水冷の1300と空冷の1100、ふたつの看板が同時に存在する(GOGGLE 3月号)

味わいの空冷4気筒エンジンに、ハイパフォーマンスな走りなんて求められているのか? ホンダのフラッグシップ「CB」は水冷4気筒のCB1300シリーズじゃなかったのか? そんな疑問から、今回は新しいCB1100RSとEXを考えてきたけれども、新型2台に実際に乗ったことで、ボクの感じた大前提そのものが、結局、根底から間違っていたのだと痛感する結果になった。

ホンダにとっての「CB」とは、その時代のフラッグシップとして屹立することであって、そこにはエンジンの形式が空冷だとか水冷だとかは、あまり関係なかったのだ。今はただ、時代が求めたから空冷4気筒エンジンをベースにフラッグシップを生み出しただけ。過去、90年代初頭のBIG-1が生まれた時代では、水冷4気筒エンジンでのフラッグシップが求められただけ、ということなのだ。だからこの先、時代とボクたちライダーが求めれば、現行CB1300シリーズの後継として、新しい水冷エンジンのフラッグシップが生まれることにもなるのだろう。

画像: 撮影/柴田直行

撮影/柴田直行

ただ、ボクの中でちょっと混乱を招いた理由の最大の要因は、現行車の中にCB1300シリーズという、完璧すぎるフラッグシップが存在したから。日本が世界に誇る大排気量スポーツの金字塔を差し置いて、新参の「走りの空冷」が大きな顔をするのが、疑問だったのだ。

でも、ホンダの開発陣の人とも話して、よく考えてみればフラッグシップとは常にひとつでなければならない、というボクの思い込みこそがアタマの堅い考えだった。言われてみれば、水平対向6気筒エンジンのゴールドウイングだってホンダのフラッグシップだし、速さを求めるならCBR1000RRこそが最高峰。今までだって、ホンダの中にジャンルごとの頂点はたくさんあったのだ。それが今回は「CB」という名前だったから、困惑したに過ぎない。

そういえば開発陣の話の中で、「担当者が与えられた役割の中で『これで充分じゃない』と自分の中だけで満足してしまうのを反省して、ものづくりの在り方を見直した。目の前だけに集中せず、CBが向かうべき『先』を考えて、もう1回CB1100をほぼ全部やり直したんです。だから、開発スタッフの全員が自分の担当部分だけでなく、CB1100そのものを語れます」という話が出た。恥ずかしい話、ボクの考え方はまさにそれ。自分の枠組みに捉われていたのだと思う。

ホンダは新しいCBを生み出すにあたって、スタッフひとりひとりの意識改革からスタートしたのだ。そういうスタッフたちが開発期限をギリギリまで粘って『今の時点ではやりきったと思う』と言わしめ、この時代のCBとして育てられた新型RSとEXの2台は、確かにホンダのフラッグシップと言うしかない。だって創り出す過程が、現代に合致した最高のホンダの看板を創造しよう! というマインドなのだ。

そんな経緯を経て、ホンダにはCB1300とCB1100という、ふたつのフラッグシップが同時に存在することになった。空冷4気筒というアプローチでCBの在り方をもういちど問う。既成概念なんて丸ごと捨ててほしい。そうすれば新しいCB1100の中に、作り手の「熱」を感じることができるはずだ。

※記事はゴーグル2017年3月号より

GOGGLE (ゴーグル) 2017年3月号 [雑誌]

モーターマガジン社 (2017-01-24)

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