある
一見すると125㏄版との差はほとんどなく、車両区分も異なる新型車という目新しさは感じない。だが、その中身は125をベースにエンジンの排気量を上げただけといった安直な作りではなく、車体からエンジンまで、ほとんどが専用設計。ホイールベースが40㎜、全長が75㎜、全幅が15㎜大きくなり、リアタイヤも1サイズ太く大きい。もちろんフレーム剛性も高められていて、高速道路走行に対応した車体になっている。
SOHC水冷単気筒エンジンは可変バルブタイミングを採用し、ボア×ストローク値はスクエアに近い設定。低中回転域でのトルクを犠牲にすることなく高回転域でのパワーと伸びを狙った構成で、オートマチック変速のレシオも125とは異なっている。
排気量は125より約25%も多いが、ゼロ発進から60㎞/hあたりまでの差は想像していたよりも小さく、スロットルワークに関わらずスムーズに動き出して一定の加速感を保つ。しかし70㎞/hを超えると加速の勢いが弱まる125に対し、155は90㎞/hあたりまでストレスなく加速して100㎞/h以上まで軽く伸びていく。高速道路でも余裕ありとは言えないが、都市高速道路の速度レベルなら不足なしの動力性能だ。
また、高速道路走行で感心したのは優れた安定性。同クラスの2輪スクーターで高速道路を走ると前輪の接地感が頼りなくて進路変更に気を使うが、トリシティ155は250スクーター以上の安定感がある。撮影時は強い横風が吹いていたが、撮影車の軽自動車よりもビシッと落ち着いていた。高架部分の継ぎ目を通過したときの挙動も穏やかで、クイックなレーンチェンジでもオツリが来ることはない。前輪が大径のリバーストライク構造と50:50の前後車重バランス、車体剛性の高さが圧倒的な安定性を生んでいるのだ。
加えて前後連動ブレーキとABSを標準装備していることで、パニックブレーキで転倒する危険性も大幅に減っている。直進状態なら何も考えずにレバーを握りこめばいい。
トリシティ155の性能を最大に享受できるのは、毎日自動車専用道路や都市交通を利用して移動する通勤・通学ライダーだろう。シート下のトランク容量も大きいし、スマホの充電や電熱ウエアへの給電に便利なシガーソケット電源付き小物入れ、明るいLEDヘッドライトなどの実用装備が充実しているし、満タン航続距離にも余裕がある。自宅から編集部まで首都高を使って片道45㎞を移動する僕にも魅力的な存在だ。
各部解説
主要諸元
●全長×全幅×全高:1980×750×1210㎜
●ホイールベース:1350㎜
●シート高:780㎜
●車両重量:165㎏
●エンジン形式:水冷2ストOHC4バルブ単気筒
●総排気量:155㏄
●ボア×ストローク:58×58.7㎜
●圧縮比:10.5
●最高出力:15PS/8000rpm
●最大トルク:1.4㎏-m/6000rpm
●燃料供給方式:FI
●燃料タンク容量:7.2L
●キャスター角/トレール:20度/67㎜
●変速機形式:Vベルト無段変速
●ブレーキ形式 前・後:φ220㎜ディスク・φ230㎜ディスク
●タイヤサイズ 前・後:90/80-14・130/70-13
■価格:45万3600円
125、155とシリーズも充実
手前が新たに加わった155、奥が125のABS付き。スポーティさを感じさせる155に対して、シルバーの塗色がアクセントになっている125は質感の高さも感じさせる仕上がりだ。
RIDING POSITION
前2輪のタイヤ外径が大きいこともあって足を投げ出すようなポジションは取れないが、窮屈さは感じない。座面の広いシートで座り心地は上々だ。足着き性は同クラスのスクーターと同等だが、日本のユーザー層を考えるともう少し低いほうが喜ばれそうだ。
(ライダー身長:176㎝ 体重:60㎏)
(撮影:南 孝幸)