表面上はスムーズ? プレシーズンテスト第一弾
2017年シーズンMotoGPキックオフを告げる2017プレシーズンテスト第一弾、マレーシア・セパンテストが終わりました。今シーズンは、ミシュラン17インチタイヤとマニエッティ・マレリ製共通ECUソフトを使用する2シーズン目ということで、テストも大きなトラブルなく「どーなっちゃうんだコレ」的ムードもない、いつも通りのプレシーズンテストになりましたね。
というのも、なんせ去年のこのセパンテストでは、走行中にタイヤがバーストしちゃう事故も起きたし、16年シーズン後のメーカーの人たちの証言では、ECUソフト問題(まともに走らない、どんな制御になるのか解析できていない)もあったようで、現場はかなり混乱していたようです。それに比べれば、表面上はスムーズに進んでいたように見えました。
今シーズンは、ここ数年に比べてトップチームのメンバー入れ替えが多かったシーズンで、そのニューフェイスがどこまで走るのか――そんな興味も大きなテストでしたね。
3日間総合のトップタイムは、新たにヤマハファクトリーに加入したマーベリック・ビニャーレス!2番手に、これも新たにスズキファクトリーに加わったアンドレア・イアンノーネが入り、ニューフェイスが1-2を占めました。
■総合順位
1:マーベリック・ビニャーレス ヤマハ 1:59.368
2:アンドレア・イアンノーネ スズキ 1:59.452
3:マルク・マルケス ホンダ 1:59.506
4:アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ 1:59.553
5:ダニ・ペドロサ ホンダ 1:59.578
6:バレンティーノ・ロッシ ヤマハ 1:59.589
7:アルバロ・バウティスタ ドゥカティ 1:59.628
8:ケーシー・ストーナー ドゥカティ 1:59.639
9:カル・クラッチロー ホンダ 1:59.728
10:ホルヘ・ロレンソ ドゥカティ 1:59.767
3日間を「線」で見てみると…
上記10人だけじゃなく、なんとトップ16人が1秒以内に入っています! もちろんテストですから、タイム出しがメインじゃないでしょうし、それでもパーツとか新しい仕様のテストに専念したか、っていうと微妙なところもあり(ライダーって、ついついタイムアタックしちゃうからね笑)、この順位がそのまま今シーズンを占うものではありません。ひとつの参考程度に、ね。
それでも、タイムの出し方やコンスタントな走り方で、おぉ、今シーズンはイケそうだな、って思うライダーもいて、このへんを勝手に妄想するのがテストの楽しさですよね。
では、3日間のテストデー別順位はコチラ。
■1日目
1:ケーシー・ストーナー ドゥカティ 1:59.680
2:アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ 1:59.797
3:マーベリック・ビニャーレス ヤマハ 2:00.129
4:アルバロ・バウティスタ ドゥカティ 2:00.134
5:アンドレア・イアンノーネ スズキ 2:00.489
■2日目
1:アンドレア・イアンノーネ スズキ 1:59.452
2:マーベリック・ビニャーレス ヤマハ 1:59.858
3:アルバロ・バウティスタ ドゥカティ 2:00.218
4:バレンティーノ・ロッシ ヤマハ 2:00.254
5:ヨハン・ザルコ ヤマハ 2:00.343
■3日目
1:マーベリック・ビニャーレス ヤマハ 1:59.368
2:マルク・マルケス ホンダ 1:59.506
3:アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ 1:59.553
4:ダニ・ペドロサ ホンダ 1:59.578
5:バレンティーノ・ロッシ ヤマハ 1:59.589
やはり、3日間通してビニャーレスがいいですね! 2016年シーズンオフ直後のバレンシアテストもトップタイムで終えていますから、これはホンモノですね。タイムの出し方も、一発だけじゃなくて、コンスタントに上位につけていますから、ビニャーレスが開幕早々にトップグループに絡んでくるのは間違いないと思います。
あとはイアンノーネも3日間まんべんなく上位にいます。ドゥカティからスズキに乗り換えるといえば、GSV-R時代のロリス・カピロッシがそうでしたが、カピロッシも乗り換え早々に好タイム、とはいかなかったのを覚えています。イアンノーネがスゴいのか、今のGSX-RRがいいのか、今後の見もののひとつでしょう。
総合の3番手以降はマルケス、ドビツィオーゾ、ペドロサ、ロッシと、チームもマシンも在籍チームから継続のトップライダー陣が続きますが、注目は総合7番手のバウティスタ!
バウティスタは、スズキもホンダもアプリリアも経験した、もはやベテランですから、マシン乗り換えがスムーズでしたね。アプリリアからドゥカティへV4エンジン同士のスイッチで、マシンの完成度が高い方へ移籍する、っていうのが上位進出の秘密のひとつのような気がします。アルバロ+ドゥカティ、17年の注目かも知れません。
ウィング禁止でニューカウル登場!?
マシン面でいうと、16年に全マシンともほぼ装着していたウィングについてのレギュレーション変更がありました。ウィングは、特に加速状態でマシンがウイリーするのを防ぐ効果があるようで、高速コースでは空気抵抗となってトップスピードが落ちることから、主に低速~中速コースで効果が大きいとされてきました。けれど、このまま行ったらどんどんウィングが大きくなって、競り合いの時に接触があったり、転倒したときに破片が散らばったりというデメリットもあることから、マシンから突起状に取り付けるウィングが禁止、というレギュレーションになったものです。
もちろん15年シーズンとかまでは、そうクローズアップされるメカではありませんでしたから、メーカーはそこに戻ればいいんですが、ECUソフトの変更で、アンチウィリーがうまく機能しない、という事情もあるようで、その分をウィングが補ってきたんですね。
そのため、各マシンは、車体から飛び出ない形のウィングを模索することになりました。それが現れたのがヤマハYZR-M1で、ロッシとビニャーレスがライディングしたM1には、サイドカウルにふくらみがあり、その内部にルーバー状にスリットがある、という形状でした。これが、ウィングに変わるダウンフォース発生メカのひとつでしょうね。もちろん、有効かどうかによって、シーズン中に実用化されるかどうかはわかりません。
もうひとつ、ドゥカティもマシンのテールエンドにボックス状のデバイスを搭載して注目を集めたけれど、これがなんなのか、なにに効果があるものなのかは不明。一説には排気圧を利用してダウンフォースを高めるもの、とも言われていますが、これも真偽のほどは不明。実用化されるかどうかも、この一連のテストの結果によるでしょうね。
2ヵ月の禁止期間を経て、初めての走行テストは、こうしていったん幕を閉じました。冬の間の開発が当たりだったメーカー、そうではなくて、もひとつやりなおしだ、と方向修正を迫られるメーカーといろいろでしょうが、MotoGPクラスはこのまま2/15-17にフィリップアイランド、3/10-12にカタールでテストを行ない、3/26にカタールで開幕を迎えます。
いやぁ、楽しみ心が収まりませんね^^